最終更新日2012.01.29
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園長のごあいさつ


柵の中で生かされた男のつぶやき

 新しい年が明け、皆さんは思いを新たにそれぞれの目標に向かい、歩み、あるいは駆け出していることと思います。国内外を問わず政治・経済、社会情勢は混迷の状態で年が明け、国内、なかんずく東北は東日本大震災の復興や原発事故から派生する環境問題が続出するなど、先が見えない閉塞感が強く漂ったままです。年末に恒例になっている京都清水寺での漢字での世相表現では「絆」の字が書されました。多くの国民が意識した一字だったのでしょう。整然と皆で助け合おうとする姿は海外ニュースで配信されていましたが、「絆」への思いは、人のつながりを大事にしようとする日本人の「心(意識)」の現れであり、ある種、日本の力の源のようにも思えます。
 昨年の春、大森山のシーズン開園を一週間後にひかえたあの日、3月11日、大震災が東日本を襲いました。あの混乱の中でしたが、少しでも穏やかな気持ちになってもらいたい、また元気を取り戻してもらいたいと願い私たちは敢えて開園に踏み切りました。こんな時に開園なの、など様々なご意見がありました。しかし、動物のもつ力を信じたかったのです。開園の当日、肌寒い園内に子どもたちの歓声が聞こえてきました。子どもも大人も動物から元気をもらいたかったのか、どの顔も笑顔と動物に癒された優しい表情に満ちていました。
 この何年か大森山動物園は「動物と語らう森」をテーマに人と動物との出会い、ふれあいの場をご提供させていただくことを大切な経営指針の一つとしております。生きる動物を間近にし、動物すなわち自然のリズムと「生きる力」をも感じ取っていただきたいのです。日本人は動物が大好きであり、人と動物を同胞的に思う独特の感性を持った民族です。それは人と自然の合一を意識する日本人の自然観に内包されたものとも言えます。
 今年のテーマも「動物と語らう森」としました。「物の時代から心の時代へ」と言われる現代にあって、人と動物がつながる「心」を大事にする動物園として、動物の力を信じ、魅せる工夫やサービスで時には動物をまるごとお伝えししながら、大森山の情(こころ)を発信し続けたいと考えています。「大森山動物園、ますます変わったね・・」そんな声をお客様からいただけるように、今シーズンも取り組んでいきたいものです。
 動物園の経営には様々な悩みがあります。サービス充実させるための財源確保、飼育技術者の育成、展示動物の確保と命をつなぐための対策、安心できれいな環境の保持、営業での収益確保、課題は永遠です。それは動物園そのものが生きていることの証かもしれません。生きるために生き物は常にチャレンジの連続であることと同じです。
 今年の干支は「辰」、架空の動物「竜」を当てていますが、「辰」の字は元々「蜃」、ハマグリが海底で勢いよく水(気)を吐き砂煙を上げ推進する様を表しているようです。柵の中での生活も38年目に入り、年齢も暦が一巡します。残された大森山生活、職員とともに動物園が秋田の元気に少しでも結びつくように、時に「蜃」のように勢いよく気を吐くことを忘れず生きたいと思います。現場の飼育員から始まり、柵の中での送った獣医師生活は、さまざまな動物の生や死を体験し悩み抜いたこともありましたが、頼もしい仲間に支えられ夢を追い続けることができた幸せな動物園人生でもありました。今しばらく動物とお客様の笑顔から生きる力を頂戴しながらがんばろうか。

平成24年1月
大森山動物園 ミルヴェ 園長 小松 守
小松 守 園長
園長 小松 守
王者の森展望台から見る秋田市

王者の森展望台から見る秋田市 →(拡大版 約618kb

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