○秋田市未来を築く子どもを育むための市民や社会の役割に関する条例
平成18年3月24日
条例第33号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 子どもにとって大切なこと(第4条―第9条)
第3章 それぞれの役割(第10条―第13条)
第4章 市の責務(第14条)
第5章 基本となる政策(第15条・第16条)
第6章 推進体制(第17条)
第7章 雑則(第18条)
附則
子どもは社会の宝であり、希望です。一人ひとりが、さまざまな個性や能力や夢をもったかけがえのない存在です。子どもが一人の人間として尊重され、社会の一員として重んじられながら、自らの可能性を伸ばし、未来に向かって健やかに育っていくことができる社会であることは、時代を超えた市民すべての願いです。
いじめ、体罰、児童虐待や子どもが当事者となる事件の多発、そして、不登校の増加傾向などに加え、核家族化、少子化、さらには都市化の進行や有害情報のはん濫など、時代や社会の進展の中で、子どもを取り巻く環境は、ますます厳しく、複雑になってきています。
すべての子どもが、生き生きと輝き、伸びやかに、たくましく育っていける、そして、子どもが、自分を大切にするなかで、他者をも大切にし、お互いを尊重し合える力をつけていくことができる環境をつくっていくことは、大人や社会の役割であり、また、責任でもあります。
そのためには、市民一人ひとりが、子どもに対してどのような人間になってほしいかというそれぞれの願いをもって、子どもの育成に主体的にかかわり、何をなすべきかを共に考え、話し合い、共通の認識をもつことが望まれます。家庭、学校等、地域や職場をはじめ、その全体にかかわる市には、それぞれの役割や責任を再確認し、相互の連携と協力や全体としての協働による取組が求められます。
すべての子どもが健やかに育まれ、そして、秋田市民一人ひとりが未来を築く子どもの育成に誇りと喜びを感じることができる社会の実現を図るため、この条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、子どもの育成について、基本理念を定め、家庭、学校等、地域および職場の役割ならびに市の責務を明らかにするとともに、市の基本となる政策等を定めることにより、未来を築くすべての子どもが健やかに育まれ、かつ、市民一人ひとりが子どもの育成に誇りと喜びを感じることができる社会の実現を図ることを目的とします。
(定義)
第2条 この条例において「子ども」とは、18歳未満の者をいいます。
(基本理念)
第3条 子どもの育成における基本理念は、次に掲げる事項とします。
(1) 子どもの人格および子どもが権利の主体であることを尊重すること。
(2) 子どもに関心を寄せ、温かく見守り、向き合うほか、子どもとの信頼関係の構築に配慮するとともに、子どもとの日常的な触れ合いを大切にすること。
(3) 家庭、学校等、地域、職場および市は、子どもの育成におけるそれぞれの役割又は責務に応じた自主的かつ主体的な取組を図るとともに、相互の連携および全体としての協働を図ること。
第2章 子どもにとって大切なこと
(子どもの個の尊重)
第4条 市と市民は、子どもが一人の人間としてその人格や個性が尊重されるとともに、子ども自身においても、自己を大切にするとともに他者をも尊ぶことの大切さを学び、自覚できる社会環境づくりに努めます。
(子どもの意見表明)
第5条 市と市民は、子どもが、自分で思ったこと、考えたこと、感じたことを素直に、かつ、自由に表現するとともに、意見および希望として表明することができるよう、子どもの年齢および成長を相応に考慮しつつ、必要な支援に努めます。
(子どもの参加)
第6条 市と市民は、子どもの自主性および主体性を大切にしながら、社会参加などの促進が図られるよう必要な支援に努めます。
(子どもの場の確保)
第7条 市と市民は、子どもが遊び、学び、集うことができる場とともに、心の居場所が確保されるよう必要な支援に努めます。
(子どもの心身の健康)
第8条 市と市民は、子どもが心身ともに健やかに、かつ、たくましく成長することができるよう必要な支援に努めます。
(子どもの安全確保)
第9条 市と市民は、子どもを犯罪、交通事故、いじめ、児童虐待等の被害および子どもを取り巻く有害な環境から守る活動等の推進により、子どもが健やかに成長することができる安全で良好な環境づくりに努めます。
第3章 それぞれの役割
(家庭の役割)
第10条 家庭は、子どもにとって最も身近で、最も小さな社会的単位としての成長の原点であるという認識の下、子どもの育成について、次の役割を果たすよう努めます。
(1) 家族は、互いのきずな、愛情および触れ合いを大切にしながら、子どもの心身のよりどころとしての家庭環境づくりを図ること。
(2) 保護者は、子どもと共に育ち合う中で、子どもが、自ら学び、自ら考え、自らを変えていく力など、育つ力を蓄え、発揮していくことができるよう図ること。
(3) 保護者は、子どもと共に語り、考え、行動しながら、子どもが基本的な生活習慣や社会のきまりを身に付けていくことができるよう図ること。
(学校等の役割)
第11条 学校等は、それぞれの設置目的、理念等に基づき、子どもの育成における重要な社会的使命を担うことを認識し、次の役割を果たすよう努めます。
(1) 子どもが集団の中で可能性を開花させていくために必要な、豊かな人間性および社会性をはじめ、自ら課題をみつけ、自ら考え、自ら解決していく力や基礎学力など、生きる力を、子どもの心身の発達段階に応じて育んでいくこと。
(2) 子どもの発達段階に応じた、喜び学ぶ場、遊ぶ学びの場および生きる学びの場としての環境づくりを図ること。
(地域の役割)
第12条 地域の住民および地域の関係団体は、地域が子どもの社会性および豊かな人間性を育む場であることを認識し、子どもの育成について、次の役割を果たすよう努めます。
(1) 相互に連携し、又は協力し、地域社会全体で子どもの育成が図られるための環境づくりを進めること。
(2) 子どもが文化、スポーツ、自然環境等を学び、地域行事など社会性を育むことができる体験をする機会を提供するなど、子どもが地域社会の一員として、自主的かつ主体的に活動できるための必要な支援を行うこと。
(職場の役割)
第13条 職場は、事業活動およびその社会的機能を通じて、子どもの育成に貢献すべき社会的使命を帯びていることを認識し、子どもの育成について、次の役割を果たすよう努めます。
(1) 事業主および従業員の連携および協力の下、保護者が安心して仕事に就きながら、その子どもの健全な育成にかかわっていくことができるための職場環境づくりを図ること。
(2) 家庭、学校等、地域および市が行う職場体験活動などの子どもの社会性を育む活動に協力すること。
第4章 市の責務
(市の責務)
第14条 市は、子どもの育成について、次の責務を果たします。
(1) 子どもの育成にかかわる政策を総合的かつ計画的に実施すること。
(2) 家庭、学校等、地域および職場における子どもの育成に関する取組について、必要な支援を行うとともに、これらの相互の連携および協力による活動の促進に資する調整および支援を行うこと。
(3) 子どもの育成についての政策の実施に当たっては、市民の理解、協力および参加が得られるよう努めること。
(4) 子どもの視点および意見を反映させた施策の推進に努めること。
(5) この条例の目指すところや内容について、市民に分かりやすく広めるなど、周知、啓蒙および啓発に努めること。
第5章 基本となる政策
(推進計画)
第15条 市は、子どもの育成について、その政策を計画的に進めていくための基本となる計画(以下「推進計画」といいます。)をつくります。
2 市は、推進計画を策定するときは、この条例の趣旨に基づき、市民から意見等を求め、その反映に努めます。
3 市は、推進計画を策定したときは、分かりやすく公表します。
(評価)
第16条 市は、推進計画に基づいて行った事業等の結果について評価します。
2 市は、前項の評価について、分かりやすく、速やかに公表します。
第6章 推進体制
(推進体制)
第17条 市は、子どもの育成についての政策を総合的かつ計画的に進めるため、総合的な推進体制を整備します。
第7章 雑則
(委任)
第18条 この条例の施行に関し必要な事項は、別に定めます。
附則
この条例は、平成18年5月5日から施行します。