※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2017年7月7日号

市長コラム

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港から夢をのせて

市長 穂積 志(もとむ)


「土崎神明社祭の曳山行事」のユネスコ無形文化遺産登録の一報を受けて喜ぶ関係者のみなさん(昨年12月)
 先般、淡路島で開催された「北前船寄港地・日本遺産推進協議会」発足式に出席しました。関西国際空港からの船上、瀬戸内の小波が日差しに輝き、初夏を思わせる涼風を受けながら、久々に磯の香りを深く吸い込んだ気がしました。
 昨年の暮れに「土崎神明社祭の曳山行事」を含む「山・鉾・屋台行事」が、ユネスコ無形文化遺産に登録されたことに続き、このほど文化庁の日本遺産に、秋田市を含む7道県11市町にまたがる「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間〜北前船寄港地・船主集落〜」が認定されました。曳山行事や高清水公園の五輪塔、秋田街道絵巻、大正寺おけさなどが、地域の文化や歴史を物語っているとして認められたもので、観光資源としての魅力も秘めています。
 私が北前船のストーリーで特に心引かれるのは、時間や空間を超えてさまざまな方向に想像力がかき立てられることです。
 北前船が北海道の昆布を京都や大阪に運び、その上方で昆布だしを基本にした和食文化(平成25年にユネスコ無形文化遺産)が発展したことは広く知られていますが、今も土崎地区で昔ながらの手作業で行われている“おぼろ昆布”の加工にも北前船寄港地間の交流の物語があります。
 福井県敦賀市では、昆布の加工に使う包丁を「あきた」と言い、刃先を整えることを「あきたを入れる」と呼ぶことがあるそうです。こうした事象は、目には見えませんが、各寄港地での文化や歴史の共有という形で今も生活の中に溶け込んでいることがわかります。
 さらには、寄港地から舟運を介して河川を遡上し内陸部へと伝わっていることにも興味を覚えます。雄和地域の大正寺おけさは、熊本県の牛深ハイヤ節や新潟県の佐渡おけさなどとルーツが同じと言われています。土崎の港から雄物川を遡った船に一緒に節回しも乗り込んだのでしょう。船乗りたちのお国自慢、航海の厳しさや家族を思う心が共鳴し伝わったなどと考えるだけで楽しくなります。
 なお、8月に開催される大正寺おけさまつりに、私も毎年のように参加しますが、軽快な曲調は夏の疲れを癒してくれるように感じます。まつりには子どもたちをはじめ多くのみなさんが関わっており、地域をあげた文化継承への取り組みには頭が下がります。

北前船が運んだ文化「大正寺おけさ」。祭りは毎年8月第3日曜開催
 同じく秋田の夏を盛り上げる、土崎港曳山まつりも近づいてきました。どこからか聞こえてくる港ばやしの笛の音に、“港っ子”も気持ちが高ぶってきたことでしょう。これまで以上に、夢が膨らみそうな今年の港曳山まつりです。


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