2003年11月14日号

市長ほっとコラム

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虚構の上の豊かさ

市長●佐竹敬久

 今月は、何やら難しい表題になってしまいましたが、市民の皆様に現実を直視していただくためにと、今回はあえて書くことにします。
 政治の目標は「豊かさ」の追求であることが当然のこととされていますが、心は別として、物の豊かさは永遠に追求できるものでしょうか。
 国や自治体の借金し過ぎによる財政悪化の責任は政治や行政の側にあることは否定しませんが、国民の側も豊かさの原資は無限にあると錯覚してきた面がありますし、例え原資が有限だと理解していても、要望という形で声を大きくすることで、それぞれ他より自分のところに、より大きな豊かさを引き込むことを当然の行為としてきたきらいがあります。
 豊かさの原資は有限で、どんなに優れた政治家も豊かさの原資を無限にできるものではないことは歴史が証明しています。
 市にも毎日のように市民からの様々な施設整備の要望や補助金の増額要望などがあり、私たちも必要度や状況を見ながらできるだけ実現するように努力はしています。
 しかし、例えばある施設の使用料が無料あるいは管理費に満たないほど安いということは、この施設を使用しない多くの市民の税が投入されるということに他ならず、本来は極めて不公平なことであると言えます。
 今、市町村合併の流れの中で、自主独立で合併を選択しない市町村もあるようですが、県内六十九市町村の中で、税収よりもそこの職員給与費のほうが上回っているところが五十六(平成十三年度)もあり、税収だけでは四分の一の職員にしか給与を払えない計算になるところもあります。
 その差額は、東京など大都市の住民から国を経由して交付税という形でもらっていることになります。
 これが一概に悪いこととは言えませんが、その現実は認識すべきですし、住民に知ってもらうべきです。
 ちなみに本市の場合、十三年度の一般会計約一千百億円のうち、給与費は約二百二十億円で、市税収入四百三十億円の約半分の割合ですが、残りの約六百億円は、国からの交付税・補助や市債などに頼っている勘定になります。
 国民も自治体も少し慎ましやかになり、自らの要求は実は他人の痛みの裏返しに過ぎない、さらには物や形のある豊かさは、結局は後世への大きな「つけ」になることを今少し認識すべき時ではないかと思います。
 今の豊かさの相当部分は、実は虚構の上にあることを皆が認識した時、日本の新しい時代が始まるような気がします。

心の豊かさの追求は無限ですが…


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