2007年8月17日号

秋田市から技術発信

世界一薄い半導体パッケージ


秋田エルピーダメモリ株式会社(雄和石田)

世の中には、無数の"もの"が存在します。
そして、そこには必ず、技術を研究する人、機械や道具を扱う人がいます。
ここ秋田にも、ものづくりを支える"人"という財産があります。

 携帯電話やパソコン、デジタルカメラなど、身の回りのさまざまな製品に使われている半導体。雄和にある秋田エルピーダメモリ株式会社は、半導体製造の「後工程」を担う会社です。
 後工程とは、シリコンウエハと呼ばれる半導体回路が形成された円盤状のものからチップを切り出し、パッケージ化する作業のこと。パッケージ化された半導体は、おもにDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)やフラッシュメモリーなどの記憶装置として、携帯電話やデジタルカメラなどに使われています。
 秋田エルピーダメモリでは、二十枚の半導体チップをわずか1・4ミリの厚さに重ねた、世界で最も薄いパッケージの開発に成功しました。
 今回のパッケージ開発で驚きなのは、厚さ1・4ミリの半導体チップ二十層が持つ情報量。チップ一枚で記憶できる情報量は広辞苑約三冊分ですので、チップ二十枚では広辞苑約六十冊分になります。それまでは、韓国のサムスン電子が開発した厚さ1・4ミリ、十六層の半導体パッケージが世界最高でしたので、記録を大きく塗り替えました。
 このプロジェクトの企画・設計に携わった工藤康裕さんは、「これからは、小型かつ高性能な商品がますます望まれます。高い技術があれば、国内はもちろん、海外にも強くアピールできます」と話します。二十層チップの半導体は商品としてはまだ使われていませんが、「世界一薄い半導体パッケージ開発」という実績が、信頼の技術として会社の強みとなっています。

ものづくりを支える技術と熱意

 今年一月にプロジェクトを立ち上げてから完成までの三か月間、約二十五人のチームは試行錯誤を重ねました。シリコンのチップ一枚を厚さ0・03ミリまで削る技術、薄くて割れやすいチップをつまんで二十枚重ねる技術、チップと極細0・02ミリの金属線を接合する技術…。二十層パッケージの実現には、最先端の機械設備はもちろん、高いレベルの知識や技術が必要です。
 おもに開発に携わった嵯峨徹さんは、「厚さ0・03ミリのチップを扱うわけですから、ほんのわずかな圧力でチップが欠けたり反ってしまったり…。不具合が生じるたびに、材料、材質、機械の使い方などをチームで見直しました」と話します。
 技術者をものづくりに奮い立たせるものは? と嵯峨さんに聞くと、「自らの手で作りあげた製品が世の中に出て、お客さんに喜んでもらえる。そうした“達成感”があるからこそ、私たち技術者はものづくりに励めるのではないでしょうか」と答えてくれました。世界一の技術は、人に喜んでもらおうというプロの情熱で支えられています。

山ゆり復活!雄和の特産品に


雄和山ゆり生産組合

 昭和30年頃から、山に杉が増えて地面に日光が届かなくなったため、次々と姿を消していった“山ゆり”。花の人気に加え、根が漢方薬や健康食品の原料になることから、平成9年、地域の農家と旧雄和町役場が協力して、山ゆりを特産品にしようと栽培を始めました。
 夏に葉がすべて枯れたり、冬にはネズミにたくさんの球根が食べられたり…。苦労が続きましたが、種子と球根の消毒方法、土と肥料の種類を工夫して、平成12年に球根1,000個を初出荷。平成14年には町から独り立ちして「雄和山ゆり生産組合」を結成し、昨年は、将来性のある地域資源を市が応援する「地域シーズ発掘活用事業」に採用されました。
 数百個の球根を東京都町田市の自然保護団体などへ出荷した年もあれば、個人へ少ししか販売できない年もありましたが、組合長の菅野一吉さんが「拡大するより安定して長く続けたい」と継続・安定化に力を注いだ結果、今年の秋からは1,000個以上の出荷が見込めるようになりました。「雄和といえば山ゆり」になる日も遠くなさそうです。
●問い合わせ 雄和山ゆり生産組合の菅野さんtel(887)2832


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