※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2017年1月6日号

新春市長コラム



新たなまちづくりの萌芽(ほうが)

秋田市長 穂積 志(もとむ)


 明けましておめでとうございます。新しい年の幕開けをみなさんいかがお過ごしでしょうか。
 新年会や同窓会など、久しぶりに友人や家族が集まり、お酒を酌(く)み交わす機会も多いこの時期ですが、今年の干支(えと)の「酉(とり)」という漢字は、酒壺(さかつぼ)を表す象形文字から生まれたという話があります。また、お酒は「御神酒(おみき)」というように、もともと神様に捧げるため、祭りなどの儀式で飲まれるようになったといわれます。今でも、結婚式や成人式、新築の際の地鎮祭など、人生の新たなスタートやハレの場に欠かせないものとなっています。
 今年もいろいろなことがあると思いますが、みなさまにとっておめでたいことが多い、素晴らしい1年になることを心から願っております。

秋田を豊かに醸す

〜芸術祭?〜

 お酒に関係のある漢字には、必ずといっていいほど、酉(とりへん)が使われています。麹(こうじ)を発酵させてお酒などを造ることを醸すといいますが、昨年の11月、“秋田を豊かに醸す”をテーマに「あきた豊醸化計画」と題したシンポジウムがありました。会場が「高清水」で知られる秋田酒類製造さんの仙人蔵だったこともあり、お酒にまつわるイベントと思われたかたもいたかもしれませんが、実は「秋田市での芸術祭?の開催を考えるシンポジウム」として、市が主催したものです。
 東日本大震災を経験して感じたことですが、人が生きていく上では食(しょく)はもちろんとして、加えて“心の栄養”も大事になってきます。芸術や文化は、心の栄養、心の豊かさにつながり、地域を元気にできるという思いから、今年度スタートした「秋田市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の重点プロジェクトに、芸術祭の開催を位置づけ、アートを通じてまちの魅力を再発見できる芸術祭のあり方について検討を始めたところです。
 シンポジウムには、市内外から70人以上が参加し、秋田公立美術大学をはじめ、県内外で芸術文化活動やまちおこしに携わるかたに芸術祭開催の意義などを議論していただきました。シンポジウムのタイトルに「?」が入っているように、どんな内容にするのか、そもそも芸術祭という名前がふさわしいのか、といったことがこれからの論点になります。
 私たちの住むまちを舞台に、私たちの手で作り上げていく新しい取り組みです。今後、“夜学(やがく)”と名付けた勉強会を実施し、テーマや開催までのロードマップ(行程表)、体制づくりなどの検討を重ねていくこととしており、企画段階から多くの市民に関わっていただきたいと考えています。検討の過程で、これまで交わることのなかった人たちが出会ったり、普段見逃していたまちの魅力を見つけたりすることに、大きな意味があると思っていますので、関心のあるかたはぜひご参加ください。

青空広がる千秋公園。雪吊りは冬の風物詩ですね

土崎の曳山が無形文化遺産に!

 芸術祭は、これから作り、育てていくものですが、本市には地域で受け継がれてきた歴史ある祭りが数多くあります。
 昨年末、アフリカのエチオピアで開催されたユネスコの第11回政府間委員会で、「土崎神明社祭の曳山行事」を含む、国の重要無形民俗文化財33件で構成した「山・鉾・屋台行事」が、晴れてユネスコ無形文化遺産への登録を認められました。秋田の歴史の中で生まれ、受け継がれてきた伝統行事が、人類共通の貴重な文化遺産として評価をいただいたということであり、土崎地区はもちろんのこと、秋田市全体の喜び、そして誇りとして受け止めています。
 「土崎湊」は、室町時代の「廻船式目(かいせんしきもく)」で“三津七湊(さんしんしちそう)”の一つに数えられた古くからの重要な港です。平成30年3月には、曳山と土崎空襲の記憶の継承のため「(仮称)土崎みなと歴史館」がオープンする予定ですし、北前船交易で栄えた歴史を持つ自治体が連携して、文化庁の日本遺産登録をめざす取り組みも進めています。こうした動きに加え、各地の「山・鉾・屋台行事」との連携を図りながら、無形文化遺産としての知名度を活かし、本市の歴史や文化の魅力を全国、そして世界に向けて発信していきたいと考えています。


祝・ユネスコ無形文化遺産登録!
例祭は毎年7月20日・21日に開催しています

「高清水」の仙人蔵で行ったシンポジウム。
醸し出される蔵の雰囲気がいい感じでした

新屋に芸術と文化を育む拠点施設が誕生

 新屋地区では7月、「(仮称)秋田市新屋ガラス工房」がオープンします。地域のみなさんとワークショップなどを重ねながら進めてきたもので、ガラス工房を中心に、美大卒業生や若手作家の起業・独立を支援するとともに、地域の交流を通じた住民主体のまちづくりの拠点となる施設です。
 ギャラリーは、起業支援のための企画・展示スペースとして、ショップはガラス作家が販路開拓などを学ぶ場として活用することとしており、工房の制作風景を眺め、カフェスペースで実際に作家のグラスを使うこともできます。芝生を敷いた交流広場は、鹿嶋祭やあらや水祭りなど、地域の行事で活用していただき、若手作家や地域のかた、そして工房を訪れる人たちが、自ずと集い、語らう場になっていけばと考えています。

透き通る ガラスのちょこで 日本酒を 飲みあかしたら 朝焼みよう

 昨年のコラムでも紹介しましたが、平成11年に市制110周年を記念して、日本酒にまつわる短歌を募集したときの大賞受賞作です。若手作家のグラスと醸造文化のまち新屋、そして朝焼けのさわやかなイメージ。私には、これから生まれるこの工房のイメージとぴったり重なるように思えて、改めてこの歌を思い浮かべました。


「秋田のガラス・プロジェクト」でガラス細工に挑戦! 新たな工房の完成も楽しみ♪

*土崎・新屋のまちづくり拠点施設については、7ページに掲載しています。

“まちの顔”中心市街地の活性化

 土崎地区や新屋地区などのまちづくりを見ても、その土地が持つ文化や歴史、あるいはそこに暮らす人そのものが、まちの魅力になっているのだと改めて感じます。まちの魅力の再発見をめざすという意味では、芸術祭もその延長線上にありますし、中心市街地のまちづくりにおいても、それは同じことだと考えています。
 本市の中心市街地は、慶長9年(1604)に佐竹義宣(よしのぶ)が築城した久保田城とその城下町を基礎としており、およそ270年もの間、秋田藩における政治・経済・商業・文化・教育の中心地でした。その後も本市を牽引する中心拠点として発展してきた地区であり、いわば「まちの顔」です。
 中心市街地のまちづくりでは、こうした「まちの顔」として蓄積されてきた歴史や文化などを基礎としながら、新たなまちの魅力や価値を生み出していくことが大切だと考えています。こうした考えのもと、中心市街地のさらなる活性化と魅力向上への取り組みを計画的・効果的に進めるため、平成28年度内の国の認定をめざし、「第2期中心市街地活性化基本計画」の策定を進めているところです。

イベントなどのソフト面でも中心市街地活性化を盛り上げます!


今冬もイルミネーションが、秋田駅〜エリアなかいちの街並みを彩っています

にぎわい交流館では、ミュージカル「新 リキノスケ走る!」を絶賛上演中!

昨年6月に「食と芸能大祭典」を開催。広小路での竿燈演技は迫力満点でした

県・市連携文化施設と芸術文化ゾーン

 その核となる事業の一つが、県・市連携文化施設整備事業です。この施設は、全県をカバーする県民会館と、県都秋田市の文化会館の機能を継承するもので、県全体の文化振興と文化創造の中核として整備を進めています。
 県・市が協働で2つの施設を一つに集約することで、別々に整備するよりも、コンベンションなどでホールの一体的利用が可能になるほか、整備費の大幅な縮減が図られるなどメリットが大きく、少子高齢化や国・地方公共団体の厳しい財政状況などを踏まえると、我が国における今後のモデルになり得ると考えています。
 また、この施設整備にあたっては「芸術文化ゾーン」という考えを盛り込みました。「千秋公園をバックグラウンドとした魅力ある芸術文化の香り高い空間の創造」をめざすもので、中心市街地に文化施設を集積し、千秋美術館や県立美術館など既存施設との連携を図りながら、「ゾーン」として面的に充実させようというものです。
 こうした考え方のもとで、県・市連携文化施設を現在の県民会館所在地に整備することを前提に、旧県立美術館の利活用も検討しています。具体的には、文化団体・アーティストの創作活動や公開制作、交流の場とすることを想定しており、周辺の文化施設との役割分担を考えながら、整備について検討していきます。中心市街地を、市民が日常的に集い、活動し、暮らしの豊かさを実感できる場にしていきたいと考えています。

動き出した
民間による新しいまちづくり

 行政主体の事業に加えて、民間事業者が主体となった新たな動きもみられます。
 秋田駅西口では、JR東日本秋田支社の新築移転とその跡地へのABS秋田放送社屋の建設、商業ビルの全面リニューアルや駅舎の充実、秋田版「CCRC」などの計画が公表され、分譲マンションの建設も進められています。駅東口ではスポーツ整形クリニックの新たな開設計画もあります。
 このうち「CCRC」は、高齢者が健康なうちから居住し、継続的なケアや生活支援を受けられる共同体のことで、地元金融機関などが主体となり推進している事業です。最近、こうした複数の民間事業が動きだしたことは、さらなる中心市街地活性化に向けた大きな前進と捉えています。

*CCRC=「Continuing Care Retirement Community(継続的なケア付きの高齢者たちの共同体)」の略

5つの成長戦略を実行・実現!

 ご紹介してきた市の事業は、市政推進の基本方針である秋田市総合計画「新・県都『あきた』成長プラン」のもと、長期的視点に立って進めているものです。
 今年度スタートした総合計画では、人口減少対策を喫緊の最重要課題と位置づけ、こうした事業に加え、5つの成長戦略を設定して取り組んでいます。

【戦略1】
地域産業の振興と雇用の創出

 産業経済基盤の強化は、本市の将来を支える若者の定着にも寄与する要(かなめ)の施策です。非正規雇用の正規雇用転換を進める「アンダー35正社員化促進事業」では、申請が200人を超え、徐々に成果が表れてきているほか、意欲ある中小企業の支援や創業支援、企業誘致、6次産業化などの取り組みを通じ、やりがいのある仕事づくりと雇用の質の向上を図っていきます。
【戦略2】
芸術文化・スポーツ・観光による都市の魅力向上

 本市の魅力を、芸術文化・スポーツ・観光の視点から一体的につくり出し、国内外に発信することが必要と考えており、芸術祭の開催をはじめ、首都圏などからの修学旅行や、2019年のラグビーワールドカップキャンプ地の誘致など、交流人口の拡大を図っていきます。
【戦略3】
豊かな自然をいかした環境立市の確立

 十分な都市機能と豊かな自然環境をあわせ持つ本市の特徴や強みを踏まえ、新エネルギーや新たな環境関連技術を活用した地域活性化などに取り組んでいきます。

【戦略4】
子どもを生み育てやすい社会づくり

 少子化の背景には、未婚化・晩婚化・晩産化に加えて、子育てに対する不安感や負担感があると考えています。こうした課題を取り除くために、第2子保育料無償化や「秋田市版ネウボラ」をはじめ、出会い、結婚、出産、子育てと、ライフステージに合わせた施策を切れ目なく展開していきます。
【戦略5】
いきいきと暮らせる健康長寿社会づくり

 心豊かにいきいきと幸せに暮らすためには、健康寿命を延ばしていくことが重要です。また、高齢者が社会の支え手としての役割を担い、活躍できる社会の実現に向け、企業や市民、地域と連携し、エイジフレンドリーシティの実現に取り組んでいきます。

結びにー
未来のために 子どもたちのために

 私は今年、還暦を迎えます。人生の一つの節目にあたり、私たちが暮らすこの秋田市を元気にし、次の世代に引き継ぎたいという思いを新たにしています。
 とりわけ、未来の秋田市を支える子どもたちのために、今私ができることをしたいとの思いから、昨年11月、秋田市版“イクボス”宣言として「子育て応援リーダー宣言」をしました。
 “イクボス”は、部下のワーク・ライフ・バランスを考え、その一人ひとりのキャリアと人生を応援しながら、自らも仕事や生活を充実させる上司のことです。“イクボス”を全市で増やすために、経営者のみなさんに「秋田市イクボス企業同盟」の結成を働きかけていきたいと考えており、すでに具体的な反応もいただいています。
 未来のために、子育てを社会全体で支える気運を高めたい、そして、市民が希望に添った働き方ができる社会づくりに全力で取り組んでいきたい、そう考えています。

 新しい春を迎えるにあたり、いくつかの新たなまちづくりの萌芽をご紹介させていただきました。それではみなさん、本年もどうぞよろしくお願いいたします。



“イクボス”を宣言。率先して仕事と生活が両立できる環境づくりに努めます

*ワーク・ライフ・バランス=仕事と生活の調和


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