※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2017年12月1日号

市長コラム

ニュージーランド松と秋田杉

市長 穂積 志(もとむ)

海外研修で現地の放牧場を視察している様子

 10月下旬、秋田県市町村職員海外研修団の団長として、オーストラリアとニュージーランドを訪問してきました。目的は農業や畜産業、林業、さらには観光や環境行政の事例調査などで、数年来、日程が確保できず参加できなかったものが今年ようやく叶ったものです。インターネット社会にあって、表面的な情報であれば瞬時に得られますが、実際に現地に足を運ぶことで、改めていろいろと考えさせられることがありました。今回はその中から、特に印象に残った「ニュージーランド松」の植林についてご紹介します。
 元々は米国カリフォルニア原産の苗木から植林し1世紀を経たもので、材質自体がしっかりしていて、建築用材や家具はもとより、紙・パルプの原料など、幅広く加工されています。そして何より優れている点は、成長が早く30年程で約30メートルの樹高になることです。30年周期で苗木を植え、育て、伐り、また植えてと、これを繰り返すことで、低コストで優良な木材資源の供給システムを確立し、地域の雇用・経済に大きく寄与してきたようです。
 不思議なものでこうした見聞を通して帰国後何を感じたかというと、かえって秋田杉の良さに気づいたことです。確かに秋田杉の成長には50年以上かかるとされ、手間ひまコストという経済的側面だけをみるとかないません。ただその分、年輪の幅が狭くきれいに揃っており、くるい、伸縮も小さく強度・耐久性にも優れています。そして何より木の断面の質感が細やかで美しく、また、杉特有の香りには本当に癒されます。元来日本の家屋は、柱や梁が木、畳が草、障子や襖が紙を材料としています。そう考えると木目の美しさや香りにぬくもりを感じ気持ちが落ち着くというのは、われわれ日本人のDNAに深く刻み込まれているとしても不思議はないように感じます。
 日頃あまり使わない自宅の日本間で執筆したり、秋田駅の待合ロビーや西口バスターミナルなどを歩いたりすると、秋田杉のよさが実感できます。戦後植林した秋田杉の伐採期にある今は、東京オリンピック・パラリンピックなどを見据え、国内外へのPRの大きなチャンスを迎えています。もとより森林は、地球温暖化防止や土砂災害防止、水源の涵養機能など多面的価値を有する資源であり、今回改めてその大切さを痛感しました。
 さて、季節は師走12月、今年もまもなく暮れていきますが、みなさんにとってこの1年はどのような年だったでしょうか。杉が1年1年、年輪を刻んでいくように、明年みなさんが刻む新たな年輪が、確かなそして幸せなものとなるように祈念しています。

秋田駅西口バスターミナル

*ニュージーランド松=ラジアータパインと呼ばれる松の一種

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