2005年9月1日号

未来へ語り継ぐ 8.14土崎空襲


 終戦前夜の昭和20年8月14日午後10時30分ころ、132機のB29爆撃機が石油施設のあった土崎を襲いました。これまでにわかった市民の死者93人、負傷者100人以上。爆撃は約4時間にわたって続き、投下された爆弾は約1万2千発、総重量約1,000トンと言われています。

あのときの悲劇を
風化させてはいけないんです。

高橋茂さん
 土崎港被爆市民会議事務局長
 当時十五歳だった私は土崎の叔父の家に寄宿していたのですが、その日はお盆で、両親が住んでいた川口境の家に帰っていました。夜の十時三十分ころ、突然雷のような音が聞こえ、外へ出ると土崎方面の空が赤くなっていました。
 「叔父は大丈夫か―」。
そう思った私はすぐに土崎に向かいましたが、高清水のあたりで警防団に危険だからと止められ、気味が悪いほど明るい空をずっと見ているしかありませんでした。
 土崎に行けたのは十五日の朝五時ころ。焼け野原のあちこちに傷を負った人たちが倒れ、惨さで胸が痛くなるほどでした。幸い叔父は無事だったのですが、その地獄のような光景は今でも目に焼き付いています。

慰霊を待ち望んでいたみんなの思いが一つに

 戦後まもなくは慰霊の行事さえ米軍の許可が必要でしたし、土崎のまち全体で犠牲者を追悼する機会はありませんでした。昭和五十年、空襲三十周年を記念した慰霊祭が計画され、実行委員会に私も参加しました。
 会場は土崎小学校。校庭に焼香台を置いたんですが、夜遅くまで焼香の列は絶えませんでした。訪れた人からは慰霊祭の手伝いの申し出が次々にあり、地域のかたがたの土崎空襲に対する関心の高さ、追悼への思いに改めて胸を打たれました。
 そして「誰かがやってほしかった」「毎年続けてほしい」との声を受け、土崎港被爆市民会議が発足しました。悲劇とも言えるこの土崎空襲の記録を掘り起こし、後世にしっかりと伝えていくことが目的でした。
 お寺をまわって亡くなったかたの調査をしたり、当時救護にあたったお医者さんを訪ね、青森や千葉に行ったりもしました。絵本も発行することができましたし、たくさんのかたから協力をいただき、平和祈念碑は土崎、飯島の八か所に建てることができました。一番苦労したのは米軍の資料収集です。東京の国会図書館には十数回足を運びました。慣れない場で、しかも英文の資料ですから本当に大変でした。それでも担当のかたが熱心に米公文書館へ働きかけてくれたこともあり、多くの貴重な資料を集めることができました。

歴史を次の世代へ、
平和の礎を築くために

 三十年間、空襲を語り継ぐという活動を続けてきましたが、最近やっとこの思いが若い人たちに伝わってきているのかなと感じます。
 毎年八月十四日に行っている犠牲者追悼の式典も、来年から若い人たちを中心に開催できたらと考えています。みんながアイデアを出し合い、若い人たちが平和を願う日として定着してくれることを願っています。
 土崎空襲、とても悲しいできごとですが、これからもしっかりと語り継いでいこうと思います。

傷跡に触れ、平和への
思いが強くなりました。

吉田優香さん
 秋田中央高校3年
 今年六月の文化祭で、私たちの生徒会は「戦後六十周年」というテーマで土崎空襲を取り上げ、戦争、そして平和について考えました。
 私たちにとって戦争は遠い昔のできごと。それでも図書館で資料を見たり、多くのかたから体験談を聞くうちに、当時の悲惨な様子がだんだん浮き彫りになってきました。
 平和祈念碑も見学しましたが、印象に残ったのはセリオンのそばに建つ赤銅製の「平和を祈る乙女の像」。作られた昭和五十四年には赤かったはずの像も今は青色。そのことだけでも年月の経過を実感しました。
 そして今も空襲のすさまじさを残す日本石油の当時の建物も訪問しました。五日間燃え続け、平らな壁や柱のコンクリートがでこぼこに溶けているのを見ていて、空襲の壮絶さが伝わってきました。
 文化祭では土崎空襲の絵本「はまなすはみた」の朗読や爆弾の破片、当時の衣服などを展示、そして未来に向けたメッセージを掲げました。多くのかたが訪れ、また、ねぎらいのことばなどをいただき、企画してよかったなと思っています。

未来に向け、私たちができることを考える

 この企画を通して、それまで他人ごとのように感じていた戦争に対する思いが身近なものへと変わりました。そして友だちと戦争について考え、話し合えたことが何よりの収穫だったと思います。当たり前のように感じている今の平和。でも戦争はいつ起こるかわからない。自分が、自分の家族が犠牲になってしまったら…。土崎、そして世界の平和のために自分たちができることは?
 私は今、光沼の絵を描いています。やはり空襲の被害を受けたこの地の、慰霊と平和祈念の絵です。私たち高校生は未来を担う世代。希望と平和を願う気持ちを込め、描こうと思っています。

土崎空襲60周年の催し


犠牲者追悼平和祈念式典
とき/8月14日(日)午前10時
会場/セリオン

 土崎空襲の犠牲となったかたがたの追悼のほか、子どもたちが、平和をテーマにしたメッセージを読み上げます。
 また、8月10日(水)から16日(火)(予定)まで、セリオンで行う「土崎空襲展」で展示する戦争にまつわる品々を募集しています。詳しくは土崎港被爆市民会議へご連絡ください。

みんなの絵と詩〜わがふるさと
とき/8月23日(火)→27日(土)・午前9時〜午後9時30分
会場/アルヴェきらめき広場

 幼稚園から中学までの子どもたちが、ふるさとの風景、歴史や行事、祭りなどを絵や詩で表現しました。
 21世紀を担う子どもたちの作品をぜひご覧ください。

●問い合わせ 土崎港被爆市民会議tel(845)7479


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