広報あきたオンライン版

2000年
7月14日号



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特集 秋田港

秋田港のコンテナ貿易
1本でもできる海外との「宅配便」。

●平成11年実績 年間15,762本、165億円

平成七年から始まった秋田港の国際定期コンテナ便による貿易が、このところ好調に取扱量を増やしています。平成十一年の取扱総本数(二十フィートコンテナ換算)は一万五千七百六十二本で、前年の一・五倍以上に増えました。
秋田港に就航しているコンテナ便の航路は現在、韓国・釜山港とロシア・ポシェット港の二航路。特に釜山港は国際的な貿易中継港となっていることから、釜山港を拠点に、中国、東南アジア、ヨーロッパ、北アメリカなどとの貿易が広がっています。

 

 秋田港の港湾道路を車で走ると、外国語の文字が書かれたカラフルなコンテナが目にとまります。世界を旅する貨物運送用のコンテナです。あの大きな箱にいろいろな品物を詰めて船に乗せ、輸出したり、輸入したりするのがコンテナ貿易です。
 コンテナは長さが二十フィート(約六メートル)と四十フィート(約十二メートル)の二種類。中に入れる品物は木材製品、紙、石材、機械類、衣料品など、なんでもOK。冷凍コンテナもあるので、食料品も大丈夫です。
 コンテナ貿易は、一本単位で簡単に品物の取り引きができるので、いわば海外との「宅配便」といったところ。この手軽さと秋田港の近さがコンテナ貿易の売り物です。
 世界で国際海上コンテナ輸送が開始されたのは一九六六年ですから、その歴史はまだそんなに長くありません。しかしコンテナ輸送は従来の貿易船に比べ荷役効率がたいへん高いので、今ではわが国の海上輸送において、海上定期貨物量(重量ベース)の約九割、海上貿易額の四割以上を占めるに至っています。

 

●釜山航路とポシェット航路で高まる物流拠点機能

 秋田港には現在、釜山港との間に週四便、ポシェット港との間に月三便のコンテナ便が就航しています。船の便数も増えてきたので、東京港や横浜港から秋田港に切り替える県内業者もでてきました。東京方面から秋田までの陸送費用を考えると、近くの秋田港を使った方が全体の運送費用が安くて済むからです。ちなみに秋田港〜釜山港間のコンテナ一本の輸送料は、中身にかかわらず約七百ドル(七〜八万円)と、意外に安い値段です。
秋田港のコンテナ輸入の主力は、住宅建築に使う製材で、およそ六割を占めます。北欧産のものが多く、値段が安く、品質も良いので多くの需要があります。そのほか墓石の石材やガラス、大豆、そば粉、漁網などの輸入にもコンテナが使われています。
 一方、輸出は輸入ほど取扱量が多くなく、東北製紙が中国や東南アジアに輸出しているダンボール原紙などが約六割を占めます。そのほか県内の工場で生産されるジーンズなどもコンテナで輸出されています。

 

秋田市貿易振興ビジョンで港の活性化をはかります

 これらの輸出入の中心は釜山航路で、昨年八月に開設されたポシェット港はいま開発段階。中国東北部と隣接し、大陸と秋田を最短の二日で結ぶポシェット港にも大きな魅力があり、中国産の野菜や加工食品などの輸入が検討されているところです。
 秋田港を舞台に年間百六十億円余の物資が動いているコンテナ貿易。市では「秋田市貿易振興ビジョン」に基づき、秋田港の活性化をはかっています。  港湾貿易振興課TEL(866)2164

取扱量の推移
貿易額の推移

コンテナ貿易やってます

(有)ハリス 成田育夫さん
小さい頃遊んだ秋田港。アメリカが近くなりました

 今年の3月、ロサンゼルスから釜山経由で、中古車2台とバイク1台を、初めて自前でコンテナ輸入しました。秋田港に陸揚げしたときには、本当に感激しました。コストの安さもさることながら、自分でできたという達成感、よくぞ港の近くに生まれけり、という感じでしたね。
 秋田に社員3人、ロサンゼルスに現地スタッフ1人という、小さな会社でもできたのですから、他の会社でもできるはず。これからも秋田港を利用し、今以上にアメリカのいろいろな物を自分の手で集め輸入してみたいですね。

 

(有)グランビア 金子裕二さん
陸送代が減った分、安い値段で販売できます

 去年の11月、スペインから釜山港を経由してタイルを輸入。横浜港での陸揚げと比べて、輸送の時間とコストが格段に違ったことに驚いています。特に横浜と秋田間の陸送代が減ったことが大きいですね。コンテナを使っていなかったときは破損も2、3割あったのに、今は1割程度で済んでいます。
 おかげで割安な価格で、品質のよいスペインタイルを提供することができます。最近はインターネットを使った販売も展開中。県外からの問い合わせも多いんですよ。今後は雑貨やワインの輸入も挑戦してみたいですね。

 

(有)磯崎畳店 磯崎忠次郎さん
中国産の畳表を共同輸入。初めての取り引きに猛勉強

 市内の畳業者6人で協力し、この3月に中国から釜山港を経由して畳表を共同輸入。20フィートのコンテナ1本、約3,600枚分の畳表です。
 畳表の主流は国産ですが、農業の後継者不足などで生産量も減り、価格が上がっているのが現状です。そこで最近、質、量、価格ともに成長している中国産の畳表に目を付けました。仲間と現地に赴き、商談をして話をまとめました。ようやく荷揚げされ、支払いはドル建ての銀行振り込み。何もかも初めてのことだったので、いろいろ勉強させられました(笑)。

 

秋田成幸産業(株) 利部浩さん
釜山の工場から秋田市の指定ごみ袋

 韓国・釜山のビニール製造工場から、秋田市の指定ごみ袋を輸入しています。輸送コストを含めても、国内製品より安く仕入れることができるし、韓国の製品は品質も良いので安心です。輸入は月にコンテナ1本ぐらい。一つのコンテナに2,000箱(1箱300枚)ほど入ります。注文はファクスで行い、3週間ぐらいで品物が届きます。連絡はすべて日本語で大丈夫。支払いも円決済で、市内の銀行から振り込みなので、面倒なことはありません。

 

三傳商事(株) 石井敬さん
ポシェット港の将来性に、これからが正念場

 ポシェット航路を使い、加工用鶏肉の輸入を始め、今月中にも、コンテナ1台分・16トンが到着する予定です。鶏肉は中国東北部の吉林省からポシェット港まで陸送し、船積みして秋田港に運びます。
 中国、ロシアとは距離的に近くなりましたが、正直言って、月3便と便数が少なく不便さは否めません。しかし、ポシェット便はまだ緒についたばかり。大陸の豊富な資源を秋田港から全国に発送するなどビジネスチャンスの拡大に、これからが正念場です。

 

東北製紙サービス(株) ミドリ川昭平さん
必要なとき、必要なだけ取り引きができます

 クラフトライナー(ダンボール原紙)を中国、マレーシア、インドネシア、ベトナムなどに、コート紙(上質紙)を香港に輸出しています。クラフトライナーは、向こうの国で製造されるさまざまな商品を詰めるダンボール箱に加工されるものです。
 コンテナ貿易は平成7年11月に秋田港で始まって以来ずっと利用。それまでは一般の貨物船を使っていたのですが、1,000トンぐらいの大量の取り引きがないと輸出できなかったのが難点でした。しかしコンテナになってからは、コンテナ1本、25トンぐらいの少ない単位でも輸出できるようになり、相手が必要なとき、必要なだけ取り引きができるようになりました。
 一番遠いマレーシアまででも注文を受けてから12〜13日あれば届けられます。横浜港から輸出していたときよりも、陸送の面での運送コストはかなり安くなりました。

 

輸送はおまかせ

秋田港のコンテナ貿易の窓口となっている日本通運(株)と秋田海陸運送(株)のかたに、お話をうかがいました。


日本通運(株)秋田海運支店 吉谷(よしや)勝博さん
便数の安定と増加が課題。地方港との競合も視野に

 釜山航路は、自社2便、他社2便の週4便体制。秋田港の取扱量は、輸入が木材、輸出が製紙と、決まった商品に特化している一極型になっています。その商品の取り引きいかんでコンテナの運航が左右されてしまう危険性があります。また、輸出の取扱量が少ないのも課題です。秋田の場合、工場はあるんですが、本社機能が中央にある会社が多いので、独自にはなかなか輸出できないのが現状。本社への利用呼びかけも課題です。
 海のコンテナ化は進んでいます。主要港や酒田、八戸、新潟など地方港との競合も視野に入れて、秋田が物流の拠点になるよう取り組んでいきます。

 

秋田海陸運送(株) 西宮公平さん
大陸と最短で結ぶポシェット航路の将来性に期待

 釜山航路の秋田港代理店のほか、ロシア・ポシェット航路の日本総代理店です。ポシェット航路は、対岸に近いという秋田の利点を最大限に生かし、大陸と二日間で結ぶ日本最短のルートです。
 ポシェット港に隣接する中国吉林省は、農産物の一大産地。国連開発計画の対象地域でもあり、今後の開発と発展が見込まれます。また近い将来、シベリア横断鉄道を活用できるようになれば、ヨーロッパとの貿易も可能になります。
 秋田港の競争相手は、日本だけでなく世界の港です。地元秋田の発展のために、秋田港の競争力を上げるよう努力していきます。

   

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