2000年
11月24日号



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12月3日〜9日は障害者週間
地域の中で共に生きる

誰もが互いを理解しながら、
 障害のある人もない人も
地域の中で共に生きる。

 シドニー・オリンピック、そして世界中の障害を持つ選手たちが力と技を競ったパラリンピックは、私たちに熱い感動を与えてくれました。一つのことに真正面から打ち込む姿には、無条件で頭の下がる思いがします。
 十二月三日から障害者週間が始まります。障害のある人もない人も、お互いを理解し合いながら、共に生きる社会。そんなことを、ちょっと立ち止まって考えてみませんか。


社会復帰したいという一心で、
今の自分があります。

 下北手にある身体障害者の入所授産施設、秋田ワークセンターで働く阿部隆徳さん(31歳)。
 阿部さんは十八歳の時、東京で電車事故にあい、手足や右目に障害が残りました。県内の高校を卒業し、就職で上京した四月、初めての給料をもらった日の夜のことでした。頭に重傷を負い、三か月間は植物人間状態だったといいます。
 しかし、高校までバスケットで鍛えていた阿部さんは、生死の境から奇跡的に回復。秋田に帰り訓練センターで三年間のリハビリをし、平成三年からワークセンターで働いています。
 「事故にあったのもすべて自分のせいなので、とにかく頑張りました。高校までは普通の体だったので、社会復帰したいという一心でした。その一念で、今の自分があると思います。考え方しだいで前向きに生きていれば、理解してくれる人もいます。自分の考え方は間違っていなかった」。阿部さんは事故にあってからの日々を確かめるように話します。
 仕事場での阿部さんの担当は軍手製作のミシンかけ。「数をこなすのは好きです。自分のできることを精一杯やるのは当たり前。妥協という言葉が一番嫌いです」。
 阿部さんは十月に富山で開かれた障害者の全国スポーツ大会「きらりんぴっく」に初出場し、ソフトボール投げで三位に入りました。百メートルも十九秒の好記録で走ったそうです。
「五月から毎日少しずつ、重りをつけたりしながら走る練習をしました。最初は転んで百メートルも走れなかったんです。二十秒を切れてうれしい」。


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こんなまちを願っています
完全参加と平等

完全参加と平等

 障害のある人が、社会生活に完全に参加できるようにすると同時に、ほかの住民と同じ条件の中で、経済的発展の恩恵を平等に配分されなければならないという理念です。


ノーマライゼーション

 障害のある人を特別視するのではなく、社会の中で普通の生活を送っていけるような条件を整え、共に生きる社会こそノーマルな社会であるという考えです。


リハビリテーション

 身体的・精神的・社会的な適応能力を回復するための技術訓練にとどまらず、障害のある人の人生すべてにおいて普通の暮らしができるようにし、障害のある人の自立と社会参加をめざす考えです。


今野和夫さん
障害児者の地域生活支援を考える秋田ネットワーク代表
(秋田大学教育文化学部障害児教育研究室教員)
「普通」の実現に向けて

 私は4年ほど前に、誰でも気軽に入会できるネットワークを賛同者とともに発足させました。作業所や施設の職員、養護学校の先生、障害のある人、その家族など多彩なメンバーが、学習会や講演会、楽しいミニ旅行などを協力して行っています。これらの活動での出会いをきっかけに仲間や助け合いの輪が広がり、会員だけでなくより多くの人たちの生活や人生が豊かになっていけばいいなと思っています。
 友だちと一緒に遊んだり相談し合う、不便や被害や差別の心配なしに安心して外出する、近所の人とあいさつを交わすといった、そんな普通の生活。障害のある多くの人たちが、そんな「普通」とはかけ離れた生活を送っています。社会は、「普通」の実現に向けて歩み始めたばかりなのです。
 障害のある人たちも地域や社会を支える大切な仲間であること。自分も「障害者」と呼ばれる立場になりうること。「同じ立場や状況に置かれたら自分はどういう気持ちになるかな」と共感すること。これらのことを忘れずにいたいものです。「普通」の実現のために。


出会いの歌が広がった

 今年も十月に児童会館で開かれた「であいのこんさあと」。障害のある人もない人も、広がるハーモニーにつつまれて、あたたかいコンサートになりました。
 出会うことでふれあいが生まれ、ふれあいによって愛が大きくふくらみます。
 保育園で手話を習った息子さんと初めて参加した藤田美幸さん(泉釜ノ町)は、「関心が薄かった障害について身近に感じることができました。会場の人たちはみんな明るく元気で、なんか勇気を分けてもらった感じです」と話していました。


地域の中で普通に暮らすことなんです。

 西根征暁さん(27歳)、太田茂利さん(25歳)、長谷川真さん(20歳)、佐々木真基さん(18歳)の四人は、手形の一軒家で、十月からグループホームの生活をしています。知的障害者の通所更正施設「杉の木園」のバックアップで行っているものです。
 グループホームというのは、数人の知的障害者が街の中にある普通の住宅で、世話人の援助を受けながら共同生活をおくるものです。市内ではこれが初めてですが、障害者の新しい生活形態として、全国では二千か所余りで約一万人が暮らしているそうです。
 四人はそれぞれ市内の会社に勤めていて、毎朝バスや徒歩で出勤し、夕方ホームに帰って来るという生活をしています。朝食と夕食は、近所に住む世話人の三浦玲子さんが準備してくれます。
 食事の後の皿洗いや家の掃除などはすべて自分たちで。夜は居間で話をしたり、自分の部屋で音楽を楽しんだり。休日は親元に帰ったり、ホームでのんびりしたりしているそうです。
 長谷川さんは、「最初は不安だったけど、ぼくが熱を出した時には仲間が薬を用意してくれたりして、とても仲良くやっています」と、楽しそうに話してくれました。


かけがえのない場所

 浜田にある「つどいの家」は、障害を持っている人たちが毎日自宅から通って働いている小規模作業所です。養護学校を卒業した人たちが日中の活動の拠点としていて、多くのかたの協力により「卒業後の生活を豊かにする会」が運営母体となっています。市内にはこうした作業所が十数か所あり、百人を超える障害者が元気に働いています。 つどいの家のメンバーは十二人。十八歳から二十九歳の若者たちが、牛乳パックを再利用し、ハガキやメッセージカードなどを、一枚一枚、心を込めて作っています。売り上げは年に百万円ほどになるとか。作業収益はみんなのお給料になります。  つどいの家の目下の悩みは、メンバーが増えて作業所が狭くなってきたこと。来年も新メンバーが入るので、いま第二作業所を検討中ですが、建設場所の確保に苦労しているそうです。


ロンドンバスから
交流と理解広げたい

 県内初の精神障害者の通所授産施設「クローバー」が今年二月、飯島の国道沿いにオープンしました。ここは一定の作業能力がある精神障害者のかたが利用し、自活することができるように必要な訓練や指導を受け、社会参加の促進をはかる場です。障害者のために夢のある施設にしようと、真っ赤な二階建てのロンドンバスが目印。
 クローバーには三十人登録し、施設に訪れロンドンバスのラーメン店の手伝いや、ネクタイ、わらじ、アイロンプリント、七宝焼、竹細工を制作しながら、社会復帰の訓練をしています。
 「ロンドンバスで食事をしたかたが、ぶらりと施設を見学していくこともあります。この施設を通じて地域の人たちとの交流や理解が深まってくれたらいいですね」と、施設長の加賀谷亨さんは話しています。


グループホームを始めた「杉の木園」園長
澤田修明さん
子どもたちの自立にご理解を

 市内初の知的障害者のグループホームということで、家を探すのに苦労しました。知的障害者が入居すると言うと大家さんに断られるんですよね。結局、7軒目で現在の大家さんから了解をいただき、スタートすることができました。
 グループホームは県北や県南には多いんですが、市内ではまだよく理解していただいていないのかもしれません。
 自分たちの生活を自分たちの力でやる。そこが、施設や家庭と違うグループホームの良さです。家にいると甘えが出てしまい、せっかく子どもたちが持っている力を出せなくなる場合もありますから。親御さんも子どもを離すのが不安なようですが、自立していく子どもの姿を見て喜んでもらっているようです。
 グループホームを経験し、そこから自分でアパートを借りて一人で生活している人もいます。グループホームへの入居希望者はまだいるので、いい場所さえあれば、もっと作っていきたいと考えています。


あったかい心が伝わる
手すきのハガキ、カードです

 つどいの家特製の手すきのハガキ、メッセージカード(封筒付き)、名刺の台紙はいかがですか。一枚一枚丁寧に作った、あったかい心が伝わるカードです。石ころりん画びょう・磁石もあります。県庁地下の売店や大町の文具店金圓で売ってます。問い合わせはつどいの家まで。TEL(828)4472


小規模作業所は地域生活の応援団
秋田市心身障害者小規模作業所協議会会長
高山泰次さん(勝平養護学校教諭)

 市内の養護学校高等部からの卒業生は、秋田、勝平、栗田、秋大附属の4校合わせて毎年60人ぐらいいます。今年の春の進路は、県全体で約30パーセントが一般事業所への就労、20パーセントが通所・入所の社会福祉施設、25パーセントが小規模作業所、20パーセントが在宅、5パーセントが進学という状況でした。
 つどいの家のような小規模作業所は、働く場として、なくてはならない存在です。どんな障害の子でも毎日通えて働く場がなくては、社会参加の生活が望めないからです。
 小規模作業所は法定施設ではないので行政からの補助金も少なく、指導員の身分保障なども含めて、その運営はたいへん厳しいのが実情です。今年に入って、小規模作業所から法定施設移行への道が開かれましたが、すべてというわけにはいかないようですし、小規模作業所の実態にそくした支援をお願いできたらと考えています。


市内に住む障害者は…

 障害には、視覚・聴覚・肢体不自由などの「身体障害」、先天的または後天的原因で知的な発達が遅れる「知的障害」、心の病により生活に支障をきたす「精神障害」があります。  秋田市の障害者は、平成12年3月末現在で、身体障害が一万二二四人、知的障害が一千三二〇人、精神障害が二千四四〇人。



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