2005年1月11日号

新春ほっとコラム

新生秋田市の大いなる旅立ち

秋田市長 佐竹 敬久

 皆さま、新年おめでとうございます。いよいよ、市町合併による新しい秋田市の誕生です。   
 とりわけ、旧河辺町・雄和町の皆さまにとりましては、慣れ親しんだ町名がなくなるなど、変化に若干の戸惑いはあろうかと存じますが、五十年ぶりとなる合併であり、地域個性豊かな新生秋田市の実現に向け、三十四万秋田市民で、ともに確かな、そして力強い第一歩を踏み出しましょう。
大いなる可能性に満ちた地域資源
緑あふれる新県都プランの推進

 一年半に及ぶ合併協議や住民説明会などにおいて、市民・町民、議会の皆さまをはじめとする関係各位には、さまざまな場面で心温まるご協力や高い見識からのご指導をたまわり、深く感謝申しあげます。
 この合併により、秋田市に秋田空港が加わることで、陸・海・空の交通結節点がそろい、また、太平山の雄大な自然を活用した観光振興や多様な農業資源に着目した産業振興、さらには国際交流の拠点化など大いなる可能性に満ちた都市になります。これら新たに加わる地域資源を最大限に活かしつつ、新生秋田市づくりに全力を注いでいかなければなりません。   
 合併後のまちづくりの指針ともいえる建設計画「緑あふれる新県都プラン」を着実に推進しながら、秋田市のさらなる飛躍をめざします。        

引き継がれる建都四〇〇年
爆発した市民パワー

 昨年は建都四〇〇年の歴史的節目となる年に当たり、市民パワーが爆発した年でもありました。 
 七月三十一日、千秋公園での前夜祭の熱気や、八月一日、アルヴェでの記念式典に集結した市民のパフォーマンスと高揚感は、〃あの暑い夏〃とともに強烈に印象に残っています。         

2004年7月12日、秋田テルサで
 また、あっと驚く「け」のポスター、普段見慣れた風景が随所に登場した映画「釣りバカ日誌」、近いところでは「佐竹本三十六歌仙」の一部実物展示や「平成版まんが三十六歌仙」の作成、そして年末には四百年の歴史漫画「青山くんの夏休み」の刊行。多くのイベントや記念事業での市民サポーターの活躍も見逃せません。
 特に、四百年を機に創作され、小中学生をはじめ多くの老若男女が演じた「新・秋田音頭」は、まさに新たな郷土文化です。この後も各学校や地域で、代々踊り継がれていくでしょう。   
 さて、「歴史を想い、今日を祝い、未来へ遺す」の理念で築きあげてきたメモリアルイヤーは幕を閉じました。夏の日射しが強ければ強いほど、その影は深く濃くなるように、それぞれの建都四百年が皆さまの記憶の中に鮮やかなコントラストを刻み込んだとしたら、私としてはこのうえない喜びです。


今、時代は大変革の中
変革の先にこそ希望が

 時代は激しく動いています。そこで今最も大切な時代認識について述べてまいります。    
 六十年前の大戦終結後の混乱から日本社会は不死鳥のようによみがえり、復興期を経て高度成長経済のまっただ中を突き進み、世界に冠たる経済社会を築きあげました。

アルヴェで開かれた秋田市建都400年記念式典
 端的にとらえれば、国中がひとつの目標に向かって、全国画一のルール、すなわち中央集権的手法で突き進んだことが、日本の経済社会の再構築を実現させ、効率的かつ短期間に、日本を経済大国に押し上げる原動力になったことは確かなことです。
 しかしその後、バブル経済とその破綻を経て、成熟社会、多様化社会へと向かう中で、これまでの社会システムが現代という時代にマッチしないものとなり、さまざまな歪みが目立ってきました。 
 国から都道府県、市町村と縦型に並ぶ中央集権的システムに長く慣れ親しんできたことは、結果的に、自らのことは自ら考えるという地方の思考回路を鈍らせるとともに、依存体質を根づかせたといっても過言ではありません。また、まちづくりや文化などの面においても、それぞれの地域個性を失わせがちにした面も否定できません。
 このような中で今まさに、国・地方を通じての大胆な行財政システムの大変革が求められています。それが地方分権の推進であることは誰しもが認めるところでしょう。  
 また、システムの大変革は政治・行政に限ったことだけではありません。高度情報化や少子高齢社会、低成長社会などの中にあって、企業や団体など民間社会では、すでに大変革が進行中なのです。 
 このような変革期において大切なことは、危機だ、激変だと立ちすくむのではなく、現実を検証し、課題を整理したうえで、目標を定め、一つひとつ計画的にそして具体的に解決していくことです。
 日本社会全体が、地域の持つ独自の発想や能力の再評価を求めており、その先にこそ、地域の、ふるさとの希望が見えてくるのです。


地方分権の推進
時代の必然に舵を切る

 地方分権というのは、おもに国、県、市の間の権限や財源の配分を見直し、より住民に近いところが権限や財源を持つことです。  
 今少し砕いて言えば、ひとつは外交や基本的な社会保障など国全体の統一性が必要なものを別として、住民生活に密着したものについては、国が全国一律に定めている制度を、地方の特色に合わせたものにするために、地方に裁量権や決定権を移すことです。    
 今ひとつは、いったん国税である財源をプールし、その中から地方に全国画一的な基準で補助金を出して地方が事業を行うことをやめ、最初から、その分の国税を地方税に移したり、地方全体の共有財源である地方交付税を、それぞれの財政力に応じ適正に配分することです。これにより、地方が主体的に事業内容を選択・構成し、より効率的で市民の満足度の高い仕事ができるようになります。        
 国と地方との行財政システムを根幹から大変革することは、巨大な船が急激に舵を切ることと同じで、容易なことではありません。しかし、日本と地域社会の新時代に向け、すでに地方分権社会への舵は切られたのです。


市民協働型まちづくり実現への第一歩
しあわせづくり秋田市民公聴条例

 国・地方とも、財政状況が極度に行き詰まる中、限られた財源で効率的な行政運営をしなければならない厳しい現実におかれています。
 財政的にすべての市民要望に応えることが不可能な今、徹底した情報公開と市民・行政との幅広い情報交流により、「できること、できないこと」を納得していただくことや、多額な投資を要する市の事業について、直接利害関係を持たない市民の皆様に検証していただくことなどが、公平な市政運営をしていくポイントとなります。

市民の手で運営されている
旭北地区コミュニティセンター
 このような市民との情報交流や市民意見の反映をめざす「しあわせづくり秋田市民公聴条例」が昨年の十二月市議会において議決されました。市民協働型まちづくりを進めるための大切な部分がルール化されたことになります。


都市内地域分権
身近なサービスは身近なところで

 次は都市内地域分権です。合併によって市域が拡大し、また少子高齢社会がいっそう進み、さらには市民協働が推進されていくと、地域の役割に対する期待もふくらんでまいります。そのため、住民に身近なサービスはより身近な場所で提供するとともに、地域固有の課題は地域で一定程度完結できる体制づくりを進めていくつもりです。

河辺、雄和の新鮮な野菜や果物を
提供している川尻朝市
 具体的には、土崎・新屋両支所の改築などに合わせ、東・西・南・北・中央の五地域へ(仮称)市民サービスセンターを整備することや、旧河辺町・雄和町役場に設置した市民センターの活用を視野に入れています。
 これは、おもに市役所と地域との間での行政サービス機能の配置や権限・財源配分の見直しといってもよく、これもまた市民協働型市政推進システムのひとつです。


話題をふたつ
日本興亜損害保険大規模コールセンター誘致

 昨年十月、県とともに誘致を進めてきた「仮称・CRファクトリー」の新屋西部工業団地進出が決まりました。来年四月には二百九十人規模で操業を開始、平成二十二年度までに千二百人規模に雇用を拡大する計画です。その初期投資額は三十億円以上となります。
 本市が誘致したコールセンターはこれで四社目となります。現在すでに三社で約八百人の雇用が創出されておりますので、四社がフル稼働する四、五年後には三千人規模の雇用確保が見込まれます。

ホット・コミュニティ〜川尻朝市

 旧河辺町・雄和町の農家の皆さんが丹精込めて育てた新鮮野菜や花、果物が、毎月第二土曜日(今年も六月から開催予定)、川尻にある総社神社境内の川尻朝市に並べられています。
 ここで特筆すべきは、今やこの朝市は、「作った人の顔がみえる野菜や果物、だから安心」、だけではなく、失われつつあった地域のつながりの復権に貢献していることです。地域住民の発想で始めた朝市がいつの間にか、ゆっくりお茶を飲んで地域の人と交流を深める、新たなコミュニティの場となっているのです。      
 今回の合併や市民協働型まちづくり、地産地消と食の安全、そして地域コミュニティの未来の姿を象徴しているようで、私自身、とても温かい気持ちになりました。 

 河辺、雄和、秋田が合併を機に、市民交流の輪を広げ、これまで気づかないで見過ごしていたまちの風景を再発見しながら、心も新たに「しあわせ実感 緑の健康文化都市」の第一歩を力強く踏み出したいと思います。    
 今年一年、市民の皆さまには毎日のくらしの中で温かな「しあわせを実感する」機会が少しでも多くなることを願ってやみません。


終わりに

 世界中で紛争が絶えない今日、何にもまして、平和であることが希望につながる絶対条件です。
 昨年末に、東京の人気スポット「お台場」で世界各国からの平和のメッセージを記したピースウォール(平和の壁)展が催され、実行委員会から、私にも出展依頼がありました。そのときに出展し展示された私からのささやかな平和のメッセージです。 

平和は心の力から生まれます
平和は心の絆から生まれます
譲り合う心が平和の礎です
認め合う心が平和の糧です

東京・お台場に展示された
佐竹市長の平和のメッセージ
平和は心の力から生まれます。



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