2006年8月1日号

市長ほっとコラム

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理数離れ! 大丈夫か、日本

 先日の地元新聞のコラムに大学受験生の「工学部離れ」、言い換えれば若者の理数離れを憂慮する県内大学の先生のお話が載っていました。
 私自身、今は工学とは距離のある立場におりますが、エンジニアを夢見て機械工学を学んだ者の一人として同じような思いでおりました。 
 よく、「難しい数学や物理・化学を学んで、実社会で何の役にたつの?」という人がいます。    
 確かに、日常の社会生活の中では難しい微分・積分やサイン・コサインなど三角関数を使う場面はありませんし、ましてや複雑な物理・化学の法則を知っていなければ困るというものではありません。しかし実際には自動車やテレビ、住宅、薬など、およそ身の回りの大半のものが高等数学や難解な物理学、化学などの法則を駆使して開発され形作られたものですし、毎日、気象予報や金融取引など高度な理数的知識を集約したシステムの恩恵に浴しています。 
 資源に乏しい日本は、これまで海外から原材料を輸入し、高度な技術を駆使し高付加価値の工業製品を製造する加工貿易国、いわば「ものづくり」を立国の中心に据えて発展を遂げてきました。この基本は今日でも変わるものではありませんし、発展途上国が技術者教育に力を注ぎ、そこの若者が猛然と勉学に励んでいる状況を見れば、むしろ日本の将来を背負う若者にこそ、我が国の技術基盤を一層向上させるため、これまで以上に理数系統の力をつけてもらわなければならないのが現実です。
 高等数学や難解な物理・化学などの教科は、丸暗記や一夜漬けはできず、コツコツと粘り強い勉強が必要ですし、また面倒な実験・実習が欠かせず、万事に簡便とスピードを求める今の若者の思考パターンには嫌われがちな地味な学問ではあります。
 また日本の社会では、どちらかといえば、技術者は「技術屋」などと称され、経済社会の道具のように扱われる場面も多く残っています。しかし、日本の技術競争力の弱体化が、ただちに日本の衰退につながることは間違いありません。
 このような中で、今の日本に必要な若者は、一獲千金を夢見る時代感覚に優れたとか、アイデアマンだとかという部類ではなく、地味で目立たず格好悪くとも、コツコツと勉強し、粘り強く難問に取り組む若者であるような気がします。
 地球が地球である限りにおいて、時代がどんなに進んでも、理数分野の法則、定理、公式は決して変わるものではありません。

粘り強い実験の繰り返しが、いつか…
(秋田大学工学資源学部で)



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