○秋田市行政の基本構想

令和3年3月18日

議決

第1 基本構想の意義

1 基本構想の位置付け

基本構想は、本市の総合的かつ計画的な行政経営を図るため、5年間の計画期間を通した目標とそれを実現するための基本的な考え方を示すものです。

2 基本構想の構成

基本構想は、「基本理念」「将来都市像」「総合計画推進のために」および「創生戦略」で構成されます。

(1) 基本理念

本計画の計画期間最終年度である令和7年度における本市の目指すべき姿を設定したものです。

(2) 将来都市像

基本理念のもとに目指す大局的な方向性として設定したものです。将来都市像ごとに「政策」および「施策」に細分化し、体系図を示しています。

(3) 総合計画推進のために

組織機構・市民サービス向上などの行政経営分野における取組や、基本構想および推進計画の実施にあたって、本市が意識していくべき視点を設定したものです。

(4) 創生戦略

人口減少問題を正面から受けとめ、「秋田市を元気にすること」「元気な秋田市を次の世代に引き継ぐこと」を目指し、将来都市像別の体系にとらわれずに、必要な分野において一体的かつ集中的に経営資源を投入して取り組むため、設定したものです。

第2 基本理念

人口減少・少子高齢化が進行する中、地域の活力を維持し、本県全体を牽引する県都としての役割を果たしていくためには、人口減少問題を正面から受けとめ、次の世代に引き継ぐことができる元気な秋田市づくりを進めていかなければなりません。

秋田市を元気にし、次の世代に引き継ぐ原動力となるのは、間違いなく人そのものであり、市民一人ひとりが輝くためにも、それぞれの能力や個性を発揮しながら、自らの可能性を追い求めていける社会が求められています。

年齢や性別を問わず、自分らしくいきいきと輝いている「人」

にぎわいにあふれ、多彩な魅力に満ちている「まち」

四季の移り変わりのように彩り豊かで、心うるおう「くらし」

市と市民が協力しあいながら、そのような人・まち・くらしの実現を目指していくこととし、本市の基本理念を次のように定めます。

“ともにつくり ともに生きる 人・まち・くらし

~ 元気と豊かさを次世代に 人口減少を乗り越えて ~ ”

また、国立社会保障・人口問題研究所によると、本市の人口は、2040(令和22)年に約24万5千人まで減少する一方、65歳以上の人口割合は約44%に達すると推計されています。

こうした状況から、人口減少対策を市政の最重要課題と位置付け、人口減少の抑制はもちろん、人口減少下にあっても持続可能な社会の実現に取り組み、元気な秋田市と暮らしの豊かさを次世代に引き継いでいくため、基本理念の副題として、新たに「元気と豊かさを次世代に人口減少を乗り越えて」を掲げます。

本市では、まち・ひと・しごと創生法(平成26年法律第136号)に基づき、人口の現状を分析し、人口減少が本市に何をもたらすのかなどを明らかにした上で、目指すべき将来の方向と人口の将来展望を示す「秋田市人口ビジョン」と、これに基づき政策目標や具体的施策等を定める「秋田市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定しています。

本市の人口減少対策については、これら総合戦略等を通じて、子育ての希望をかなえられる環境づくり、新しいしごとづくりや雇用の質の向上、地域資源を活用した人をひきつけるまちづくり、誰もが安心して暮らせる健康長寿社会づくり、暮らし・産業・自然が調和したコンパクトシティの形成などに取り組んでいくものです。

第3 将来都市像

基本理念のもとに目指す大局的な方向性として、次の5つの将来都市像を設定し、将来都市像ごとの政策および施策について、体系として表します。

1 豊かで活力に満ちたまち

2 緑あふれる環境を備えた快適なまち

3 健康で安全安心に暮らせるまち

4 家族と地域が支えあう元気なまち

5 人と文化をはぐくむ誇れるまち

将来都市像1 豊かで活力に満ちたまち

政策1 商工業・サービス業の振興

施策① 企業立地・事業拡大の推進

施策② 企業の活性化の推進

施策③ 雇用の拡大と質の向上

施策④ 貿易と物流の拡大

政策2 農林水産業の振興

施策① 農林水産業経営の確立と食料の安定供給

施策② 戦略的で多様なアグリビジネスの促進

施策③ 農山村地域の活性化と森林整備の推進

政策3 交流人口の拡大と関係人口の創出、移住促進

施策① シティプロモーションの推進

施策② 観光振興の推進

施策③ にぎわいの創出

施策④ スポーツの力をいかした地域活性化

施策⑤ 関係人口の創出・拡大

施策⑥ 移住の促進

将来都市像2 緑あふれる環境を備えた快適なまち

政策1 環境との調和

施策① 環境保全の推進

施策② 循環型社会の推進

施策③ 脱炭素社会の推進

政策2 都市基盤の確立

施策① 秩序ある都市環境の形成

施策② 住宅環境の整備

施策③ 上下水道サービスの提供

施策④ 道路整備の推進

施策⑤ 公共交通の充実・確保

施策⑥ 情報通信技術の利活用

将来都市像3 健康で安全安心に暮らせるまち

政策1 安全な生活の実現

施策① 危機管理体制の確立

施策② 災害や雪に強いまちの確立

施策③ 防犯・交通安全体制の確立

政策2 安心して暮らせる毎日の実現

施策① 健全な消費・生活衛生環境の確保

施策② 食育の推進

施策③ 保健・医療体制の充実

施策④ 消防・救急体制の充実

施策⑤ 社会保障制度の確保

将来都市像4 家族と地域が支えあう元気なまち

政策1 家族や地域を支える絆づくり

施策① 家族・地域の絆づくりの推進

施策② 男女共生社会の確立

政策2 地域福祉の充実

施策① 地域福祉の推進

施策② 障がい者福祉の充実

施策③ 高齢者福祉の充実

政策3 次代を担う子どもの育成

施策① 子ども・子育て環境の充実

施策② 若い世代の育成支援

政策4 市民の主体的な活動の推進

施策① 市民による地域づくりの推進

施策② 市民活動の促進

将来都市像5 人と文化をはぐくむ誇れるまち

政策1 文化の創造

施策① 文化財の保存と活用

施策② 市民文化の振興

施策③ 生涯スポーツの推進

施策④ 国際交流の推進

政策2 教育の充実

施策① 社会教育の充実

施策② 学校教育の充実

施策③ 高等教育の充実

将来都市像1 豊かで活力に満ちたまち

産業振興により地域経済を活性化し、雇用とにぎわいを創出することにより都市としての求心力を高め、多様な交流や連携を構築し、県都として周辺圏域の発展を牽引する「豊かで活力に満ちたまち」を目指します。

政策1 商工業・サービス業の振興

工業

ア 現状と課題

設備投資需要やIoT化の進展等による需要の高まりに伴い、近年、国内の製造品出荷額は増加傾向にありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う需要の急減と生産活動の停止、サプライチェーンの寸断等により、日本経済は戦後最大の景気後退に陥りました。その後徐々に回復に転じましたが、同感染症拡大以前の状況には戻っていません。

本市においても、電子部品・デバイスや食料品部門が牽引し、近年の出荷額は増加傾向にありましたが、同感染症により大幅に業況が悪化し、その影響の長期化が懸念されています。

イ 取組の方向

企業のニーズに応じて、融資あっせん制度や工場等の新増設に対する補助制度を柔軟に見直すとともに、資金繰りへの支援などにより、地元企業等の事業継続や雇用の維持を図ります。

また、生産性向上に向けた設備導入や産学官連携による付加価値の高い製品創出を促進するとともに、企業経営の専門家等による相談体制の充実を図り、経営基盤の強化を支援するほか、既存誘致企業やその本社・親会社を定期的に訪問し、企業ニーズを把握するとともに、設備投資など、事業の拡大を働きかけていきます。

企業誘致

ア 現状と課題

米中貿易摩擦や消費税率引上げ等により企業業績が減速傾向にあった中、新型コロナウイルス感染症の影響により多くの業種で企業活動が停滞しており、企業の事業環境は厳しい状況が続くと見込まれます。

国内の設備投資については、今後抑制傾向が続くことが想定される中、サプライチェーンの改革やデジタルトランスフォーメーションの推進、テレワークの普及・定着に対応した環境整備の促進など、感染症収束後を見据えて国内産業の回復・再生を図ることが求められています。

本市においても、既存誘致企業を中心に、大型の設備投資や雇用拡大の動きは慎重なものとなっており、市外企業の新規立地については、企業収益の悪化に加え、自治体間競争などを背景に、厳しい状況にあります。

イ 取組の方向

加速している生産拠点の国内回帰やサプライチェーンの再構築、本社機能・開発部門等の地方分散化の動きを捉え、新規立地や事業拡大に向けた取組を推進します。

製造業では、本市が重点的に集積を進めてきた電子部品・デバイス、輸送機関連や医薬・医療機器関連等を中心に、生産開発拠点の新増設等を促進するとともに、若い世代の活躍が期待されるICT関連では、先進性・成長性の高い企業の新規誘致や、ニアショア業務等を行う誘致企業と市内企業の協業を促進し、本市のICT産業の集積を図ります。

また、首都圏企業等における事業継続計画等のリスク対策や、テレワーク、ワーケーション等の新しい働き方に対応した地方分散化のニーズを踏まえ、各種優遇制度の拡充を図りながら、県と連携し、企業誘致活動を積極的に進めます。

商業・サービス業

ア 現状と課題

消費税率引上げによる消費の落ち込みに加え、新型コロナウイルス感染症の影響によるインターネット通信販売の拡大や「新しい生活様式」への対応等により、消費動向が大きく変化する中、本市の商業・サービス業を取り巻く環境は、これまでにない厳しい状況に置かれています。

特に、商店街においては、商店主の高齢化や後継者不足、大型店や郊外店の展開などもあり、商店数や商品販売額の減少が進んでいます。また、国等が推進するキャッシュレス化や観光需要の取り込みなどにより、商店街を活性化させるため、ICT化への取組を促進することが課題となっています。

中心市街地では、融資あっせんや補助制度により、空き店舗や空きテナントへの出店が促されたことで商業集積に一定の効果が見られましたが、あきた芸術劇場のオープンなど秋田駅周辺の新たな動きを見据え、さらなるにぎわい創出が求められています。

イ 取組の方向

商圏の変化に加え、ICTの進歩に伴い事業形態が大きく変容している中で、今後の商店街のあり方を検証し、従来からの補助や金融支援に加え、観光需要に対応した商店街のICT化や、空き店舗への出店に対し支援を行います。

また、商工団体や金融機関と連携しながら、補助制度やファンドの活用により、円滑な事業承継を支援します。

中心市街地においては、引き続き融資あっせんや補助制度により、空き店舗・空きテナントの活用に努め、県都としてのさらなるにぎわい創出を目指します。

中小企業経営

ア 現状と課題

本市企業の99%を占める中小企業や、そのうち約8割の小規模事業者は、地域経済を支える重要な役割を担っていますが、人口減少等の進行による国内市場の縮小、グローバル化の進展による競争の激化等により、これらの事業者を取り巻く環境は厳しさを増しています。

特に、財務基盤が脆弱な小規模事業者を中心に、事業主の高齢化や後継者不足等の課題を抱えており、今後、廃業の増加が懸念される状況となっているため、従業員や第三者による事業承継の促進が急務となっています。

また、新たな創業者の掘り起こしや起業後のフォローアップなども視野に入れた創業支援により、創業を目指す人材を育成していく必要があります。

イ 取組の方向

本市の強みや特色などをいかしつつ、成長産業への進出や新事業の展開、新商品の開発、販路拡大などに積極的に取り組む中小企業等に対し、融資あっせん制度や相談体制の充実等により、事業発展や経営基盤強化を支援します。

また、中小企業が持つ技術とサービスの喪失を防ぐとともに、雇用を維持するため、関係機関と連携しながら事業承継の円滑化を促進します。

このほか、創業機運の醸成や起業家の育成・支援等により創業を促進するとともに、事業拡大に向けた支援などにより、新事業の創出促進を図ります。

雇用

ア 現状と課題

少子高齢化や若年者の転出、産業の基盤となる熟練技術者の後継者不足など、労働力人口の減少が続く中、引き続き、人口減少社会に対応した労働力の確保が課題となっています。

また、令和2年3月卒の県内高校生・大学生等の県内就職割合は、高校生が15年ぶりに70%を超えたものの、大学生は32%にとどまっており、地元定着を一層促進する必要があります。

近年の緩やかな景気回復を受けて、ハローワーク秋田管内の有効求人倍率や新規学卒者の就職内定率は高い水準で推移してきましたが、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の縮小が、求人数の減少や離職者の増加等に波及していることから、雇用情勢を注視しながら、それらの課題に対応していく必要があります。

イ 取組の方向

同感染症に伴う雇用対策として、市内企業の事業継続や雇用の維持を支援するとともに、事業縮小や廃業に伴う解雇等により、離職者が増加するおそれがあることから、離職者の再就職に向けた支援を強化します。

さらに、国・県との連携により、市内企業の雇用環境改善や人材の確保・育成を支援するとともに、求職者・非正規雇用者等のキャリアアップ支援の充実を図り、安定した雇用の拡大と質の向上に取り組みます。また、デジタル化の進展に対応した市内企業における人材の確保・育成の支援などを進めます。

このほか、若年者の地元定着を促進するため、雇用の場の確保に加えて、大学生と市内企業とのマッチング機会の拡大や大学・商工団体と連携した取組の拡充を図るとともに、女性の就業やキャリア形成、高齢者や障がい者の就業促進など、多様な人材が個々の能力を十分に発揮できる環境づくりを進めます。

貿易・物流

ア 現状と課題

秋田港におけるコンテナ取扱量は、東日本大震災の代替需要を契機に増加し、その後も、企業のサプライチェーン確保への意識の高まりなどを背景に、堅調に推移してきました。

本市では、秋田港のさらなるコンテナ利用促進等に向け、コンテナ利用者に対する奨励金や海外販路開拓を図る企業への補助を行っていますが、新たな海外展開は低調であり、他港からのコンテナ利用移転も進んでいないことから、ここ数年の外貿コンテナ取扱量は、微増にとどまっています。

また、秋田産品の海外展開においても、日本酒や米に続く特色ある地場産品の開発や販路開拓・拡大には至っていない状況にあります。

このほか、卸売市場については、施設の老朽化が進行しているほか、コールドチェーン(低温物流)に対応していないなど、現代の流通形態や社会的ニーズに適切に対応することが困難な状況になりつつあります。

イ 取組の方向

引き続き、秋田港の港湾機能の拡充に努めるとともに、県や貿易関連団体と協力し、コンテナ荷主奨励金の支援メニューの充実やポートセールス等により、新たな荷主の開拓や貿易参入を試みる企業の発掘に努めます。

また、電子商取引による海外展開など、新たな手法で海外との商取引に参入する企業に対して必要な支援策を講じるとともに、秋田産品の販路開拓や拡大を目指す企業に対しては、国内外の見本市や商談会等への出展機会の確保を図ります。

卸売市場については、今後も、市民に安全安心な生鮮食料品等を供給する役割を効果的に果たすため、再整備に向けた検討を進めます。

『政策1 商工業・サービス業の振興』のもと取り組む施策

施策① 企業立地・事業拡大の推進

施策② 企業の活性化の推進

施策③ 雇用の拡大と質の向上

施策④ 貿易と物流の拡大

政策2 農林水産業の振興

生産振興

ア 現状と課題

農林水産業は、人口減少を背景とした労働力の減少や従事者の高齢化が進んでおり、担い手不足が深刻化しています。

こうした中、農業においては、新規就農者数や農業法人数が増加傾向にあるなど、明るい兆しが見られる一方、高齢化等により離農者も増加しており、地域農業を支える意欲ある経営体の育成・確保が急務となっています。

また、主食用米の生産調整の廃止をはじめとする米政策の見直しや、環太平洋パートナーシップ協定(TPP11)等の発効による産地間競争の激化など、農業をめぐる情勢が大きく変化する中で、農業経営は厳しい状況に直面していることから、生産性の向上や園芸作物等との複合化、生産施設および農業基盤の整備をさらに推進していく必要があります。

林業においては、木材市況の低迷が続く中、今後、利用期を迎える森林が増加していくことから、適時適切な伐採、造林、保育等の施業の実施により、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を両立していくことが重要となっています。

イ 取組の方向

消費市場や人材資源など都市部と隣接する立地条件をいかし、意欲ある多様な担い手の育成や複合型生産構造への転換を推進するとともに、大規模乾燥調製貯蔵施設等の設置、大区画ほ場や大規模園芸拠点の整備を促進するほか、ICT等先端技術の活用などにより、健全で持続的に発展する農林水産業の確立と安全で安心な食料の安定供給を目指します。

また、林業の持続的発展および森林の持つ多面的機能の発揮に向け、森林経営管理制度の適切な運用により、計画的な森林整備を推進するとともに、林業経営の効率化と森林管理の適正化を一体的に促進します。

販売促進

ア 現状と課題

農林水産物の需要低迷や販売価格の変動による農林漁業者の所得の減少など、わが国の農林漁業を取り巻く厳しい環境に対応するため、新たな付加価値を生み出す6次産業化の推進が求められています。

本市においては、6次産業化に取り組む事業者への積極的な支援により、実践者数が増加するなど一定の成果を上げていますが、経営規模の小さい事業者が多いほか、販路確保や商品開発などに課題を抱えている事業者もおり、それぞれの実情に合わせたきめ細かな支援を継続していく必要があります。

また、本市は、園芸作物や果樹、畜産など、多様な作物等の生産地となっていますが、首都圏をはじめとする消費地の市場では産地間競争が激しく、ブランドが確立されていない地域の産品は厳しい価格競争にさらされています。

そのため、本市農産品全体の価値の向上を図るとともに、確実にその価値を認識してもらうため、積極的な情報発信等の取組を包括的・戦略的に展開していくことが必要となっています。

イ 取組の方向

農林漁業者の所得向上と地域の雇用拡大を図るため、6次産業化に向けた設備投資や商品開発、販路拡大などを支援するとともに、人材育成や、マッチング支援による農商工連携の促進など、6次産業化を総合的に推進し、アグリビジネスの活性化につなげます。

また、本市農産品等の魅力と知名度を高め、さらなる販売促進を図るため、事業者による展示会等への出展を支援するとともに、JAや周辺自治体と連携し、首都圏等におけるプロモーション活動や情報の発信によるPRを行うほか、地元有望産品の商品開発や需要拡大に取り組み、ブランド力の向上に努めます。

農山村

ア 現状と課題

農業生産基盤や道路、上下水道などの生活基盤の整備は進んでいますが、地域における農林業の担い手不足や住民の高齢化の急速な進行に伴い、農用地、水路、農道等の保全管理が困難になるとともに、生産活動や集落機能の低下が懸念されています。

また、近年多発している局地的集中豪雨などにより、農林業施設の被災の頻度が増していることを踏まえ、山地災害の防止機能を有する森林の保全とともに、治山施設の整備を促進する必要があるほか、熊等の野生動物の出没が増加しているため、緩衝帯の役割を持つ里山を適正に管理する必要があります。

一方、地方への回帰意識の高まりや新型コロナウイルス感染症の影響によるライフスタイルの変化により、首都圏等からの人の流れが増加することが予想されており、農山村地域にある多様な地域資源を有効活用した人を呼び込むための取組が求められています。

イ 取組の方向

自然環境に配慮した農業生産基盤や生活基盤の整備を進めるとともに、農山村の持つ多面的機能の発揮に向けた取組への支援や農地集積等により、農業生産性の向上や生活環境の改善、集落機能の維持等を図るほか、老朽化した農業用ため池や治山施設の整備と里山の適正管理を促進し、人的被害や農地・山地被害の防止に努めます。

また、魅力ある体験プログラム等を通じて都市農村交流を促進するとともに、民間活力をいかしながら、農山村資源や自然環境を有効活用した新たなビジネスの創出、周辺環境整備などの取組を進め、働き方や余暇活動に関する多様なニーズを取り込むことにより関係人口を創出するなど、農山村地域の活性化を図ります。

『政策2 農林水産業の振興』のもと取り組む施策

施策① 農林水産業経営の確立と食料の安定供給

施策② 戦略的で多様なアグリビジネスの促進

施策③ 農山村地域の活性化と森林整備の推進

政策3 交流人口の拡大と関係人口の創出、移住促進

シティプロモーション

ア 現状と課題

人口減少・少子高齢化が進行する中、持続可能な社会の実現の原動力となるのは市民一人ひとりであることから、本市の魅力の整理や再発見などを通じて、まちへの「誇り」と「愛着」をはぐくみ、自らの住む地域に関わる当事者意識を醸成する必要があります。

また、行政だけでなく市民等が、ヒト、モノ、場所、暮らしの豊かさなど、本市の魅力を自ら内外に発信していくことが、交流人口の拡大と関係人口の創出などにもつながります。そのためには市職員への意識の浸透を図るとともに、市民、市民団体、企業等をパートナーとした取組の促進とまちに関わる当事者意識の醸成を図り、市民等自らが行う魅力的な情報発信により、まちの認知度とイメージの向上につなげていく必要があります。

イ 取組の方向

全庁一体となったシティプロモーション意識の醸成に向け、人口減少対策庁内連絡協議会による具体的取組の提案や情報共有など、全庁横断的な連携を進めます。

また、市民等と一体となった様々な活動を行う中で、自らの住む地域に関わる当事者意識を持った人を増やす仕組みをつくりながら、効果的な情報発信を行い、市民(定住人口)だけでなく市外の方(関係人口・交流人口)から「秋田市を好きになってもらう」ことを目指します。

観光

ア 現状と課題

観光客の志向は、大都市から地方、団体旅行から個人旅行、買物から体験型重視へ移行し、スマートフォンなどを活用した旅行スタイルへと変化してきています。

こうした中、観光客の需要を的確に捉えながら、引き続き、観光体験メニューの充実、二次交通網や多言語表記の整備、ICTの利活用など、魅力ある観光コンテンツの提供と受入体制の強化を図っていく必要があります。

また、新型コロナウイルス感染症の影響により、観光客やコンベンションは大幅に減少し、関連する事業者は深刻な状況にあります。国内外における感染症の状況を十分に見極めつつ、収束後の早期回復に向けた取組と体制づくりを行う必要があります。

イ 取組の方向

同感染症の状況を見極めつつ、観光客の需要を的確に捉え、県や関係市町村、民間団体と連携した取組を強化し、竿燈まつりなど魅力ある地域資源をいかしながら、クルーズ船誘致やインバウンド誘客、観光プロモーション、コンベンション誘致などを積極的に展開します。

加えて、同感染症の影響により落ち込んだ観光需要の回復にいち早く取り組むため、国や地域ごとの感染収束を見極めながら、地元・近隣への短距離観光やワーケーションなどの新たな需要への対応や、「新しい生活様式」のもとでの観光客の受入体制の整備に努めます。

まちのにぎわい

ア 現状と課題

にぎわいの核となる中心市街地では、歩行者通行量は減少傾向にあるものの、民間による各種施設の整備の進展のほか、長年にわたり下落が続いていた秋田駅西口商業地の地価が2年連続で上昇するなど、明るい兆しも見えてきており、さらなる活力の再生に向けて行政、地域、事業者が積極的ににぎわいの創出に取り組む必要があります。

クルーズ船誘致やインバウンド誘客、年間を通じたイベントの実施などによる中心市街地のにぎわい創出、地域資源である3つのトップスポーツクラブをいかしたにぎわい創出などに取り組んできましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、各種イベントの開催は大きな制約を受けているほか、人々の行動の変容が求められるなど、今後のにぎわいの回復に向けた見通しが厳しい状況にあります。

イ 取組の方向

中心市街地は本市をイメージする“顔”であり、コンパクトシティの核として高次都市機能の集積を図りながら、中央街区をはじめ、旭川をはさんだ大町、保戸野通町、川反地区を一体的な区域として、住み、集い、買物や公共施設の利用、散策など、市民や訪問者が愛着を持てる多機能空間として活性化を図るとともに、にぎわいの創出に努めます。

また、同感染症の影響により人々の移動や接触が制限されている中にあっても、収束後に多くの人々を呼び込むことができるよう、本市ならではの魅力の磨き上げと情報発信、「新しい生活様式」のもとでの安全安心な受入環境の整備に努めます。

さらに、芸術文化ゾーンや千秋公園などの中心市街地の一体的なにぎわいの創出を進めます。

クルーズ船の寄港は、インバウンド誘客や交流人口の拡大に加え、経済波及効果が見込まれることから、引き続き誘致に向けた取組を進めます。

また、地元のトップスポーツクラブを応援することで、市民の連帯意識や地域に対する愛着を深めるとともに、スポーツの力をまちづくりにいかすため、スポーツ施設の充実・活用に努めます。

関係人口の創出・拡大

ア 現状と課題

人口減少・少子高齢化の進行により、市の周辺部を中心に、地域づくりの担い手となる人材が不足し、伝統文化の継承や伝統行事の継続、コミュニティの維持などが困難となることが懸念されます。

一方で、全国的には、地方に残された自然や様々な習俗に関心を持ち、自発的に地域のにぎわいづくりに貢献したいという若者を中心とした大都市から地方への新しい人の流れが生じていることに加え、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、東京一極集中や大都市の過密さがリスクや弱点として広く認識され、都市住民の地方への関心が高まっています。

こうした関心層を地域の担い手として確保することは、その地域の担い手として活躍することにとどまらず、地域住民との交流が新たな発見や価値を生み、地域経済の発展につながることが期待できます。

また、地域への関心や地域との関わりを深める中で築いた関係が、地方移住を決めるきっかけとなることが多く、移住の裾野拡大の観点からも、継続的に本市の住民や地域と多様な形で関わる「関係人口」の創出・拡大を図る取組を進める必要があります。

イ 取組の方向

本市とつながりのある方はもとより、ゆかりのない方にも、本市の認知度を高め関心を持ってもらうための事業に取り組みながら、本市の豊かな自然や文化、教育環境などを活用した体験活動等の機会を提供し、本市と多様な形でつながりを持つ市外居住者の増加を目指します。

移住の促進

ア 現状と課題

移住・定住促進の取組により、本市への移住者数は年々増加しているものの、依然として、高校、大学等の卒業に伴う進学・就職による転出が社会減の大きな要因となっており、若者の地元定着やふるさと回帰が課題となっています。

一方、足下では、新型コロナウイルス感染症の拡大により、東京一極集中や大都市の過密さがリスクや弱点として広く認識され、東京圏の若い世代を中心に、都市住民の地方移住への関心が高まっており、県外からの移住を増やす取組を加速させる必要があります。

また、移住希望者を呼び込み、受け入れるためには、自らの住む地域に誇りや愛着を持った市民を増やすことが重要です。

イ 取組の方向

都市の便利さと豊かな自然がほどよく調和したまちという本市の魅力を市内外へ戦略的にPRするとともに、その良さを実際に体験してもらうための取組を強化します。また、進学、就職等で転出した本市出身者のUターンや、市内の大学への進学等をきっかけに転入した若者の定着も含め、県外からの移住者を積極的に受け入れ、定着につなげられる環境の整備に引き続き努めます。

加えて、都市住民の意識・行動の変化に応じた施策の実施により、移住のさらなる促進に努めます。

『政策3 交流人口の拡大と関係人口の創出、移住促進』のもと取り組む施策

施策① シティプロモーションの推進

施策② 観光振興の推進

施策③ にぎわいの創出

施策④ スポーツの力をいかした地域活性化

施策⑤ 関係人口の創出・拡大

施策⑥ 移住の促進

将来都市像2 緑あふれる環境を備えた快適なまち

利便性の高い都市基盤を整備しながら、本市の住みよい環境を保全し次世代へ継承することができるコンパクトシティを形成し、いつの時代においても、「緑あふれる環境を備えた快適なまち」を目指します。

政策1 環境との調和

環境保全

ア 現状と課題

本市は、先人から受け継いだ豊かな自然と伝統にはぐくまれた歴史的・文化的環境が調和した美しいまちとして、秋田らしい恵み豊かな環境が保たれています。

一方で、世界や国内に目を向けると、大量消費による資源の枯渇、野生生物の生息・成育環境の悪化、日常生活に起因する環境への負荷や廃棄物問題など、環境に関する問題は多様かつ複雑化し、本市への影響も懸念されます。

イ 取組の方向

本市の恵まれた自然を次の世代に引き継ぐため、私たち一人ひとりがこれまでのライフスタイルを見直すとともに、市民、事業者、市が情報を共有し、協働で環境の保全および創造に関する様々な取組を進めます。

循環型社会

ア 現状と課題

本市を含む社会全体において、廃棄物処理に係る環境負荷、最終処分場の確保、処理経費の増大、処理過程で環境汚染が発生する危険性への対応、不法投棄による環境悪化といった課題が数多く残されています。

こうした課題に対応していくためには、大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会から脱却し、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷が低減される社会、すなわち「循環型社会」の早急な構築が必要になっています。

とりわけ、大量の食品ロスやプラスチックごみによる海洋汚染は、地球規模での問題となっており、これらの発生抑制が喫緊の課題となっています。

イ 取組の方向

市民や事業者の協力のもと、循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号)における廃棄物の発生抑制(リデュース)、使用済み製品等の再使用(リユース)に優先的に取り組み、その上で、排出される廃棄物については、徹底した再生利用(リサイクル)を図り、持続可能な循環型社会の構築を目指します。

脱炭素社会

ア 現状と課題

人類の活動により大量に排出される二酸化炭素等の温室効果ガスが原因とされる地球温暖化は、地球規模の気候変動をもたらし、地球の生態系へ重大な影響が生じていることから、国および国際レベルで防止策や対応策が進められています。本市も、秋田市役所環境配慮行動計画および秋田市地球温暖化対策実行計画に基づき、市民、事業者と一体となって、地球温暖化対策に取り組んでいく必要があります。

イ 取組の方向

政府による「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする脱炭素社会の実現を目指す」との宣言を受け、本市においても、家庭や事業所における再生可能エネルギーや省エネルギー設備の導入を促進するほか、使い捨て製品の抑制による廃棄物の削減やエコドライブ、エコオフィスの取組など、環境にやさしいライフスタイルやワークスタイルの推進に努め、脱炭素社会の構築を目指します。また、温室効果ガスの吸収源となる森林の整備や、恵まれた秋田の資源・エネルギーをいかした環境関連産業の育成・創出を図ることで、環境と経済の好循環を目指します。

『政策1 環境との調和』のもと取り組む施策

施策① 環境保全の推進

施策② 循環型社会の推進

施策③ 脱炭素社会の推進

政策2 都市基盤の確立

市街地形成

ア 現状と課題

本市は、人口減少の進行とともに、市街地の低密度化が進んでおり、この状態がさらに進んだ場合、インフラの維持・更新費など都市経営コストの増大とともに、一定の人口に支えられてきた医療・福祉・商業・子育て支援等の生活サービスの低下が危惧されます。

イ 取組の方向

今後の人口減少・少子高齢化の進行を見据え、市民が将来にわたり生活に必要なサービスを容易に享受できるよう、市街地の拡大を抑制するとともに、これまで市街地内で蓄積してきた都市基盤施設や都市機能を有効活用しながら、都心・中心市街地を本市の顔となる各種高次都市機能の集積を図る拠点として、また、6つの地域中心を地域特性を踏まえた生活サービスの拠点として、都市機能や居住の誘導を図り、持続可能なコンパクトな市街地形成を目指します。

景観形成と都市の緑

ア 現状と課題

太平山の裾野が見渡せる田園風景の美しい眺め、旭川が流れる城下町や街道の伝統を感じさせる既存市街地、緑化され整然とした新興住宅街など、良好な景観が形成されています。

都市の緑については、これまでの公園整備や緑化・保全活動により、一定の量を確保してきましたが、未だ整備が進んでいない地域もあります。また、近年では、レクリエーションの場としてだけでなく、地球温暖化対策や防災・減災など、緑が持つ多機能性に対する期待や求められる役割が変化してきています。

イ 取組の方向

豊富な自然や受け継がれてきた歴史と良好な景観資源の保全など、地域の特性をいかした新たな「秋田らしさ」の創造に向け、市民、事業者および行政が一体となって魅力あふれる景観づくりに取り組み、うるおいとやすらぎを得られる景観形成を目指します。

また、都市の緑の量の確保に向けた取組を引き続き進めるとともに、緑の多機能性をいかし魅力を高める取組を、市民や事業者など多様な主体が関わりあいながら進め、緑豊かで心うるおう都市環境の形成を目指します。

住宅

ア 現状と課題

住宅総数は減少傾向となっていますが、戸建て住宅の割合や持ち家率は高い状況にあり、量的には充足している一方、人口が減少し、世帯数も減少に転じることが見込まれる中、空き家が増加していることなどから、社会情勢の変化に対応した住環境の整備が求められています。

住宅のバリアフリー化や耐震化は徐々に進んでいますが、誰もが安全安心に暮らせるよう、さらなる住宅の質の向上と災害等に強い住まいづくりを進める必要があります。また、建築物の中高層化による日照やプライバシーの問題など、近隣住民との調整を必要とする事例も見られます。

市営住宅等については、子育て世帯や高齢者世帯などの生活環境が整った立地にある住宅への入居要望が多くなっています。

イ 取組の方向

住宅ストックの質の向上と有効活用を促進し、まちなかへの居住誘導を推進するなど、良好な住環境の形成を目指します。

また、市営住宅等については、計画的な更新や適切な維持管理を行うとともに、多様なニーズに応え、誰もが安心して住み続けられる環境の確保に努めます。

水道

ア 現状と課題

普及率がほぼ100%となり、市民誰もが水道を利用できる環境になっているものの、老朽化した施設の更新や危機管理対策などが必要となっています。

また、人口減少やこれに伴う給水量の減少など、経営環境は厳しさを増しており、経営基盤の強化が求められています。

イ 取組の方向

効率的な事業経営のもと、老朽化した施設の更新や耐震化、ダウンサイジングなどの施設規模の適正化、危機管理対策の見直しなどを進め、安全でおいしい水の安定的な供給を目指します。

生活排水処理

ア 現状と課題

公共下水道などによる汚水処理人口普及率は97%を超えたものの、水洗化率は90%と伸び率が鈍化しており、未接続世帯の水洗化率向上による公共用水域の水質保全が必要となっています。

また、施設の老朽化や危機管理対策に加え、人口や使用料収入の減少など、経営環境は厳しさを増しており、経営基盤の強化が求められています。

イ 取組の方向

効率的な事業経営のもと、未接続世帯の水洗化の促進、老朽化した施設の更新や長寿命化、危機管理対策の見直しなどを進め、快適な生活環境の整備と公共用水域の水質保全を目指します。

道路整備

ア 現状と課題

都市計画道路など骨格道路のネットワークの構築が遅れているほか、高度経済成長期に集中的に整備された橋りょうなどの道路ストックの老朽化対策が急がれています。

イ 取組の方向

市民生活と社会経済活動を支える骨格道路のネットワークの整備を引き続き推進するとともに、道路ストックの予防保全型の維持管理を計画的に行い、安全安心な道路の保全と長寿命化を推進します。

交通機能

ア 現状と課題

市内には秋田港や秋田空港、秋田駅、高速道路のインターチェンジがそろっており、これらの交通拠点により人流・物流を広域的に結んでいます。

一方、鉄道やバスなどの公共交通については、人口減少・少子高齢化の進行に伴う利用者の減少により、交通事業は厳しい状況が続いていますが、市民の移動手段として、一定のサービス水準を確保しながら、将来にわたって公共交通ネットワークを維持していく必要があります。

イ 取組の方向

陸・海・空の優れた広域交通機能を活用した、東北を代表する交流拠点となる求心力の高い魅力的なまちを目指します。

また、公共交通は、地域のニーズや特性に配慮した公共交通ネットワークの再構築やICTの活用を図るなど、市民の利便性の確保と効率性の両立を目指します。

情報通信環境

ア 現状と課題

パソコン、スマートフォン、タブレット端末などの普及に伴い、インターネットを中心にICTが急速に進展し、快適で便利な市民生活を送る上で、その重要性が高まっています。行政の各分野においても、デジタル技術を活用した行政手続等の簡素化や行政運営の合理化が求められています。一方で、セキュリティの確保や情報通信環境に格差が生じている地域や市民もいることが課題になっています。

イ 取組の方向

新しいデジタル技術の導入・普及を促進し、より快適で便利な市民生活を目指すとともに、行政の各分野においても、ICTの積極的な導入と最適化を行い、行政手続のデジタル化を推進します。

また、セキュリティの確保に十分留意した上で、ICTの活用を図るとともに、情報通信環境の格差縮小に努めます。

『政策2 都市基盤の確立』のもと取り組む施策

施策① 秩序ある都市環境の形成

施策② 住宅環境の整備

施策③ 上下水道サービスの提供

施策④ 道路整備の推進

施策⑤ 公共交通の充実・確保

施策⑥ 情報通信技術の利活用

将来都市像3 健康で安全安心に暮らせるまち

生活の危険を回避できる十分な体制を整備し、市民が健やかな心身を保ちながら、「健康で安全安心に暮らせるまち」を目指します。

政策1 安全な生活の実現

災害時の危機管理

ア 現状と課題

東日本大震災による地震と津波、また、近年の異常気象により、集中豪雨やこれに伴う土砂災害、河川の氾濫等の水害など、全国的に自然災害の被害が増加し、大規模化・複合化する傾向にあります。また、災害発生時の避難所運営においても感染症対策等の対応が求められています。

市民の生命や財産などを脅かす危機が増加している一方、地域の防災活動の要ともなる自主防災組織は、少子高齢化の進行やコミュニティ意識の希薄化などへの対応が必要となっています。

イ 取組の方向

大規模化・複合化する災害に対応するため、行政だけでなく、関係機関をはじめ、市民一人ひとりが、また企業などの事業者が、それぞれ自らの力で自らを災害から守り、相互に助けあい、自助・共助・公助の理念に基づき連携を図り、災害対応や協働による避難所運営の意識の醸成、災害や危機に対して迅速に対応できる体制の整備を進めます。

健康危機管理

ア 現状と課題

生活環境がグローバルな変化を続ける中、食中毒や感染症など健康を脅かす健康危機の発生が危惧されます。

イ 取組の方向

健康危機の発生時には、被害を最小限にするよう、関係機関等から情報を収集し各種調査を実施するなど、的確な対応ができる体制を構築します。

災害に強いまちづくり

ア 現状と課題

市内には、木造住宅密集地や狭い幅員の生活道路、公園が少ない地域などがあり、緊急時における物資輸送路や避難経路、オープンスペースの確保のほか、河川の氾濫対策など、都市の防災機能面で十分な水準に達していない状況が見受けられます。

イ 取組の方向

秋田市国土強靱化地域計画に基づき、無電柱化や治水対策の推進など、防災・減災に対応した都市機能の充実を図り、道路、公園、河川、下水道などの都市空間が有する多様性を活用した災害に強いまちを目指します。

雪に強いまち

ア 現状と課題

これまで道路除排雪作業の主力を担ってきた経験豊富な建設業者が減少傾向にあるなど、雪対策を取り巻く環境は一段と厳しくなっています。

一方、地域においては、少子高齢化の進行や社会経済情勢の変化などにより、屋根の雪下ろしや間口除雪など雪処理の担い手不足が課題となっています。

イ 取組の方向

冬期における雪対策については、市民協働の推進や高齢者支援策などの充実を図るとともに、除排雪車両運行管理システムなどを活用した、市民への的確な情報提供と迅速かつ効果的な除排雪体制を強化することにより、安全で円滑な道路交通が確保された雪に強いまちを目指します。

防犯対策

ア 現状と課題

市民による見守りやパトロールなど地域の安全安心につながる活動が活発に行われるようになった一方で、犯罪内容は多様化し、その手口が悪質化、巧妙化しています。また、重大な犯罪につながりかねない不審者情報も多数あり、治安悪化に対する不安が大きくなっています。

イ 取組の方向

地域全体の治安を確保するため、警察、市、地域などが、各自の役割を果たしながら緊密に連携し、犯罪を抑止するための効果的な取組を行うことで、子どもから高齢者まで、誰もが安心して暮らせるまちの実現を目指します。

交通安全対策

ア 現状と課題

交通安全活動の取組により、交通事故の発生件数、死傷者数ともに減少傾向にあるものの、発生件数に占める高齢者が起こした事故の割合が増加しています。

また、生活道路には幅員の狭い道路や見通しの悪い交差点が多く残っており、歩行者や自転車の交通環境は厳しい状況にあります。

イ 取組の方向

交通安全に対する意識啓発や交通安全運動の推進を図るとともに、道路や交通安全施設の整備などにより、すべての道路利用者が安全で快適に利用できる道路空間の確保を目指します。

『政策1 安全な生活の実現』のもと取り組む施策

施策① 危機管理体制の確立

施策② 災害や雪に強いまちの確立

施策③ 防犯・交通安全体制の確立

政策2 安心して暮らせる毎日の実現

消費・生活衛生環境

ア 現状と課題

消費生活におけるサービスの多様化等に伴い、インターネット関連、悪質商法等のトラブルや被害の内容が複雑化・多様化しています。

また、食生活を取り巻く環境の変化により、食品の安全に対する意識が高まっているほか、ライフスタイルや価値観の多様化に伴い、生活衛生関係施設の衛生確保や動物の適正飼養が求められています。

イ 取組の方向

トラブルの未然防止に向けた啓発活動、消費者教育の実施、相談体制の充実、適切な監視指導などにより、消費生活の安全安心の確保や生活衛生環境の維持向上に努めます。

食育

ア 現状と課題

「食」は、私たちが生きていく上で欠かせないものであり、健康に暮らしていくための基本となるものですが、栄養の偏りや不規則な食事、地域の食文化の喪失などが見受けられており、「食」のあり方や地域食材の活用に対する関心が高まっています。

イ 取組の方向

生涯にわたって健康な心と身体をつくり、豊かな人間性をはぐくんでいけるよう、食育の推進に取り組みます。

保健・医療

ア 現状と課題

医学の進歩や生活環境の改善により平均寿命が延びる中で、食生活やライフスタイルの多様化とともに、喫煙や運動不足などによる生活習慣病が増加しています。また、がんは依然として死亡原因の第1位であり、がん対策も重要となっています。

自殺者数は減少傾向にありますが、自殺や精神障がいに対する社会の理解を深め、こころの健康づくりにさらに取り組んでいく必要があります。

イ 取組の方向

市民一人ひとりの健康に対する意識を高め、心身ともに健康で、元気に生活できる期間(健康寿命)を延ばすよう取り組みます。

火災・災害への対応

ア 現状と課題

建物火災のうち住宅火災が過半数を占め、放火による火災も毎年発生しています。

また、全国的に住宅火災による死者のうち約7割が65歳以上の高齢者であり、これらを低減する取組が必要です。

さらに、近年は異常気象に伴う自然災害のほか、産業の多様化や都市形態の複雑化などから、特殊災害の発生が危惧されます。

イ 取組の方向

火災予防対策の強化と消防力の充実により、火災や災害による被害の少ない社会を構築し、市民の安全確保に取り組みます。

救急体制

ア 現状と課題

超高齢社会を迎え、高齢者の搬送割合の上昇などを背景に、救急出動件数は増加しています。

一方、AEDを積極的に設置したことや救命講習修了者が延べ29万人を超えたことなどにより、救命に対する市民の意識は向上しており、応急手当の実施率が高まっています。

イ 取組の方向

救急需要増大への対応、市民による応急手当が恒常的に実践される社会形成およびメディカルコントロール体制の充実強化など、より迅速で質の高い救急体制の構築を目指します。

社会保障制度

ア 現状と課題

2025年にはいわゆる団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となるなど、今後、医療や介護サービスの需要の増加が予想されます。

本市においては、国民健康保険は、団塊の世代の後期高齢者医療制度への移行などにより、被保険者数はさらに減少すると見込まれる一方、医療の高度化や高齢化の進行などにより、1人当たりの医療費が増加しており、給付費はほぼ横ばいに推移すると見込まれます。保険税の収納率は上昇しているものの、被保険者数の減少と所得水準が伸びていないことから収納額は年々減少しており、運営が厳しい状況にあります。

また、介護保険制度は、介護保険サービスを必要とする方の増加に伴い、介護保険から給付される費用が年々増加していくことが予想されます。

さらに、生活保護制度は、高齢者世帯が増加するとともに、医療扶助費が増加していくことが見込まれます。

イ 取組の方向

適切な社会保障制度の運営により、誰もが住み慣れた地域で尊厳ある生活を送り、安心して医療・介護のサービスを受けられる社会を目指します。

『政策2 安心して暮らせる毎日の実現』のもと取り組む施策

施策① 健全な消費・生活衛生環境の確保

施策② 食育の推進

施策③ 保健・医療体制の充実

施策④ 消防・救急体制の充実

施策⑤ 社会保障制度の確保

将来都市像4 家族と地域が支えあう元気なまち

家族の絆・地域の絆・人と人との絆のもと、すべての市民が主人公として尊重され、充実した生涯を送ることができる「家族と地域が支えあう元気なまち」を目指します。

政策1 家族や地域を支える絆づくり

家族と地域

ア 現状と課題

ライフスタイルや価値観の多様化、少子高齢化の進行などにより、家族のコミュニケーションが不足したり、地域における住民同士の交流や助けあいなど、人と人とのつながりが希薄になる傾向にあります。

イ 取組の方向

支えあい助けあう相互扶助の心をはぐくみ、人と人との強い絆の大切さを、家族から地域へ、さらには次の世代へ伝え広げていく社会の形成を目指します。

男女共生

ア 現状と課題

これまでの取組や法制度の整備により、男女共生についての意識は浸透してきていますが、家庭や職場、地域活動などの場において、性別役割分担に関する社会通念や慣行の見直しについて、さらに理解を深める必要があります。

また、その人なりの特性や状況の違いに目を向け、偏見や差別をなくすための意識の醸成が必要です。

イ 取組の方向

性別だけでなく、年齢、身体状況、国籍、LGBTQ等の性的マイノリティなどの多様性を受け入れ、認めあい、誰もがお互いの人権を尊重し、一人ひとりが個性や能力を十分に発揮できる社会の形成を目指します。

『政策1 家族や地域を支える絆づくり』のもと取り組む施策

施策① 家族・地域の絆づくりの推進

施策② 男女共生社会の確立

政策2 地域福祉の充実

地域福祉

ア 現状と課題

人口減少・少子高齢化の進行に伴って、地域活動の担い手不足や社会的なつながりの希薄化が進行しており、地域福祉を担う人づくりや支えあいの地域づくりなどに一層取り組む必要があります。

イ 取組の方向

地域福祉の推進のため、一体的かつ重層的な支援体制を整備するとともに、住民が住み慣れた地域で自分らしく暮らしていけるよう、みんなで支えあいながら、地域をともにつくっていく地域共生社会を目指します。

障がい者福祉

ア 現状と課題

障がい者が自立した生活を営む上での社会的障壁の除去や、社会参加の機会の確保が十分ではないことから、障がい者はその活動を制限され、結果的に日常生活や社会生活において制約を受けることがあります。「秋田市障がいのある人もない人も共に生きるまちづくり条例」に基づき、共生社会の実現に向けて継続して取り組んでいく必要があります。

イ 取組の方向

誰もが障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重しあいながら共生できるまちを目指します。

高齢者福祉

ア 現状と課題

本市の人口に占める65歳以上人口の割合は30%を超えており、ひとり暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯も増加傾向にあるほか、2025年には、いわゆる団塊の世代全員が75歳以上となるなど、介護および福祉サービスへのニーズはますます高まるものと考えられます。

また、年齢を重ねても自分らしく生きがいを持ち続けながら生活することは、健康長寿につながることから、高齢者の豊かな経験や知識、意欲をいかした取組を進めることが重要となっています。

イ 取組の方向

高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活を営むことができるよう、医療・介護・介護予防・生活支援などに関する様々な専門機関および職種が連携し、高齢者の暮らしを包括的に支える地域包括ケアを推進します。

また、高齢者自らの生きがいづくりと社会参加を促進し、社会の支え手としての役割を担い活躍できるエイジフレンドリーシティ(高齢者にやさしい都市)の実現を目指します。

『政策2 地域福祉の充実』のもと取り組む施策

施策① 地域福祉の推進

施策② 障がい者福祉の充実

施策③ 高齢者福祉の充実

政策3 次代を担う子どもの育成

子ども・子育て

ア 現状と課題

少子化や核家族化の進行、地域での人と人とのつながりの希薄化、共働き家庭の増加などにより、子どもや子育て家庭を取り巻く環境は大きく変化しています。

また、育児や子育てに対する孤立感や負担感に加え、児童虐待や貧困、養育困難家庭の増加、子どもたちが遊びを通じてともに成長する機会の不足など、子どもが健やかに成長する上で様々な課題が生じています。

こうした中、子育て家庭における様々なニーズや悩みに対応するとともに、「未来への希望」「社会の宝」である一人ひとりの子どもが心身ともに健やかに育つことができるよう、社会全体で子ども・子育て支援に取り組んでいくことが求められています。

イ 取組の方向

子どもと子育て家庭を社会全体で支援することで、安心して子どもを生み育てることができ、次代を担う子どもたちが健やかに成長できるまちを目指します。

若い世代

ア 現状と課題

深刻さを増す少子化は、社会や経済、地域の持続可能性を基盤から揺るがす事態につながるおそれがあります。

少子化の要因として影響が大きい未婚化・晩婚化の背景には、若い世代における経済的な不安定さ、出会いの機会の減少、仕事と子育ての両立の難しさなど、一人ひとりの結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な課題があり、家族を持つことや子どもを生み育てることの喜び、楽しさを実感できる環境と社会づくりが急務となっています。

イ 取組の方向

若者の自立を支援し、生活との調和のとれた働き方を実現することで、家庭を築き、子どもを生み育てたいと思う若者の希望が実現できるまちを目指します。

『政策3 次代を担う子どもの育成』のもと取り組む施策

施策① 子ども・子育て環境の充実

施策② 若い世代の育成支援

政策4 市民の主体的な活動の推進

地域の自治活動

ア 現状と課題

町内会や自治会などは地域の自治活動の中心的役割を担っていますが、地域コミュニティへの帰属意識の希薄化などにより、加入率の低下や担い手不足などの問題を抱え、共同体としての機能の維持、活動の活性化に苦慮している傾向にあります。

一方、住民が地域のまちづくりの方向性などについて話しあい、住民主体の特色あるまちづくりに取り組み始めた地域もあります。

イ 取組の方向

住民一人ひとりがまちづくりに関わり、地域課題の解決や魅力的なまちづくりに主体的に取り組む社会を目指します。

市民活動

ア 現状と課題

NPOやボランティアなどによる市民主体のまちづくり活動が広がり、複雑多様化する社会の担い手の一つとして浸透してきています。

こうした中、市民活動に関心のある市民は4割を超えていますが、参加割合は依然として低いことから、参加機会の創出や関心を高める取組が必要です。

イ 取組の方向

市民主体のまちづくり活動を促進するために、市民が公共的活動に参画しやすい環境づくりを推進し、市民協働によるまちづくりを目指します。

『政策4 市民の主体的な活動の推進』のもと取り組む施策

施策① 市民による地域づくりの推進

施策② 市民活動の促進

将来都市像5 人と文化をはぐくむ誇れるまち

歴史や文化をいかした魅力あるまちづくりを進めるとともに、生涯にわたり学習・文化・スポーツ活動に取り組める環境の中で、誰もが目標に向かって成長し、希望に満ちた生活を送ることができる「人と文化をはぐくむ誇れるまち」を目指します。

政策1 文化の創造

文化財

ア 現状と課題

豊かな自然に恵まれた本市には、貴重な文化財が数多く残っており、重要な地域資源として大切に保存し、公開・活用されています。

一方、経年劣化や担い手不足などにより、文化財の適正な保存・活用に様々な課題が生じていることから、地域全体で文化財を守り活用していくネットワークを構築する必要があります。

イ 取組の方向

地域に根ざした文化財の調査を進め、社会状況の変化等を踏まえた保存・継承のための取組を進めるとともに、貴重な地域資源として有効活用を図ることで、文化をいかした魅力あるまちづくりを目指します。

芸術・文化

ア 現状と課題

秋田ならではの文化事業の実施や新たな文化施設の整備などにより、市民の芸術文化に対する関心が高まりつつあり、自主的な活動が広がりを見せるとともに、幅広い市民や団体の連携による芸術文化をいかしたまちづくりが進められています。

一方、新型コロナウイルス感染症により、多くの公演や発表会が中止になるなど、市民の文化活動に大きな影響が生じています。

イ 取組の方向

市民が自主的な芸術文化活動に親しむことができる環境づくりを進めるとともに、「新しい生活様式」のもと、文化団体等が活動を継続できるよう支援に努めます。

また、市民一人ひとりの創造力をいかし、文化が持つ力により、心に豊かさとうるおいをもたらす社会を目指します。

生涯スポーツ

ア 現状と課題

市民の健康志向の高まりや余暇時間の増加に伴い、気軽にスポーツに親しみながら、心身ともに健康な生活を送ることができる、豊かなスポーツライフを実現したいという意識が高まってきています。

この実現に向けて、ライフステージに応じた多様なニーズへの対応と新型コロナウイルス感染症対策を踏まえたスポーツ振興に取り組む必要があります。

イ 取組の方向

市民がそれぞれの体力や年齢、興味・目的に応じて、いつでも、どこでも、いつまでもスポーツに親しむことができる生涯スポーツ社会の実現を目指します。

また、市民一人ひとりが、「新しい生活様式」のもと、主体的にスポーツ活動を楽しみながら、生涯にわたり、健康や生きがいづくりに取り組める環境づくりを進めます。

国際交流

ア 現状と課題

本市は、友好姉妹都市提携等をしている海外の各都市と、行政、教育、芸術文化、スポーツ、医療、経済など様々な分野での交流を行ってきましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、直接往来する交流については実施が難しい状況にあります。

また、わが国の外国人材の受入推進施策等に伴い、外国人住民の増加傾向が続いていましたが、同感染症の影響により微減となっています。

グローバル化の進展により、世界情勢の変化が直接・間接的に市民生活に与える影響が大きくなっていく中、こうした状況の変化に対応した国際交流施策、多文化共生施策を進めていく必要があります。

イ 取組の方向

各都市の特性や地域性をいかした特色ある交流の実施に努めることを基本とし、世界的な疾病の流行等により直接の往来が困難な場合は、ICTを活用した代替交流方法を検討するなど、柔軟な対応に努めます。

また、市民が世界の多様な文化や習慣を持つ人々と相互に理解する機会を増やし、国際意識や平和意識の高揚を図りながら、多文化共生のまちを目指します。

『政策1 文化の創造』のもと取り組む施策

施策① 文化財の保存と活用

施策② 市民文化の振興

施策③ 生涯スポーツの推進

施策④ 国際交流の推進

政策2 教育の充実

社会教育

ア 現状と課題

自らの個性を発揮し、能力を高め、生きがいのある生活を送るため、生涯を通じて学びたいという市民の学習意欲が高まるとともに、学習ニーズが高度化・多様化しています。また、学習した成果を主体的に社会にいかすことが求められています。

イ 取組の方向

学習環境の変化やライフステージに応じた様々な学習機会を通して、多くの市民がともに学び、学ぶ楽しさを実感できるようにするとともに、学んだ成果を、人づくり、つながりづくり、地域づくりに結びつけることにより、持続可能な活力ある社会の実現を目指します。

学校教育

ア 現状と課題

少子化の進行、AI等の科学技術やグローバル化の進展、価値観の多様化、「新しい生活様式」への対応など、子どもを取り巻く環境が大きく変化しています。

こうした中、変化を前向きに受けとめ、個性や能力を最大限に発揮して主体的に未来を切り拓くとともに、様々な人と協働しながら課題を解決していく人材の育成が求められています。

イ 取組の方向

「徳」「知」「体」をバランスよくはぐくむ学校教育を通して、志を持って主体的に新たな価値を創造し、予測困難な未来を切り拓く「自立」の力と、多様な価値観を互いに認めあい、協働して社会を創造する「共生」の力を育成することを目指します。

高等教育

ア 現状と課題

18歳人口の減少などにより、高等教育機関を取り巻く環境が厳しくなる一方、時代に適応した教育の高度化・専門化に加え、地域や企業等との連携による新たな価値の創造やまちづくり、学問、技術・文化等の拠点としての役割を強化することが求められています。

イ 取組の方向

高等教育機関がより豊かな教養と深い専門性を身につけ、地域社会の発展に貢献できる人材を育成し、情報発信力を高めるとともに、効率的かつ安定した経営ができるよう支援します。

また、高等教育機関が蓄積する高度な知的資源を、地域産業の発展や文化の振興などにいかせるよう連携を進めます。

『政策2 教育の充実』のもと取り組む施策

施策① 社会教育の充実

施策② 学校教育の充実

施策③ 高等教育の充実

第4 総合計画推進のために

1 計画推進体制の構築

基本理念の実現に向け、行政サービスの向上と行政経営の確立により総合計画を推進する体制の整備を進めます。

行政サービスの向上では、窓口における市民満足度の向上、身近な場所でのサービス提供機会の充実などの市民の利便性向上につながる体制の構築を、また、行政経営の確立では、効率的かつ効果的な行政経営システムおよび行財政改革を推進する体制の構築を目指します。

2 計画推進にあたっての視点

基本理念の実現に向け、次の6つの視点に基づき、基本構想に掲げる各取組を進めます。

この6つの視点は、今後の本市の経営資源を最大限にいかしながら、市民と一緒にまちづくりを進めていくため、常に意識していくとともに、推進計画における事務事業の企画立案、実施、評価にあたり、留意していくべきものです。

(1) 行政のデジタル化の推進

本市では、行政の各分野においてICTやAIをはじめとしたデジタル技術を積極的に活用し、行政手続の簡素化や行政運営の効率化などによる業務改革を進め、市民の利便性の向上に努めます。

(2) 行財政改革

本市では、人口減少・少子高齢化の進行など、本市を取り巻く社会情勢の変化に対応し、持続可能な行財政運営を実現するため、「経営資源の最適配分の実現」「市民協働による地域・社会課題の解決」「官民連携による行政運営の確立」に取り組み、さらなる市民サービスの向上に努めます。

(3) 地方分権改革への対応

本市では、住民に最も身近な基礎自治体を重視した地方分権改革の進展に伴って、市民の期待に応えられる体制を構築します。また、地方自治の本旨に基づく団体自治の理念のもと、制度改革に対応した責任ある政策形成ができるよう、人材育成と組織整備に努めます。

(4) 市民協働

本市では、市民自らが主体となり「自分たちの地域は自分たちでつくる」「地域の課題は地域で解決する」住民自治の理念のもと、都市内地域分権の一層の定着を図るとともに、市民の参加と協働によるまちづくりの推進に努めます。また、地域・社会課題の解決に向け、市民、NPO、企業、高等教育機関等の多様な主体が公共を支える市民協働に取り組み、未来の公共をともに創造していくことに努めます。

(5) シビックプライド(まちへの誇りと当事者意識)の醸成

本市では、まちを元気にし、次の世代に引き継ぐ原動力は市民一人ひとりであるとの認識のもと、市民のまちづくりに関わる機会の拡大、本市の豊かさ・魅力の掘り起こしや発信等を通じて、市民がまちへの愛着や誇りを感じ、このまちをより良くするために関わる当事者意識「シビックプライド」の醸成に努めるとともに、市職員への意識の浸透を図ります。

(6) 家族・地域の絆づくり

本市では、人と人とのつながりや絆を大切にする心をはぐくみ、市民が互いを尊重しあいながら、自助・共助が促進されるように努めます。また、地域福祉や次代を担う子どもの育成など、それぞれの分野が連携し、地域のコミュニティや世代間交流を推進し、家族や地域全体が支えあう元気な社会の形成に努めます。

第5 創生戦略

戦略設定の趣旨

ア 普段の暮らしにある「心の豊かさ」

経済活動上の効率性や合理性などから、これまで、大都市への人やモノの集中が進んできましたが、コロナ禍により、東京一極集中や大都市の過密さがリスクや弱点として広く認識されるようになり、社会のあり方や人々の生き方、価値観に大きな変化が生じています。

秋田で暮らす私たちにとっても、「地方で生きる」ことの価値と意義を改めて捉え直す、大きな転機です。

充実した日々の営み、静かな生活環境、身近にある豊かな自然、旬の食べ物など四季を感じる暮らし、人と人との適度な距離感やつながり、地域の営みや歴史に根ざした文化。

地方都市の普段の暮らしがもたらす「心豊かな暮らし」は、私たちにとって、まちに対する愛着の源泉であり、大都市で暮らす人々にとっては、「生活の質」を高める大きな魅力として、地方回帰のきっかけとなるものです。

イ 「心豊かな暮らし」を支える「社会基盤」

同時に、「心豊かな暮らし」を実感するためには、日々の暮らしを支えるしっかりとした土台を固めることが重要です。

安定した仕事や収入、安全・安心、子育てしやすい環境、健康長寿、充実した公共交通、そして、「新しい生活様式」を支えるICTなどの先端技術。

人口減少下にあっても持続可能な「社会基盤」が不可欠です。

ウ 豊かさの実感に向けた戦略

「心豊かな暮らし」とそれを支える「社会基盤」。「地方で生きる」うえでは、そのバランスが大切と考えます。

地方の中核都市である本市には、適度な水準でそのバランスをとることができる長所があります。長所をいかし、伸ばすことを通じて、市民一人ひとりが暮らしの豊かさを実感し、「このまちで生きる」ことに幸せと誇りを感じ、都市としての魅力を高めていくことが肝要です。

このことを念頭に置き、本市の経営資源を一体的かつ集中的に投入する分野として、

『先端技術を活用した地域産業の振興としごとづくり』

『芸術文化・スポーツ・観光による都市の魅力向上』

『未来につなぐ環境立市あきたの推進』

『子どもを生み育てやすい社会づくり』

『いきいきと暮らせる健康長寿社会づくり』

の5分野を創生戦略に設定するものです。

~「大都市」から「地方」へ。「地方で生きる」を「このまちで生きる」へ~

私たちのまちを、ともに「創」り、ともに「生」きるための「創生戦略」です。

戦略1 先端技術を活用した地域産業の振興としごとづくり

(戦略設定の背景)

人口減少が進む中、産業経済基盤を強化することは、地域の活力を高める大きな力となります。

市内企業の大多数を占める中小企業の発展により、さらなる経済活性化や雇用創出が期待されることから、意欲ある中小企業の新分野進出や事業拡大、生産性の向上を支援するとともに、新たなビジネスの創出や起業家の育成などに取り組む必要があります。

また、東アジアやロシア沿海地方に近接する地理的優位性や、これまでの産業集積等の資源をいかしながら、貿易と物流の活発化を図るとともに、重点的に集積を進めている電子部品・デバイス、輸送機関連等に加え、今後の大きな成長が見込まれるICT分野での先端企業の誘致、既存企業の事業拡大につなげる必要があります。

農業分野では、生産拡大と農家の経営安定化に向け、効率的で収益性の高い生産構造への転換を図るとともに、6次産業化や農商工連携による農畜産物の高付加価値化、ICT等先端技術の活用による生産性向上などを推進していく必要があります。

こうした取組により、本市の持つ潜在力をいかしながら地域産業の振興を図り、経済活動の活性化と雇用の質の向上につなげることが求められています。

さらには、今後のまちづくりのモデルとして、民間との協働により、先端技術を活用し、スマート農業などの産業分野と、観光、スポーツ、環境、防災などの分野と一体的に展開することで、人口減少・少子高齢化の進行に伴う地域の課題解決につなげていく必要があります。

(戦略が目指すもの)

企業活動の活性化と新たな経済活動の創出

しごとの創出と質の向上

(重点プログラム【実現のための方策】)

1 地域の強みをいかした産業の育成・創出

2 都市と共生する活力ある農業の実現

3 正規雇用拡大等による雇用の質の向上

4 秋田港をいかした環日本海貿易の促進

5 先端技術を活用した地域の活性化

戦略2 芸術文化・スポーツ・観光による都市の魅力向上

(戦略設定の背景)

コロナ禍にあって、私たちは、改めて芸術文化が与えるうるおいやスポーツが呼び起こす感動、観光資源が放つ多彩な魅力などが、いかに人々の心に元気を与えてきたか気づかされました。

私たちは、このことを心にとどめながら、地域の営みや歴史に根ざした文化を享受し、受け継ぐとともに、自らも、新たな文化の創造を担っていくことが求められます。

見る。聞く。触れる。味わう。薫る。五感を刺激する本市の魅力を引き続き、芸術文化、スポーツ、観光の視点から磨き上げ、交流人口の拡大を図るとともに、市民がいきいきと暮らす魅力あるまちづくりを進めていく必要があります。

そのため、本市の新たな魅力の発掘にさらに力を注ぎ、都市のイメージアップを図るとともに、「新しい生活様式」のもとで、人の流れをつくる取組を継続し、にぎわいの回復とまちの活性化を推進することが求められています。

(戦略が目指すもの)

地域資源をいかした感動に出会えるまちづくり

交流人口増加による経済活動の活性化

新しい価値を生み出す文化創造のまちづくり

(重点プログラム【実現のための方策】)

1 芸術文化の香り高いまちづくりと中心市街地活性化

2 トップスポーツへの支援

3 観光振興とセールス・プロモーションの強化

戦略3 未来につなぐ環境立市あきたの推進

(戦略設定の背景)

政府は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする脱炭素社会の実現を目指す」との宣言を行い、その実現に向けた方策として、電源構成における再生可能エネルギーの割合を大幅に増やすことが予想されます。

こうした中、本市では、安定した風況や市域の70%を占める森林など、豊富なバイオマス資源等を背景に、様々な再生可能エネルギー施設が民間を中心に設置されており、現在も港湾洋上風力発電など、国をリードするプロジェクトが進められています。

こうした恵まれた秋田の資源・エネルギーをいかし、環境と経済の好循環による便利で活力のある暮らしを実現するためには、環境関連産業の創出による地域経済の活性化や、温室効果ガスの吸収源となる森林の整備、環境への負荷の少ない心豊かな暮らし方への転換(ライフスタイルの創出)などを進め、内外にPRする必要があります。

また、市、事業者、市民が適切な役割分担のもと、環境への負荷の低減に協働で取り組むとともに、「もったいない」と思う心をはぐくみ、ごみの減量や資源の有効活用等について、自ら考え、行動する意識を醸成することで、持続可能な未来に向けた循環型社会の実現を図る必要があります。

(戦略が目指すもの)

地域の環境特性を踏まえたライフスタイルの創造

環境関連技術を活力とした地域活性化

(重点プログラム【実現のための方策】)

1 豊かな自然をいかした環境共生スタイルの創出

2 温室効果ガスの排出抑制によるゼロカーボンの推進

3 市・事業者・市民の協働による循環型社会の構築

戦略4 子どもを生み育てやすい社会づくり

(戦略設定の背景)

子どもは、いつの時代も、一人ひとりがかけがえのない存在であり、「未来への希望」「社会の宝」ですが、多くの自治体と同様に本市も人口減少や少子化が進行し、都市の持続的な発展を妨げる大きな課題に直面しています。

その背景には、未婚化・晩婚化の進行に加え、仕事と子育ての両立の難しさや子育てに対する不安感や負担感があります。こうした課題を取り除き、子育て家庭が、安心して子育ての喜びや楽しさを実感できるようにすること、そして、次代を担う子どもが健やかに育ち、若い世代が将来にわたる展望を描き、希望をかなえられるようにすることが、今を生きる私たちの大きな責務です。

市民の結婚や妊娠・出産、子育てに対する希望を実現することは、元気な秋田市を次の世代に引き継ぐための基盤となります。

就労、出会い、結婚、妊娠・出産、そして子育てと、ライフステージに合わせた施策を切れ目なく展開し、子どもを生み育てやすい社会を構築していくことが求められています。

(戦略が目指すもの)

子どもを安心して生み育てやすい環境づくり

子どもが心豊かで健やかに育つ環境づくり

(重点プログラム【実現のための方策】)

1 支えあいによる子ども・子育て家庭への支援

2 安心して子育てできる環境の整備

3 若い世代の希望の実現

戦略5 いきいきと暮らせる健康長寿社会づくり

(戦略設定の背景)

本市の人口に占める65歳以上人口の割合は30%を超えており、ひとり暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯も増加傾向にあるほか、2025年には、いわゆる団塊の世代全員が75歳以上となるなど、介護および福祉サービスへのニーズはますます高まるものと考えられます。

こうした中、市民一人ひとりが心豊かにいきいきと幸せに暮らすためには、健康寿命を延ばしていくことが必要であり、元気な秋田市づくりの根本になるものです。

高齢者が支えられるだけではなく、社会の支え手としての役割を担い、活躍できる社会の実現に向け、引き続き「エイジフレンドリーシティ(高齢者にやさしい都市)の実現」に取り組んでいく必要があります。

また、公共交通に関しては、利用者の減少が進み、交通事業が厳しい状況に置かれている中、高齢者に限らず、誰もが日常生活や社会生活を営む上で必要不可欠な移動を円滑に行うことができる交通手段の確保と維持が求められています。地域のニーズや特性に配慮し、ICTなども活用しながら、市民の利便性の確保と効率性を両立させていく必要があります。

高齢者や障がい者、子育て中の親や子どもなど、誰もが安全安心に暮らせる健康長寿社会をつくるため、社会基盤の整備、生涯を通じた健康づくり、地域コミュニティでの高齢者の活躍の場の創出など、様々な取組が求められています。

(戦略が目指すもの)

市民の幸せの基盤となる健康・長寿の実現

高齢者が輝ける地域社会の実現

誰もが円滑に移動できる交通体系の実現

(重点プログラム【実現のための方策】)

1 生涯を通じた健康づくりと生きがいづくりの推進

2 高齢者の多様な能力の活用

3 バリアフリー化の推進

4 将来にわたり持続可能な公共交通の実現

5 多様な生活支援サービスが利用できる地域づくりの推進

秋田市行政の基本構想

令和3年3月18日 議決

(令和3年3月18日施行)

体系情報
第1編 規/第2章 基本構想
沿革情報
令和3年3月18日 議決