2001年11月23日号

12月3日〜9日は障害者週間
地域のふれあいの中で

障害のある人もない人もお互いを理解し合いながら、一緒に暮らす社会。
心のバリアフリー、始めませんか。

みんな一緒に、
今日も一日がんばります。

●会社で働く
努力する気持ちとそれを受け入れる環境

 川尻の工業団地にある(株)たけや製パンでは、心身に障害のあるかた十五人が働いています。社会人二年目の工藤正明さん(二十歳)もその一人。県立聾学校を卒業後、実習訓練を積んで就職しました。耳の聞こえが少し不自由ですが、注文のあったパンを店舗別に仕分けする製品管理部門でがんばっています。
 はじめは同僚とうまくコミュニケーションがとれず苦労した時もありましたが、ゆっくり話してもらったり、簡単な手話を使ってもらったりしたおかげで、今では仕事をてきぱきこなせるようになりました。
 「障害のある人にも普通の人と同じように就業する権利があります。一企業としてできるお手伝いをしています」と人事を担当する高山部長。障害があっても、目標を持ち、自立しようと考えている人なら積極的に採用しているそうです。
 また、たけや製パンでは、国が今年度から設けたトライアル雇用制度も活用。今秋、障害者一人を採用しました。これは、障害者を三か月間雇用してみて、企業のニーズに合えば、その後も継続して働いてもらうもので、企業と障害者双方を支援する制度です。
 高山部長は、「障害者の雇用についての認識は、まだまだ厳しいものがあります。しかし、訓練を受ければ、障害のある人もきちんと仕事ができます。彼らの仕事に対する姿勢は誰よりも一生懸命ですから、その個性を伸ばしてやりたいです。うちの会社の障害者雇用率は三%を超え、法律で定められた一・八%を上回っていますが、県平均では一・五%と基準を満たしていないのはとても残念」と話します。
 働くことは、社会に参加していくための大切な手段のひとつです。働いて給料をもらい、自立して生活することに憧れている障害者はたくさんいます。障害のある人が主体性と自主性を持っていろいろ努力すること、その能力を認め、十分発揮できる環境を整えることが、今求められています。
 障害のある人もない人も、お互いにいつも尊重し合いながら共に生きる、それが「ノーマライゼーション」の社会です。
「いずれは夜勤の仕事もしたい。日中の時間を有効に活用して、いろんなことにチャレンジしたいから」と、ドライブが趣味という工藤さんは、さらに大きな目標を話してくれました。

●グループホーム
社会的に自立するためのステップです

  障害のある人たちが地域の中で自立して暮らすケースも増えています。
 十月、広面にできた「ささこやま」は、障害のあるかたのためのグループホーム。グループホームというのは、数人の障害のあるかたがまちの中の一般住宅で、世話人の支援を受けながら共同生活をおくるものです。
 市内で二番目となるこのホームには、現在四人が生活。知的障害者入所更生施設「柳田新生寮」の支援を受けながら、民間アパートを借りて住んでいます。四人は日中会社や施設で仕事をし、夜になるとホームに帰ってきます。朝食と夕食は、世話人の田村寿子さんが準備してくれますが、食器洗いや部屋の掃除、洗濯などは自分たちでしています。
 この前の休日には、地域との交流を深めようと朝市を企画。柳田新生寮の畑で育てた新鮮な野菜を販売しました。「近所の人が声をかけてくれるようになってうれしい」と、ホームでの生活を楽しんでいる中津さん。長谷川さんは「勉強して調理師免許をとりたい」と目標もしっかり持っています。
 昨年オープンし、一年を経過したグループホーム「竹飛歩(たけとんぼ)」の仲間も元気です。今も一年前と同じメンバーで、手形の一軒家に楽しく暮らしています。
「一年間の共同生活を通して、人に対する気遣いや思いやりが生まれました。大きな問題もなくホッとしています」と、運営をバックアップしている知的障害者通所更生施設「杉の木園」の澤田修明さん。世話人の三浦玲子さんも自分の家族のように接してくれています。
 障害のあるかたの新しい生活形態として始まったグループホーム。小さな支援で大きな成果が生まれています。

地域の理解と支援が何よりの頼りです

グループホームを支援する
「柳田新生寮」寮長の大川征郎さん(左)
と担当者の加賀谷巌さん

 グループホームでは、できるだけ普通の生活が送られるような環境を整えています。自立心を育むために、手助けも最小限にとどめ、自分一人でできることはあまり口を出さないようにしています。障害のある人も自分の力で生活することは可能です。グループホームはそのための訓練、いわばひとつのステップなんです。そして、この訓練に不可欠なのは地域のみなさんの理解です。理解や支援があるからこそ、彼らも安心してのびのびと生活できます。あいさつをしたり、地域活動に参加したりすることによって、人と触れ合うこと、人とつきあう方法を自然に学んでいけるのではないでしょうか。

●小規模作業所
まちの中の作業所だから地域とのふれ合いがあります

 泉地区、静かな住宅地の一角。「希望の家」は知的・身体の障害者十一人が通う小規模作業所です。近くには幼稚園、小・中学校があり、毎日、子どもたちが元気にあいさつを交わしていきます。
 「地域のみなさんは、小さい頃から障害者とつき合っているので、身構えるようなことはありません。自然体で接してくれることが、障害のある人たちにとって何より幸せなことです」と施設長の残間弘子さん。今年で十六年目になる県内で一番古い民間の作業所は、ゆっくりと時間をかけて地域に溶け込んできました。その「希望の家」も来年度には社会福祉法人への移行をめざしています。施設もリニューアルし、通所者も少し多くなる予定です。新しい施設には交流スペースを設け、地域のお年寄りや子どもたちが集うにぎやかなスポットにしたいと考えています。
 新屋駅前にある「秋田いなほ会福祉作業所」には、知的障害者十七人が通っています。社会との関わりを大切にしようと、全員バスか電車で通勤。仕事をしたり、大正琴を習ったり、何事にも一生懸命取り組むのが施設の方針です。
 「いつか親が亡くなっても、子どもたちだけで生きていけるよう、グループホームを整備したい」と斉藤好行所長。そのためにも施設の法人化は不可欠だと話します。法人化すると、施設の運営費がおよそ二倍に増え、グループホームやホームヘルプ事業など障害者のための総合的な支援が行えるようになるからです。
 現在、市内には、身体、知的、精神に障害のあるかた約一万五千人が暮らしています。そして、それぞれ障害の種類や程度に応じて、自分なりに前向きに生きようとしています。障害のある人とない人が共に暮らしていくための「私たちの役割」を考えていきたいものです。

カレンダーも販売中!

 全国の共同作業所で働く障害のある人たちの作品を紹介した2002年版のカレンダーです。1部1,300円で販売。
●杉の木園 TEL(827)2310
●つどいの家 TEL(828)4472

●ボランティア
障害者のための移動介助サービス。生活圏がグンと広がります

 秋田ボランティア協会が行っている移動介助サービス。障害のある人や寝たきりのお年寄りでも外出できるようにと、二十年以上にわたって続けているサービスです。
 この日は、車椅子で生活している武藤正義さん(二十二歳)を、新屋勝平台の自宅から土崎にある小規模作業所「やすらぎの家」までの送り迎えをしました。
 「以前はタクシーを利用していましたが、誰かが付き添わなければいけなくて…。その点このサービスは係のかたがいますし、料金も比較的安いのでよくお世話になっています。外出するようになって、私たち親子も救われた感じがします。楽しい行事にも参加できるし、悩みを相談できるお友だちにも出会えました」とお母さんの恵子さん。外出するようになって、孤独感がなくなり、社会で生きている実感がわいてきたと話します。
 障害者のための移動サービスは、各タクシー会社でも行っていますが、二十四時間体制で対応できるのは秋田ボランティア協会だけです。協会のサービスを利用するには、事前に会員になる必要があります。入会金と年会費がかかりますが、一回の利用料はガソリン代程度で済みます。詳しくは、秋田ボランティア協会TEL(835)6670へどうぞ。

移動することは、生活の基本です

秋田ボランティア協会
菅原雄一郎さん

 移動介助サービスは、様々なボランティア活動がある中で、基本となる部分のひとつだと認識しています。病院に行ったり、食事の買い物をしたり、家の中以外での生活をしようとすると、必ず移動が伴いますから。
 秋田ボランティア協会では、この移動サービスに365日24時間で対応しています。これは全国でも珍しく、それだけ利用者のニーズも多様化している証拠なのでしょう。
 利用者の中には、お酒を飲みに行きたい人、旅行をしたい人もいます。楽しむことも生活の一部ですから、障害があってもいろんな生き方があるはずです。利用者の多くは重度の障害のある人ですが、外に出かけ、生き方の選択肢を増やすことに挑戦することは大切なことだと思います。私たちは、そんな環境づくりに車2台をフル回転させてお手伝いしています。



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