※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2024年1月5日号

新春市長コラム


秋田市長 穂積 志(もとむ)

2024年
“未来を見据え個性を磨こう”


 明けましておめでとうございます。
 本年がみなさまにとって、心穏やかで健やかな一年となることを心からお祈り申し上げます。

 今年は辰年。十二支で唯一空想の生き物である「辰(龍)」は、天空天地を行き来し、雲を呼び、恵みの雨をもたらし、災害を鎮め、水を自在に支配する水神として古来より信仰を集めてきました。水は人間が生きるうえで欠かすことのできない貴重な資源ですが、時に大雨は人々の生活に甚大な被害と耐え難い困難を与えてきました。
 昨年7月、本市は記録的な豪雨に見舞われました。今もなお多くのかたが不自由な生活を強いられ、不安な日々を過ごされています。新年にあたり、被害を受けられたみなさまの一日も早い生活再建に全力で取り組む決意を新たにするとともに、龍の力にあやかり災害のない安寧の一年であることを強く願うものです。
 新型コロナウイルスに翻弄された3年間もそうですが、混乱する現場の最前線で強い使命感のもと任務を果たす多くのかたがたには頭が下がる思いです。各地域で住民避難や復旧支援の陣頭指揮にあたられた議員や町内会のみなさま、ボランティアのみなさま、他自治体からの応援職員のみなさま、力強いご支援とご協力をいただいた多くのみなさまに深く敬意と感謝を申し上げます。

足もとの資源を生かす

 コロナ禍の3年間は行動制限などの制約も多くありましたが、地域の魅力や新しい価値と向き合う時間でもあったと捉えています。先人達が守り続けてきた文化や地域固有の資源に光を当て「まちの個性」としてまちづくりに生かすことが、地方創生のカギだと考えています。
 本市の成り立ちは佐竹20万石の城下町であり、佐竹氏の居城・久保田城跡は、緑豊かな本市のシンボル「千秋公園」として現在に受け継がれ、長く市民に親しまれています。この春には大手門の堀の遊歩道が供用開始となるほか、6月下旬には千秋美術館がリニューアルオープン、令和7年10月には新しい佐竹史料館が開館予定です。これまで以上に芸術文化ゾーンを核とした中心市街地における文化施設間の連携を図り、日常的に市民が集い、活動し、心豊かな暮らしを実感できる場の創出に取り組みます。
 秋田港では国内有数の恵まれた風況を生かした洋上風力発電事業が進展し、エネルギーの地産地活はもとより、脱炭素の実現に向けたまちづくりの機運が高まっています。本市にとって"風"は、江戸時代に北海道から大阪まで日本海を往来した北前船の隆盛がもたらす都市の文化的・経済的な発展の源となったものであり、他方では能代市から本市に至る約120kmの防砂林を築いた栗田定之丞の功績が語り継がれるほど、市民生活を悩ませてきたものです。こうしたまちの歴史や記憶をたどりながら、ここにしかないモノやコトに新たな価値を見出し、まちの活力を高めていきたいと思います。


リニューアルされたエントランス(千秋美術館)

秋田港の洋上風力発電所

スポーツに見る主体性

 昨年のプロ野球日本シリーズは59年振りに関西勢同士の対戦となり、10年振りに3勝3敗で第7戦までもつれ込む熱戦でした。オリックス・バファローズには、鷹巣農林高校(現秋田北鷹高校)出身の中嶋聡監督と角館高校出身の小木田敦也投手、阪神タイガースには、秋田工業高等専門学校出身の石井大智投手が所属し、連日の「秋田シリーズ」は大いに盛り上がりました。なかでも、秋田市出身の石井投手はプロ野球史上初の高等専門学校の卒業生。秋田東中学校の野球部で同期だった成田翔投手(秋田商業高校出身)のプロ入りに刺激を受け、秋田高専から四国アイランドリーグに挑戦し、その3年後に夢を実現させた異色の経歴の持ち主です。計り知れない努力と揺るがない信念はもちろん、彼を支えた親御様、高専の先生がた、周囲のかたがたのサポートあっての活躍だと想像します。近年は「主体性を育(はぐく)む」教育が重視されていますが、それは「自分の意思を持つこと」に置き換えられるように思います。石井投手がプロ野球選手という夢に向かって、ひたむきに「自分」を貫けたのは、周囲の大人が彼の意思を尊重し、未来の可能性を開き、ともに歩んできた結果でもあります。
 昨年11月に本市の人口は30万人を下回りました。少子化に歯止めがかからない状況の中、将来にわたり子どもたちのスポーツや文化芸術活動の場を確保するため、令和6年度から段階的に中学校部活動の地域移行が始まります。スポーツに勝ち負けはつきものですが、大事なのは他人との優劣を決めることではなく、自らが自らの成長を実感することであり、これは次代をたくましく生きる子どもたちの主体性の礎となり、ひいては一人ひとりの個性につながるような気がしています。

写真で振り返る2023


宝島社「田舎暮らしの本」・2023年2月号
/市役所内の垂れ幕
1月 「田舎暮らしの本」(宝島社)「住みたい田舎」ベストランキング6部門で秋田市が1位を獲得しました

3月 修復整備工事を終えた県指定有形文化財「旧松倉家住宅」が、町家(まちや)の趣(おもむき)を残し新たなにぎわいの場としてオープン

豪雨災害から学ぶ

 7月豪雨災害への対応において、心に留めていたのは、「命を守る(人命救助、避難対策)」→「暮らしを守る(生活再建支援)」→「経済を守る(事業者支援)」といった各段階に応じて、被災者に寄り添った対策を速やかに講じる、ということです。これまで経験したことのない被害の大きさに圧倒されながらも、刻々と変化する情報を収集・整理し、解決すべき課題を洗い出し、順次必要な施策を実施してまいりました。また、災害対応における国や県、関係機関などとの連携を通じて、平時からの「人とのつながり」の大切さを実感しました。互いを知り、互いを気にかける「顔の見える関係」が非常時への備えとなり、防災力の土台になると考えます。一方で、避難情報の発令に遅れが生じるなど、速やかな改善が必要な課題も浮き彫りになりました。災害から得た教訓を次に生かせるよう、さまざまな観点から検証を行い、引き続き、安全安心な市民生活の確保に向けた体制づくりを進めます。
 昨年は、4月早々に桜の開花を迎え、その後も暖かい日が続きました。夏以降は豪雨と猛暑、秋には全県的にクマによる人身被害が相次ぎました。気候変動は加速度的に進行し、その影響が私たちの日常生活の脅威となっています。本市の姉妹都市であるアラスカ州キナイ半島郡の友人からは同地の氷河が近年急速に解け出していると伺いますし、国連は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と警鐘を鳴らしています。異常気象はニューノーマル(新しい日常)になりつつあると言われる中、日々の暮らしをいかに守っていくのかが問われています。2050年までにゼロカーボンシティをめざす本市として、一人ひとりがより当事者意識を持ち、将来を見据えて議論し、環境を保全する行動を増やしていく必要があります。脱炭素や温暖化対策は地球規模のテーマですが、世界的なエネルギー価格の高騰なども踏まえ、各自治体や各セクター(業界・分野)において、それぞれの強みを生かした特色ある実践を積み重ねることが、人類と地球の未来を考えるうえで重要であると思います。

全国各地から多数の職員・ボランティア、義援金など心温まるご支援をいただきました。
心より感謝を申し上げます

中核市サミット2024in秋田

 本年10月31日と11月1日の2日間、本市では初となる「中核市サミット」が開催されます。中核市サミットは、全国62市の中核市の市長、議員、職員ら約500人が一堂に会し、各市の先進事例や行政課題の共有を図り、将来へとつながる政策を発信することを目的として、中核市制度が施行された1996年(平成8年)から始まり、本市開催で27回目となります。
 中核市は「自分たちの暮らすまちを自分たちの手で創りあげていくことを可能とする」制度です。旧来の地方行政において、都市はその規模・能力・地域の状況などが、さまざま異なっているにも関わらず、事務権限は政令指定都市を除いて全国一律に扱われてきました。その改善を図るため、比較的規模の大きな都市(人口20万人以上)には、相応しい事務権限を移譲し、地方分権の先駆者としての役割を託したのが中核市制度です。
 本市が中核市に移行したのは平成9年4月。同年は市民が長く待ち望んだ秋田新幹線こまちの開業や秋田自動車道の全線開通といった本県の高速交通時代の幕開けでもありました。当時私は県議会議員でしたが、中核市移行は独自性と創造性の発揮を通じた市勢発展の契機と受け止め、21世紀を目前に控えた地方自治の新たな胎動を強く感じていました。
 サミット本番では、「あきた芸術劇場ミルハス」や「秋田市文化創造館」を中心とした芸術文化ゾーンをメイン会場に、中心市街地の千秋公園に至る一帯の魅力や洋上風力発電事業における先進的な取り組みを存分にアピールしたいと考えています。


空から見た芸術文化ゾーン。中核市サミットのメイン会場になります
*DX…さまざまなデジタル技術を使って、企業戦略や業務の流れを変革させること。

写真で振り返る2023


4月 大森山ゆうえんちアニパの観覧車が新しくなりました。愛称はフランス語で花を意味する「フルール」♪
7月 あきた芸術劇場ミルハス大ホールで、秋田公立美術大学開学10周年記念講演・記念式典が開催されました

新たな個性を創造する

 デジタル技術が我々の未来を大きく変えようとしています。
 DXはこれまでの常識をひっくり返し、価値観の転換による新しい暮らしを実現しつつあります。自動運転は全国各地で実証実験が進み、バーチャルとリアルの融合はメタバースという仮想世界を生み出し、2025年の大阪・関西万博では「空飛ぶクルマ」の実用化が現実味を帯びてきました。
 本市でも、再生可能エネルギーを活用したデータセンターの誘致に取り組んでいるほか、外旭川地区にまちづくりのモデル地区を整備し、民間事業者の知見やノウハウを活用した先端技術の導入により、将来を見据えた持続可能な社会基盤の構築や、地域資源を生かした交流人口の拡大などに向け、さまざまな取り組みを進めたいと考えています。多様な人々の協働が本市の未来を切り拓き、新たなまちの個性が創造されると信じています。
 今年の干支である辰(龍)は、英語で「ドラゴン」。その語源は鋭い眼光のイメージから古代ギリシャ語の「ドラコーン(はっきりと見る)」とも言われています。八幡平のドラゴンアイが観光スポットとして注目を集めていますが、龍のように大きな目で足もとの資源を見つめ直し、しっかりと未来を見据え、個性を磨く一年としましょう。本年もどうぞよろしくお願いします。

写真で振り返る2023


8月 アルヴェで、俳優の竹中直人さんと漫画家の大橋裕之さんが監督を務め、市内の大学生も制作に参加した、本市が舞台の短編映画制作の記者会見が開催されました
9月 西部市民サービスセンターで、大森山動物園開園50周年記念式典が開催されました 開園の年(昭和 48年)に動物園に来たチンパンジーのボンタ


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