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2011年2月4日号

市長コラム

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新たな市民社会へ(1)〜ランドセルが語りかけたもの

市長穂積 志

新成人のつどいで
(1月10日、市立体育館)
 伊達直人、星飛雄馬、矢吹丈…。名前を聞くだけで私たちの年代にとっては懐かしさとともに憧れのヒーローの姿が鮮明によみがえります。前橋市の児童相談所に届けられたランドセル。昨年のクリスマスから始まったタイガーマスクからの贈り物のニュースにふれるたびに、うれしいこと、心温まること、興味深いこと、考えさせられることがたくさんありました。
 これだけの善意が全国のあちらこちらで示されました。無縁社会といった言葉が生まれ、どちらかといえば殺伐と感じられる昨今の世相にあっても、人間が本来持っている他者を思いやるやさしい心や尊厳を失っていないことをまずは素直に喜びたいと思います。ランドセルの中には、これらがぎっしり詰まっていました。
 さらに私がうれしく思うのは、このような気持ちの連鎖です。最初に報道があった日から全国に共感の輪が広がり、今では毎日のニュースを見るのが楽しみです。 とりわけ頼もしく感じたのは若者の間での盛り上がりです。「家庭教師の経験を生かし勉強を教えてあげたい」といった若者が現れたり、インターネットの書き込みに「もっとみんなでやろう」「自分にもできる」とあったり、若者特有の元気と相まったやさしい心根を見た気がします。
 最近、ひそかに楽しみにしていることもあります。贈り主が多彩なことです。冒頭の紹介をはじめ月光仮面、アルセーヌ・ルパン、笛吹童子、中にはなまはげなど地域性のあるものもあり、ネーミング自体がアイディアを競うようで飽きません。
 また、児童相談所や児童養護施設の存在にスポットが当たって、親からの虐待による入所児童の増加などの実状が明らかになり、社会の関心が高まったことも見逃せません。行政は行政で環境整備など施策の充実は欠かせませんが、ただ、背景に社会の力強い後押しがあるのとないのとでは大きく違います。
「伊達直人」や「矢吹丈」は、今後私たちが身を置く市民社会のありようにも一石を投じたように思います。人間誰もが持っている「人と人との関わりの中で生きたい」「人の役に立ちたい」「社会の中で何らかの役割を果たしたい」という思い。市民協働や「新しい公共」の推進、家族・地域の絆、あるいは公益法人に対する個人の寄付税制の見直しなどにも思いは至ります。次回、もう少しお話ししたいと思います。

1月11日、保戸野にある児童養護施設「聖園天使園」に“伊達直人”を名乗る男性から4個のランドセルが届きました



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