2001年10月12日号

市長ほっとコラム

実りの秋 今昔-

 秋田県民歌の二番は「見渡す広野は渺茫霞み 黄金と実りて豊けき秋田」と結ばれています。
 秋の収穫期に、黄金色の稲穂で実る水田が遠くの山々の麓まで、先が霞んでしまうほど果てしなく広がる風景を表した歌詞です。
 大きな建物や立派な農道などで昔とは少し遠景が違ってはいますが、秋田市でも市役所から車で五分も走れば目にすることができる、昔も今も変わらぬ、秋田の原風景です。
 しかし、いつの時代からか、水田整備の進行や稲作技術の進歩とは裏腹に、秋の豊作を素直に喜べないようになってきました。
 「これも時代の移り変わり、産業構造や社会環境の変革の中で、致し方がない」と言えばそれまでですが、米作の中心地で育った私にとっては、近年の秋は特に時代の流れに無情を感じる季節ともなり、また泥んこになりながらのドジョウ取りや、刈り取り後の田んぼでのイナゴ取りなどを思い浮かべ、子供時代に懐かしさを感じる季節になっています。
 国も地方自治体も、農業は極めて大きな政策課題であることは間違いなく、予算のうえでも関係職員のうえでも、大きなウエイトを占めてはいますが、政治・経済の大きな狭間の中で日本の農業は振り回され続け、せっかくの様々な政策や予算も空振りが多い感はどうしても否めません。
 自由競争・自己責任の時代、国際貿易の自由化、農業の企業化、自助努力−時代の流れはよく分かりますし、全くその通りだと思います。
 しかし、私たちの子供や孫の時代に日本の食糧事情はどうなっているのでしょうか。激しくなる国際紛争、ジワジワと進む地球環境の悪化、地球規模での人口爆発…どれをとっても将来にわたって、食の確保にはマイナスの要因ばかりです。
 日本の食料自給率は先進諸国の中では最低・最悪の四〇パーセントまで落ち込み、飽食の時代とも言われる今の我が国の食糧事情も、国際的に何か大きな事が勃発すれば、一転ピンチに陥ることは確実です。
 「改革の時代」と声高に叫ばれますが、個別の農業政策が有効に機能する大前提となる食料自給率の向上という基本的な命題に向けて、国政では、ぜひとも強固な国家意志を発揮してほしいものと思いますし、秋田の政治の片隅に身を置く者としても、粘り強く広く訴え続けていかなければならない課題だと思います。
 「見渡す広野は…」。秋田の原風景に無上の懐かしみを覚えながら、ぬる燗を傾ける今年の秋の夜長です。

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