※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2018年1月5日号

新春市長コラム日々初心

築こう!次世代へのかけ橋を

〜歴史の節目を読み解きながら〜


秋田市長 穂積 志(もとむ)

明けましておめでとうございます
新年を迎え、いかがお過ごしでしょうか
本年も、みなさまにとって、穏やかで、
幸せな一年になることを
心からお祈り申し上げます

 今年の干支は「戌」(いぬ)です。秋田に住む私たちにとって、戌年と聞いてすぐに思い浮かぶのは秋田犬ですが、実は海外でも大人気。インターネットで「akita」と検索すると、表示される画像のほとんどがかわいい秋田犬たちで驚きます。海外では秋田犬は「akita」とも呼ばれ、忠犬ハチ公を題材にした映画が海外でヒットしたこともあると思いますが、素直で忠実な性格と、愛らしさと精悍さを合わせ持ったその美しさから、いまや秋田の代名詞になるほど有名になりました。
 本市を訪れる観光客の中には、秋田犬に会えると期待して来るかたもいらっしゃると思います。そんな期待に応えたいと考え、中心市街地に、秋田犬と気軽に触れあえる場所を作れないか思案をめぐらせているところです。平成29年度、秋田港へのクルーズ船の寄港は、28年度の10回から18回に増え、今年秋には、過去最大級の「MSCスプレンディダ」の寄港が決定するなど、今後も外国人観光客の増加が期待されます。秋田らしいおもてなしに、秋田犬が一役買ってくれたらと考えています。

市役所庁舎。昨年末、駐車場が全面完成しました

藤田嗣治(つぐはる)没後50年〜平野政吉と旧県立美術館

 秋田に縁の深い洋画家・藤田嗣治も、秋田犬に魅了された一人でした。猫を得意な画題とした藤田ですが、秋田県立美術館の大壁画「秋田の行事」では、かまくらと一緒に秋田犬を描いています。この大壁画は秋田市の資産家・平野家の米蔵で描かれましたが、絵を完成させて間もなく、平野から秋田犬を贈られたそうです。喜んで東京に連れて帰った藤田でしたが、実は程なく飼育を諦め、上野から秋田に列車で送り返します。
 そのときの秋田犬の無事を祈る平野に宛てた手紙に関する資料が見つかったと、少し前に新聞で取り上げられていました。藤田は明治19年の戌年生まれ。現代では気にするかたはいないと思いますが、戌年生まれの人が犬を飼うと良くない事が起こるという迷信を聞き、飼育を断念したとも言われているようです。
 その藤田が亡くなって今年でちょうど50年。その前年に開館したのが旧県立美術館(平野政吉美術館)です。長年の悲願だった藤田の作品を収めるための美術館の建設が決まり、報告のためパリ郊外の藤田を訪ねた平野を、藤田は「長い歳月だったね。本当におめでとう」と労い、心から祝福したそうです。そして、「美術館の屋根は、ランス礼拝堂のような採光の形式に」と希望を伝えたことから、屋根には特徴のある丸窓が並ぶことになりました。日本宮殿流れ屋根式と称される伝統的形式に、近代的感覚を加味した独特の建築は、当時の公共施設のスタイルを打ち破ったとも言われたそうです。
歴史ある建物には物語があります。旧県立美術館の建物には、藤田と平野の固い絆と強烈な個性のぶつかり合いの記憶が残っています。それは建物や空間が持つ力であり、簡単に失ってはならない先人の遺産なのだと気付かせてくれます。
そうした思いもあり、昨年の市長選挙では「県・市連携文化施設、旧県立美術館を活用した芸術文化ゾーンの整備」を公約に掲げたところであり、現在、芸術文化ゾーンの核の一つとして、旧県立美術館の建物を活かすための検討を進めています。
 同じく核となる県・市連携文化施設との役割分担のもと、市民のみなさんの文化創造や活動・交流の場となる「芸術文化交流機能」と、市のシンボルである千秋公園とのつながりを活かし、旧城下町の歴史案内などを行う「歴史文化交流機能」を基本に、ワークショップなども開催して、広くみなさんのご意見を聞きながら、利活用の具体的なアイデアをまとめているところです。

丸窓が印象的な旧県立美術館

100年前〜並ぶことのなかった2つの洋館

 県・市連携文化施設の建設予定地である県民会館の敷地には、かつて、重厚、壮麗な文化の殿堂・秋田県公会堂があり、その南側に隣接するように、東京駅の設計で有名な建築家・辰野金吾による秋田県記念館の建設が進められていました。美しいルネッサンス様式の洋風建築が2つ並ぶはずでしたが、大正7年4月、公会堂は失火により惜しくも焼失。わずか半年後の10月に竣工した記念館との共演は実現しませんでした。今からちょうど100年前の出来事です。
 こうした過去の出来事を思うと、旧県立美術館のような歴史を重ねた建物を遺すチャンスがあること自体、恵まれていることなのだと感じます。建設当時の役割を果たし終えた建物に、新たな役割を与え、新たな価値を生み出す。私たちの意思で活用することで保存されていくことに、これからのまちづくりのあり方にもつながる大きな意義があると考えています。

秋田県公会堂(「秋田市制100周年記念版 写真集あきた」より)

150年の時を超えて

 さらに歴史をさかのぼり、今から150年前。戊辰戦争のときの秋田での出来事が縁となった交流が今も続いています。
 新屋日吉町の高台の一角にある「葉隠墓苑」。1868年、庄内藩と戦った倒幕側の秋田藩の援軍として、遠く九州から参戦し、秋田の地で命を落とした佐賀藩士を弔い、当時の新屋の人たちがお墓を建てたのが始まりです。
 それから約120年後の昭和61年、そのときの佐賀藩士3人のお墓が、区画整理事業の中で偶然見つかり、地元の日の出町町内会をはじめとするみなさんらが、佐賀藩士の恩に報いるために、お墓を守っていくことにしました。昭和63年には、慰霊碑が建立され、平成6年からは毎年慰霊祭を開催し、佐賀県武雄市のご遺族を秋田市に招待するなど、交流が深まっています。
 こうした歴史的なつながりを背景に、今も両市の市民が互いに感謝と尊敬の念を持ち、市民主体の交流が続いていることは大変意義深いものです。昨年は、武雄市の小松 政市長を竿燈まつりにお迎えし、葉隠墓苑をお参りしていただきました。折しも、今年は武雄市の新庁舎も開庁すると聞いており、150年の節目を記念して、武雄市に竿燈と市民交流団を派遣したいと考えているところです。

葉隠墓苑

今年も市政を着実に前へ!


3期目当選後の初登庁の様子

 市長3期目の任期がスタートしてから、早くも8か月が経過しました。市長選では、
◆産業の育成・支援と雇用の創出
◆子どもを生み育てやすい環境づくり
◆高齢者に優しいエイジフレンドリーシティの実現
◆芸術・文化・スポーツによるまちづくり
◆地球温暖化対策の推進
◆安全・安心なまちづくり
◆市民協働と人づくり
◆行財政改革・市民サービスの向上
という8項目と36プランからなる公約を掲げました。
 このうち、高齢者の社会参加と生きがいづくりを支援するために実施している高齢者コインバス事業は、昨年10月、対象年齢を満68歳以上から満65歳以上に拡大しました。現在、5万人を超えるかたにご利用いただいており、今後も、こうした取り組みを推進しながら、高齢者が住み慣れた地域で元気に活躍し続けることができる健康長寿のまちづくりを進め、エイジフレンドリーシティ(高齢者にやさしい都市)の実現をめざしてまいります。
一方、人口減少が進む中、若い世代が結婚し、子どもを生み育てていくためには、安定した質の高い雇用が重要になります。そのため、非正規雇用者を正規雇用に転換した市内企業を支援する「アンダー35正社員化促進事業」の対象を、これまでの満35歳未満から40歳未満まで拡大することを検討しています。
 また昨年、秋田の教育水準の高さを含む立地環境が評価され、大手自動車部品メーカーがソフトウェアの開発拠点を秋田市に開設しました。地域の活力を高めるため、こうした企業誘致などを通じた産業経済基盤の強化にもしっかりと取り組んでまいります。
 最後に子育て支援についてです。市長就任当時、年度当初の待機児童が約150人いましたが、保育所の新増設や運営への補助などを集中的に行った結果、平成23年度から7年連続で年度当初の待機児童ゼロを継続中です。ほかにも保育士人材バンクの創設など、保育士不足の解消にも取り組んでいるところです。
 さらに、平成28年度からスタートした第2子以降の保育料無償化について、来年度から、対象を第1子まで拡大したいと考えており、子育てにかかる経済的負担の軽減も図りながら、次代を担う子どもたちを、社会全体で育てていくことができる環境づくりを進めてまいります。

 引き続き、「ともにつくり ともに生きる 人・まち・くらし」の基本理念のもと、公約の実現を図り、元気な秋田市を「次世代に、つなぐ」ため、市勢発展に向けた歩みを「さらに、前へ」と進めてまいりたいと考えています。みなさま、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

写真で振り返る平成29年



2月10日、市職員幹部による「子育て応援リーダー宣言〜秋田市版イクボス宣言」の合同宣言式を行いました

5月1日、「北前船寄港地・船主集落」の日本遺産認定祝賀看板の除幕式で。北前船に縁ある全国11市町が申請しました


7月15日、新屋ガラス工房がオープン。「ものづくり、ひとづくり、まちづくりの創造拠点」となることをめざします

7月の豪雨被害が市民生活に深刻な影響を与えました。市では、各種相談窓口の設置など、迅速な対応に努めました


8月上旬、国内外の姉妹都市などから学生を招き、「秋田市友好・姉妹都市青少年会議」を開催しました

“秋田からつながれ! つらなれ!長寿の輪”
9月の「ねんりんピック秋田2017」で、全国のみなさんとの絆が深まりました


復元整備工事を終えた、「国指定名勝 旧秋田藩主佐竹氏別邸(如斯亭)庭園」が、10月21日に開園しました

サッカー・ブラウブリッツ秋田が、J3念願の初優勝! 安定したチーム力、そして何よりサポーターの力があってこそ! みんなで勝ち取った優勝です!(写真は12月14日、市長への報告会で)

2018年もこの勢いで!



©2018秋田県秋田市(Akita City , Akita , Japan)
All Rights Reserved.
webmaster@city.akita.akita.jp