乳虎
平福穂庵 1844(弘化01)- 1890(明治23)
カテゴリー | 日本画 |
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制作年 | 1890(明治23) |
技法・材質 | 絹本墨画淡彩 |
寸法(cm) | H72.0×W154.5 |
受入年度 | 昭55年度購入 |
平福穂庵は明治前期に多くの展覧会で活躍し、荒木寛畝、橋本雅邦らとならぶ東京画壇の十大家としてその実力を認められた作家である。
従来、この作品は東京の日比谷公園での写生をもとに、秋田に帰郷後描かれたとされてきた。実際には穂庵が上京した明治19年から20年にかけて都内を巡業していたイタリア人チャリネによるサーカス団の虎がモデルになったものと考えらえる。当時の新聞記事にはチャリネが連れてきた3頭の虎のうち1頭が3頭の子虎を産み、その珍しさから当時の人々へも公開されたようである。母虎はどっしりと重量感と毛並みの柔らかさがあり、眼光鋭く周囲を警戒する表情は真に迫っている。対照的に親にまとわりつく子虎が柔軟で軽快な動きを感じさせ、親子の愛情を伝える。四条派の伝統と近代的な写実の精神が融合した、みずみずしい作品である。