※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2016年1月1日号

新春市長コラム





秋田市長

穂積 志(もとむ)


私たちが今できることを

子どもたちのために
明るい未来のために


 明けましておめでとうございます。新たな年を迎え、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
 初夢に見ると縁起が良いものを表すことわざに、「一富士、二鷹、三茄子(なすび)」があります。「無事」や「不死」につながることから、筆頭にあげられている「富士」ですが、「日本一低い富士山」が秋田市にあることをご存知ですか?
 JR秋田駅から徒歩15分ほどの距離にある東通明田(みょうでん)の富士山(ふじやま)、通称「明田富士」は標高35m。山頂には富士大権現(だいごんげん)が祀(まつ)られており、さらにその脇には、“日本一”お墨付きの標柱が、日本山岳会秋田支部によって立てられています。古来より富士は信仰の山であり、富士登山(富士詣)は、健康や幸福、繁栄などを祈る「行(ぎょう)」の側面を持っていたようです。
 現在は、東通地区連合町内会の加藤長二郎会長らを中心に、地域のみなさんが手入れをされているということで、加藤会長は「明田富士を地域おこしに結びつけたい」とおっしゃっていました。
 地元で親しまれてきたその山の頂から、晴れた日に市街地を見渡してみてはいかがでしょう。きっと、秋田市の新しい魅力を発見できることと思います。
 さて、平成28年の干支は「申(猿)」ですが、こちらも富士と一緒で、厄災や病気が「去る」という意味から縁起が良いといわれます。家族みんなが健康で元気に過ごせる、明るい一年にしたいものです。
←新雪まぶしい千秋公園


明田富士の登り口

健康で長生きを!

 健康といえば、我が国は世界がうらやむ長寿国で、男性80.50歳、女性86.83歳が平均寿命となっていますが、実は、男性はおよそ9年間、女性は12年間の介護を必要とする期間があるとされています。
 平均寿命が延びるのはうれしいことですが、同時に、介護を必要としないで自立した生活を送ることができる「健康寿命」を延ばしていくことが重要と考えています。そのためには、若い時から定期的に健康診断を受け、栄養バランスの取れた食事や適度な運動、ストレスをためない工夫など、日々の生活の中での健康への心がけが大切です。その必要性は理解していても、行動に移し、継続していくのは容易なことではありません。
 私たちは、健康に生活しているうちは、ついそれが当たり前だと思い込み、何気なく過ごしてしまいがちです。でもちょっと周りに目を向けると、思いがけず、若くして病気になってしまうかたや、事故・災害などで、突然、人生や大切な家族を奪われてしまうかたもいらっしゃいます。
 人の運命は誰にも分からないものですが、だからこそ今、自分のため、家族のため、大切な人のために、自らの意思でできることをしっかりと実行しておきたいものです。せっかくのお正月です。おいしい料理やお酒で英気を養い、日頃のストレスを発散しながら、家族が集まる機会を利用して、お互いのために、今年の健康づくりの目標を立ててみてはいかがでしょうか。

健康づくりでみんなハッピ〜!
12月に行われたフロアカーリング交流大会で。60チーム、約210人の“老若男女”が参加しました

人口減少問題と向き合う

 一昨年頃から、我が国の人口減少問題が大きく取り上げられています。国や地方を挙げて、この問題に取り組んでいるところですが、では、人口が減って何が問題となるのでしょうか。
 秋田市の人口は、死亡数が出生数を上回る「自然減」に、高校、大学などの卒業に伴う進学や就職などによる「社会減」が重なり、人口減少局面を迎えています。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、平成22年に約32万4千人だった人口が、30年後の平成52年には約23万5千人に減るとされています。この人口は、私が中学生だった昭和45年当時と同じぐらいですので、考え方によってはあまり大きな問題はないようにも思えます。
 ところが、人口構造の面から見ると大きな違いがあります。当時わずか6%程度だった老年人口(65歳以上)の割合が、今後、年少人口(15歳未満)・生産年齢人口(15歳以上65歳未満)の減少と老年人口の増加により、平成52年には約42%に達すると予想されているのです。
 生産年齢人口の割合の低下は、私たちの生活に直結するさまざまな問題を招くことになります。中小企業や農家の後継者不足、需要低下などによる経済活動の縮小、医療や介護など社会保障制度の持続可能性の問題、地域コミュニティの弱体化による高齢者の孤立や冬期の除雪の問題などです。
 人口減少問題の本質は、人口構造が大きく変わってしまうことにあり、人口規模の縮小よりもはるかに大きな問題といえるのです。そのため、高齢者が支えられるだけでなく、社会の支え手としての役割を担い、活躍していただけるよう、エイジフレンドリーシティ(高齢者にやさしい都市)のような取り組みをさらに進めることが必要と考えています。
 また、秋田市の場合、社会増減よりも自然増減の方が将来人口に及ぼす影響が大きいという分析結果もあることから、人口減少対策としては、結婚・出産・子育て支援に重点を置いて推進したいと考えているところです。

子どもを生み
育てやすい社会に

 秋田市の子どもの出生数は、昭和40年代をピークに減少が続き、一昨年には昭和45年の約半数にまで落ち込んでいます。背景には、結婚・出産に対する意識の変化や核家族化、非正規雇用の増加など、さまざまな社会的要因が合わさって、未婚化・晩婚化・晩産化が進んできたことがあります。
1人の女性が一生に生む子どもの数にあたる合計特殊出生率は、秋田市では平成26年は1・32でしたが、夫婦や独身のかたが理想とする子どもの数などから算出した希望出生率は1・83といわれています。
 結婚・出産は、もちろん個人の自由に属しますが、「子どもを持ちたい」と望んだときに、それをかなえられる環境づくりが今求められています。

切れ目のない子育て支援


ポートタワーセリオン展望室のカップルベンチが2人の素敵な時を演出

 こうした中、市では、就労、出会い、結婚、出産、そして子育てと、ライフステージに合わせた施策を切れ目なく展開していきたいと考えています。その目玉事業として検討しているのが「第2子保育料無償化」です。
 これは、小学6年生以下のお子さんがいるご家庭で、今年4月2日以降に2人目が生まれた場合、その子の保育料を一定の所得制限のもと、無償化しようとするものです。県でも、第3子以降の子どもが生まれた場合に第2子以降の保育料を無償化する方針ですので、市の制度と併せて活用することで、より大きな効果が得られると考えています。
 昨年度実施した市民意識調査では、影響が大きいと思う少子化の要因として、「子育て費用や教育費などの経済的負担」という回答が30歳代では最も多く、20歳代でも2番目に多くなりました。こうしたことも踏まえ、第1子を持つ世帯が、第2子以降も安心して生み育てることができる環境を整えるため、第2子の保育料を無償化したいと考えたところです。
 また私自身、市長としての公約でもある保育所などの待機児童の解消は、平成27年度当初も待機児童ゼロとなり、5年連続で達成することができました。
 引き続き、施設の整備を計画的に進めるとともに、保育士の人材育成や保育士資格を持っていながら働いていない、いわゆる“潜在保育士”の掘り起こしなどにも取り組むことにしています。放課後児童対策も、児童館を市内全小学校区に整備しましたが、来年度は、新たに3つの放課後児童クラブで105人の定員増を図りたいと考えています。
 そのほか、就労については、雇用の質の向上の観点から、若年者の非正規雇用者を正社員に転換した企業を支援する「アンダー35正社員化促進事業」を進めることにしています。
 また、独身男女の出会いの場となる「シングルズカフェ秋田」の開設や、妊娠期から子育て期にわたるさまざまなニーズに対し、総合的支援を提供するワンストップ拠点「秋田市版ネウボラ(※)」の整備なども検討しているところです。
 限られた財源で、こうした子ども・子育て支援策を実行するには、既存事業の見直しや優先順位を付けるなどして、やりくりしていく必要があります。将来の世代のために予算を重点的に配分していくことについて、幅広い世代のみなさんからご理解をいただく必要があると考えています。

※ネウボラ=フィンランドの子育て支援拠点のこと。


親子で体験!年賀状作り
雄和市民サービスセンターで行った、
手漉きはがきと年賀状貼り絵教室で

子どもは社会の大事な“宝”

 子どもは、「家族にとっての宝」であると同時に「天からの授かりもの」ともいうように、社会全体でともに育てていくべき存在でもあります。
 私が市長就任後、市政運営の基本方針として策定した総合計画の基本理念は、「ともにつくり ともに生きる 人・まち・くらし」です。
 来年度スタートする秋田市の次期総合計画でも、この基本理念を引き継ぎつつ、副題として「ストップ人口減少 元気と豊かさを次世代に」を掲げることとし、子どもたちの笑顔があふれる秋田市を、次の世代に引き継ぐことに全力で取り組みたいと考えています。
 子どもを生み育てやすい社会の実現のために、ぜひとも、市民のみなさんのご理解とご協力をお願いいたします。

ヨロシクね

申年幕開けの明るい話題を紹介しましょう。昨年暮れ、大森山動物園にいる世界最小の猿の仲間、コモンマーモセットに双子の赤ちゃんが誕生しました。母「もも」、父「イツキ」がこれまでに育てた子どもは18頭で、日本の動物園の中でも大変珍しい大家族だそうです。
 この幸せの要因には、2頭が若くして“夫婦”になったことや、動物園での安定した暮らしがあったこと、そして家族みんなの子育てサポートがあったことなどがありそうです。子どもを育てること、命をつなぐことの基本は人間と同じなのかもしれませんね。
 それではみなさん、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

手乗りでお食事♪ コモンマーモセット

ストップ人口減少 元気と豊かさを次世代に

未来へ続け! 元気な笑顔\(^O^)/

河辺保育所で


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