※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2015年10月2日号

市長コラム

秋田市ホームページで
市長の動向や記者会見の内容などをお伝えしています。
「市長ほっとコーナー」
http://www.city.akita.akita.jp/city/mayor/

繋がれていく友情物語−政吉(まさきち)とフジタ

市長 穂積 志(もとむ)

ミュージカル「政吉とフジタ」
エリアなかいちにぎわい交流館で、12月13日(日)までロングラン公演中!
この秋、ぜひ足をお運びください
  しっとり暮れゆく秋の夕日に、「文化」という言葉が自然に思い浮かびました。読書に音楽、絵の鑑賞、時には演劇もいいですね。
 先日、ミュージカル「政吉とフジタ」を鑑賞する機会がありました。脚本は秋田市出身の内館牧子さん、制作はわらび座。秋田県立美術館の大壁画「秋田の行事」制作にまつわる洋画家・藤田嗣治と資産家であり美術収集家でもあった平野政吉の友情物語です。そこには、あふれるような二人の間の熱い思いと固い絆が見事なまでに表現されていました。
 ミュージカルに込められたメッセージの内、まず印象に残ったのは「物事に本気で取り組めば必ず道は開ける」という言葉です。「ありのままに生きること」も一つの生き方だが、時には鬼になり、本気になってやってみることも必要ではないか、人にはそれぞれやるべきことが与えられている。そのような話だったように思います。
 そして、政吉とフジタが鬼になり取り組んだ物語が演じられていきます。「本物の芸術を秋田の子どもたちに」という政吉の夢、それを現実にカタチにしたフジタ、どの台詞も小気味よく響きました。
 また、「秋田の宝はワラシだ」という言葉にも思わずハッとさせられました。劇中、家が貧しく平野家に奉公していたリエという女性が登場します。平野は、彼女の本気と向学心、そして素質を見いだし、私費で高校と医学部への進学の面倒を見ます。これ以上書くと関係者にお叱りを受けそうなのでやめておきますが、「学力全国トップクラス」と言われる秋田の小・中学生のために、私たち大人に課せられた責任の大きさについて考えさせられました。
 とにかく全編、内館さんの秋田の子どもたちに対する深い愛情と期待、郷土への思い、先人への尊敬の念があふれ、笑いあり感動ありの息をつかせぬ80分でした。
 新県立美術館にある大壁画は一昨年まで、お堀をはさんだ旧県立美術館にありました。大壁画展示のため、半世紀程前に平野の尽力もあり建設されたものです。
 今、市はこの建物を再度文化芸術のために役立てられないかと考えています。千秋公園の杜を背に、お堀端の三角屋根として市民に馴染みのある風景でもあり、新美術館2階から見る眺めは美しい絵画のようです。ミュージカルで描かれていますが、この古い建物には物語があります。これを残すことができれば、二人の友情物語も連綿と繋がれていくでしょう。
 秋は散歩にも絶好の季節です。近い将来、文化と芸術の薫りあふれる街並みを、落ち葉がそっと舞い降りる中散歩できる日が来るのを、今から楽しみにしています。

三角屋根が特徴の旧県立美術館


© 2015秋田県秋田市(Akita City , Akita , Japan)
All Rights Reserved.
webmaster@city.akita.akita.jp