2000年
11月24日号



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21世紀への遺産(19)

時を越えて生き続ける見えない力がある。
ふるさとの文化。
いま、次代へ、確かに伝えるもの…。

●「21世紀への遺産」は今回で終了します。
 最後は秋田市の原風景ともいえる千秋公園。まちが育んできた歴史を、これからの未来へ語り継いでいけたら素敵です…


藩政期の面影を伝える千秋公園

 秋田駅から歩くとすぐ、堀の向こうに深い緑に囲まれた千秋公園が見えてきます。ここは、秋田藩主佐竹氏が十二代、約二百七十年にわたり、秋田を治めた久保田城の城跡です。
 桜やツツジ、お堀のハスなど四季折々の美しさに演出される千秋公園は、市民の憩いの場として、また、秋田市の象徴として多くの人々から愛されています。
 千秋公園の歴史は、初代藩主・佐竹義宣(よしのぶ)による築城の時代までさかのぼります。常陸(ひたち・現・茨城県)の国を治めていた義宣は、関ヶ原の戦いで中立的な態度をとったことから、慶長七年(一六〇二)、水戸五十万石から秋田二十万石への国替えを命ぜられました。
 初めは、旧領主・安東(あんどう)氏の居城だった土崎の湊城に入りましたが、狭い平城だったため城を移転。そこで、位置や地形から領国を支配する拠点として選ばれたのが、久保田の地にあった標高四十メートルほどの台地、現在の千秋公園の場所でした。久保田城の築城は転封された翌年の慶長八年に始まり、わずか一年で完成しました。


天守閣のない平山城
自然をいかした構造

 城は三段に起伏した高地をうまく利用して、高い所から順に本丸・二の丸・三の丸・北の丸と構成されています。城の中枢となる本丸には、藩主の住居や物見櫓などを置き、その周りを土塁と板塀で囲んでいました。また城の出入口として、表(おもて)門や裏門など四つの門を設けました。
 本丸から表門をくぐり、長坂を降りるとそこは二の丸です。本丸に続く重要な場所で、各役所や馬場などがあてられました。そして、城の守りのため、この本丸、二の丸を内堀と土手で完全に囲み、お堀を渡る橋や門をつくって、外部への出入口としました。久保田城は、自然のままの地形をいかし築城された全国的にも珍しい平山城といわれています。
 とはいえ、久保田城には、城のシンボルといわれる天守閣や大きな石垣がありませんでした。財政上の理由からか、幕府に対する遠慮の気持ちからか、確かな理由をうかがわせる資料は残っていません。


市民憩いの公園へ
設計者は長岡安平(ながおか・やすへい)

 久保田城は明治四年の廃藩置県後、一時国有地となります。そして、明治十三年七月、原因不明の火災で城はほぼ全焼。寛永十年(一六三三)、安永七年(一七七八)に続く三度目の大火でした。城の無惨な末路に旧藩士たちも動揺を隠せなかったといわれます。
 火災後、明治二十三年に久保田城跡は佐竹家に払い下げられました。そして、荒れ果てていた城跡を市が借り受けて公園化したのが、公園としての始まりです。市民の寄付などにより桜の苗木千七百本が植えられ、桜の名所としてにぎわい始めたのもこの頃でした。
 その後、秋田県は、明治二十九年から三年計画で県立公園としての本格的な整備に乗り出しました。設計者は、東京府土木職員の長岡安平。設計した公園は全国に四十数か所あるという当時の実力者です。『技巧を避け、自然の風韻を写出する』という長岡の信念そのままに、現在の千秋公園の原形がこの時できあがりました。
 千秋公園の命名者は大館市出身の漢学者・狩野良知(かのう・りょうち)です。千秋の名の由来は、秋田の「秋」に長久を意味する「千」をとって名付けられ、秋田の末永い繁栄を祈ったものといわれています。


動物園やスケート場で
にぎわった時代も

 千秋公園は、時代の移り変わりとともに様々な顔を見せてきました。
 明治三十七年には現在の県民会館の場所にルネッサンス調の県公会堂が建てられ、秋田の核として息づきました。また、昭和初期には木造のプールができ、二十五年には大森山動物園の前身の市立動物園が開園し、にぎわいを見せました。お堀が冬期間、スケート場に変身したこともありました。そして、昭和二十八年に県から秋田市に移管されました。
 園内には、現在でも藩政期の面影を残す場所がいくつもあります。本丸の石段や門の跡、御物頭御番所(おものがしらおばんしょ)もその一つです。
 また、佐竹氏代々の遺品や久保田城跡の資料を展示する佐竹史料館、平成元年に秋田市制百周年を記念して建てられた御隅櫓(おすみやぐら)からも、当時の暮らしぶりをうかがい知ることができます。そして今、本丸の入口には、藩政期にあった「表門」を復元中で、今年度中に完成する予定です。
 佐竹義宣が築城の地として選び、約四百年の歴史を刻んだ千秋公園。市民で守り、育てていく、二十一世紀へ伝えたい原風景がここにあります。


千秋公園

■佐竹史料館 TEL(832)7892
 佐竹氏ゆかりの品々を常時展示。開館時間は午前9時〜午後4時30分。入館料は大人100円、高校生50円、中学生以下無料。



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