2004年1月5日号

外町職人魂

藩政時代から職人、商人のまちとして栄えた外町には、今なお続く老舗がありました。


100年以上前の鑑札が家宝
成田正さん(大町五丁目・70歳)

 使い込んだ畳針を手に、すいすいと畳のふちを縫っていく成田正さん。「子どものころから親に『おまえは畳屋になるんだ』と言われてこの道に入り50年になります。今はほとんど機械で作りますが、「細かいところはやっぱり人の手じゃないとね」と針先に神経を集中します。
 詳しい記録は残っていませんが、創業170年を超す老舗だそうで、昔のことを尋ねると、「家の金庫から、明治時代に発行された2枚の鑑札が出てきてね、年代の古い鑑札は、『南秋田郡役所』発行の焼印が押してあって、時代を感じたね。今じゃ家の宝だよ」と誇らしげです。
 「私で4代目、息子が5代目として頑張っています。これからは内装など家づくり全体のことも考えながら、畳作りに励みたい」と話してくれました。
成田さんが手作業のときに使う道具。使い込まれています

看板が物語る老舗の伝統
清水良太郎さん(大町六丁目・72歳)

若いころは家具職人として腕をならした清水良太郎さんは、現在、大町六丁目で家具店の経営に携わっています。
 先代のころには、職人5人をかかえ店もにぎやかだったそうで、「昔の職人は、タンス1本を1日で作ったものですよ。私も見よう見まねで、職人になりたてのころから、タンスの金具付けなど簡単にできました。先代である父の技術を知らないうちに体で覚えていたんですね」と当時を振り返ります。
 明治19年の俵屋火事と呼ばれる大火で資料が紛失してしまい明らかではありませんが、文政年間(1818ー1829)には家具屋として創業していたのではないかといいます。
 つい最近、昔を偲ぶ先々代の店舗の看板が見つかりました。「看板を見れば、家具、タンスのほか、武具を入れたり、嫁入り道具を入れたりした長持なども作っていたようです。それに先代は、秋田で初めて洋ダンスを作ったとか。歴史を感じます」と懐かしげに話してくれました。
清水良太郎さん。看板の「宇吉」は先々代の名前

初代仁右衛門は義宣公と秋田へ
石井仁右衛門さん(大町二丁目・75歳)

本家の仁右衛門さんと分家の治右衛門さんは、通りを挟んで向かい合って石材店を営んでいます。
 初代仁右衛門は400年前、佐竹義宣が秋田へ国替えとなった際、義宣に付き従い、常陸から秋田へやって来たといいます。
 「初代は、久保田城築城の際、石工職人の棟梁を務めたと伝え聞いています。藩政時代、登城する際に付けた裃や、慶応3年(1867)に発行された鑑札が今も残っています。それに、職人としては特別に脇差を持ち歩くことが許されていました」と話す仁右衛門さん。石井家が代々職人として重用されてきたことがうかがえます。
 その由緒ある伝統を受け継いだ仁右衛門さんと治右衛門さんは、15歳からこの世界に入りました。「昔は橋場やかまど、建物の基礎として石材が使われていたもんだよ。赤れんが郷土館の石材部分は、先々代が棟梁を務めていたし、石工職人として活躍の場はいろいろあった。でも今は墓石が中心」と話します。
 「めったに手で削ることはなくなったよ」という仁右衛門さんですが、のみとハンマーを握る手はいまだ健在です。
左から治右衛門さん、仁右衛門さん、治右衛門さんの息子の新一さん
慶応3年(1867)発行の鑑札(写真右)

商売に長けた先代に感謝
上村義行さん(大町五丁目・57歳)

上村家では、もともと竹の仕入れのほか、桶やかごを作る職人たちをかかえ、その製品を売って生業としていたそうです。
 「そもそも祖先は、佐竹氏と一緒に常陸からやってきたそうです。代々屋号として『清四郎』を名乗っていました。先代が着ていたという名入りの半纏も残っています」と見せてくれました。
 先代は商売上手な人で、全国を歩いて、自分の目で確かめて竹を仕入れていたとか。「昔からの信頼関係で、今も変わらず九州や宮城の良い竹を仕入れられるのも先代のおかげ」と感謝します。
 職人を置いていたのは、昭和40年代まで。現在は、造園資材やインテリアの材料としての竹の販売が中心とのこと。夏には竿燈の竿も扱っています。
 「竿燈の時期になると合計200本前後の竹を納めています。出竿町内のほとんどが私の家の竹を使っているんじゃないかな。私も若いころは先代の半纏を着て竿燈の練習をしたもんだよ」と上村さん。半纏を着こなす立ち姿からは、老舗の伝統を継ぐ誇りが満ちあふれていました。
上村義行さん。年末は門松作りに精を出します

伝統を感じる先代の半纏(写真右)


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