2004年8月13日号

健康万歩計


今月のドクター/長沼敏雄先生(市立秋田総合病院消化器内科・代謝科科長)


ピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍

 ピロリ菌は強い酸性の胃の中でも生息できる細菌で、日本人の約60%が保有していると推測されています。最近の研究でこの菌が、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌、胃リンパ腫など上部消化管の病気と深く関係していることがわかってきました。    
 今回はこのピロリ菌と胃潰瘍、十二指腸潰瘍のお話をします。

ピロリ菌+ストレス・暴飲暴食などで潰瘍に

 胃・十二指腸潰瘍の人の92〜99%がピロリ菌を保有しており、潰瘍の発症にピロリ菌感染が最も重要な要因と考えられています。潰瘍はピロリ菌により傷害された胃や十二指腸の粘膜に、ストレスやアルコール、薬剤、暴飲暴食などの二次的要素が加わり発症するとされています。
 ピロリ菌に感染しているかどうかは比較的簡単にわかります。血液中や尿中の抗体検査、便の抗原検査、試験薬を服用し呼気の成分を調べる尿素呼気試験、内視鏡検査時に行うウレアーゼ試験や培養法などです。

除菌療法で8割の人の菌が消えます

 胃・十二指腸潰瘍の最も多い症状はみぞおちの痛みで、空腹時や夜間に痛みが増強する特徴があります。その他、吐き気、嘔吐、食欲不振、胸焼けなどがあり、潰瘍から出血すると吐血や下血(黒い便)を生じます。
 治療方法としては、傷ついた胃粘膜を胃酸から守り、修復する目的で酸分泌抑制剤や粘膜防御剤の内服が行われます。さらに、ピロリ菌感染が認められたときには除菌療法を行います。除菌療法は3種類の薬(2種類が抗菌剤、1種類が制酸剤)を1週間服用する方法で、治療を受けた人の約80%でピロリ菌が消失し、潰瘍の再発が予防されます。

感染していても症状がなければ大丈夫

 ピロリ菌に感染していてもほとんどの人は、症状もなく、健康に暮らしています。胃潰瘍や十二指腸潰瘍になる人は、ピロリ菌感染者のうちのごくわずかなので、すべての感染者が除菌療法を受けなければならないわけではありません。除菌療法が必要かどうかは主治医とよく相談してみてください。


Copyright (C) 2004秋田県秋田市(Akita City , Akita , Japan)
All Rights Reserved.
webmaster@city.akita.akita.jp