2004年10月8日号

市長ほっとコラム

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秋の夜長に お月見談義

市長●佐竹敬久

 今年は台風の当たり年で、とりわけ八月二十日の十五号では、日本海側から四十メートルを超える強風が吹きつけ大きな爪痕を残しました。
 被害に遭われたみなさまには心からお見舞い申しあげます。
 特に、これまで経験したことのない大規模な塩害により、稲や果樹など農業分野に多額の被害をもたらしたことから、現在、関係機関とともに市の支援策をとりまとめ中ですので、農家のみなさまには気を取り直してがんばっていただきたいと思います。
 さて、秋半ばススキが目立つころには夜空も澄み渡り、特に月がきれいに見える旧暦の八月十五日を「十五夜」、九月十三日を「十三夜」といって、月を仰ぐ縁側や窓辺にススキを飾り、豆や栗、里芋、季節の果物、団子などをお供えし、一家団らんの中で「お月見」を楽しむ風習があります。
 ちなみに今年の新暦では、十五夜が九月二十八日、十三夜はこの後の十月二十六日にあたります。
 我が家でも子どもが小さい時分には、昔から家に伝わった方法でお供え物を飾り楽しんでいましたが、子どもが大きくなった今では忙しさにかまけて、ついおろそかになりがちです。
 しかし、私も年のせいか秋の夜長に満点の月を仰ぐと、ふと子どものころが思い起こされるようになり、家族皆で縁側に出て、ウサギが餅をついているお月様を楽しみながら団子や豆を食べたことを涙が出るほど無性に懐かしく思うようになりました。
 季節の変化が明確な日本には、四季折々に庶民が楽しめるほのぼのとした伝統行事が数多くあります。
 その多くは身近な自然との接点の中で形作られたもので、お花見やお月見、さらには食欲の秋の「鍋っこ」にしても、人は自然に楽しませてもらうというところに位置し、自然に大きく踏み込むことはしない謙虚な楽しみ方を旨としています。
 情報があふれ、物質面ではとどまることを知らないほど豊かになったものの社会環境は悪化の一途をたどり、また台風の多発も地球的な環境変動によるのではないかともいわれ、百年後の日本は熱帯性気候になると予測される中で、たとえ物質的には水準が多少下がろうとも、今少し心の余裕をもって暮らしを楽しむことができないものか、真剣に考えるべき時期にきているような気がします。
 夜空に浮かぶお月様を見ても、ただの天体のひとつとしてしか受けとめられない人生と、自然の織りなす美学に季節の変わり目を重ね合わせながら心の安らぎを楽しむ人生のどちらが幸せでしょうか。

心静かに月を仰ぐ幸せ…


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