※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2011年9月2日号

市長コラム

秋田市ホームページで市長の動向や記者会見の
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「市長ほっとコーナー」
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伝えることの大切さ

市長穂積 志

長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典などを取材
する全国で9組の「親子記者」に選ばれた
工藤唯織さん(川添小4年)とお母さんの
英子さん(8月4日。右はお父さんの進さん)と。
 しばしば話題に上るユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の「世界遺産」。国内でも白神山地、屋久島などが登録されており、平泉の登録は記憶に新しいところです。そのユネスコでは「記憶遺産」の登録も行っています。今年5月、絵師・山本作兵衛の筑豊炭田(福岡県)の記録画などが、わが国では初めて登録されました。これは、明治から戦後にかけて筑豊各地の炭坑における生活の様子を描いた水彩画などで、採炭夫や鍛冶工として働いた作兵衛が、老年になって孫に当時の炭坑の生活の様子を伝えようと描き始めたのがきっかけだそうです。
記憶遺産の中には「アンネの日記」やフランスの手書き版「人権宣言」など、世界の歴史に大きく関わるものもありますが、このたびの登録はユネスコの“平凡な市民の日々の営みを後世に伝えていく”という明確な意思の表れとして、私には非常に興味深いものがありました。
 伝えることの大切さを考える上で、8月はとても重要な月です。6日は広島が、9日は長崎が66回目の原爆の日を迎えました。それぞれが発する平和宣言は、唯一の被爆国として核兵器そして戦争の悲惨さと平和の尊さを次代に伝えるための宣言であり、今を生きる私たちに対する戒めだと思っています。そして、14日は土崎空襲があった日です。「土崎空襲犠牲者追悼平和祈念式典」が執り行われ、「21世紀子どもたちから平和のメッセージ」の発表会もありました。未来に向けて発せられた子どもたちのメッセージ。私たち大人はその未来を築いていく上で子どもたちの言葉一つひとつを絶対に忘れてはなりません。
 どうしても東日本大震災の話になってしまいます。「伝えたいことが時を隔て見事に伝わっていた」という報道がありました。岩手県宮古市姉吉地区の海抜60メートルの高台に建つ石碑に彫られた文字は「高き住居は児孫の和楽 想へ惨禍の大津波 此処より下に家を建てるな」。1933(昭和8)年の昭和三陸地震による大津波の後に建てられたもので、先人の教えを守り、石碑より高いところで生活してきた姉吉地区では、12世帯すべての家屋が震災の被害を免れました。
 渦中にあっては「人間はそのことをずっと忘れない。いつまでも忘れるはずがない」と思いがちですが、記憶というのは案外時間の経過に弱いように思います。伝える道具は紙に書いたものでも石に刻んだ言葉であっても、絵でも、写真でもいいのです。大切なことは「伝えていく」「残していく」という、人間の強固な意志と信念だろうと思います。

小・中学生たちが平和を訴えました
(21世紀子どもたちから平和のメッセージ発表会)。



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