2009年1月2日号

新春 市長ほっとコラム

節目の年。
希望の光を求めて


秋田市長
佐竹 敬久

秋田市制120周年記念市民企画イベント市民検討委員会のみなさんと

 市民の皆様、あけましておめでとうございます。
 平成21年丑年を迎え、それぞれにご家族やご親戚、久しぶりに郷里に帰ってきた友人などと、あたたかい時間をお過ごしのことと思います。
 昨年は、私たちの生活が経済面を中心に国内外の出来事に大きく左右された年でした。今年は、願わくば厳しいながらも行く先に希望の光を見出すことができるよう、気持ちを新たに「ふるさと秋田づくり」のため頑張ってまいります。


金融危機の後に

 昨年9月、米国で150年の歴史を有する投資銀行「リーマンブラザーズ」が破たんして以降、世界経済は一気に混乱の渦に巻き込まれ、わが国でも企業倒産や雇用解雇、就職内定取り消しが相次ぐなど、国民生活は深刻な影響を受けています。国民生活の安定のためにも、一刻も早い経済・生活両面での強力な対策が必要であり、今こそ、国・地方ともども国家の危機的状況という認識に立った政治の強力なリーダーシップを必要としています。
 今回の危機は、一方で、米国を中心に拡大してきた弱肉強食の競争至上主義、行き過ぎた金融資本主義の終焉であり、格差の拡大を招いた市場原理一辺倒の極端な構造改革路線と決別する転換点とも捉えられています。私も、近年のわが国については、何か大切なものが置き去りにされたまま、向かう方向を見失っていたように感じています。何もかも米国にならう必要はなく、日本には固有の美点がたくさんあります。人の和を重んじ、弱いものに手を差しのべ、そして、四季の微妙な移ろいにも美を見出す繊細な心などは、世界に誇り得る民族の特質ではないでしょうか。
 今回の状況を契機として、地方の中小企業や家計、勤労者など、今まであまり光が当たらなかった分野に光を当てる方向に、社会経済全体が揺り戻され、美しい自然の中で人々が支え、助け合い、笑顔で日々を送れる、本当の意味での豊かな日本へ向かっていきたいと思います。

笑顔で毎日を過ごせるように(草生津川の桜並木)

市制120周年の節目を明日の活力に

 今年は、1889(明治22)年の秋田市制施行から、120周年の記念すべき節目の年にあたります。
 市では、第11次秋田市総合計画で重点政策として取り組んでいる「絆」をメインテーマに、心に残るさまざまなイベントを開催する予定です。できるだけ多くの市民にご参加いただき、個々のつながりや地域の絆を深め、一人ひとりの精神的な豊かさや市全体の活力に結びつけたいと考えています。
 おもな構成は、@7月12日、市の記念日に開催する120周年記念式典および記念行事、A次代を担う若者たちが企画・運営する市民企画イベント、Bドイツ・パッサウ市との姉妹都市提携25周年に合わせた公式訪問団や市民交流団の編成、そしてC市民のお祝いの気運をより高めるための関連事業の4つとなります。
 関連事業としては、5月の西部市民サービスセンターのオープニングセレモニー、10月の秋田県種苗交換会、さらには市民のスポーツイベントや地域で行われる祭りなど、年間を通じた事業展開を予定しています。こうした一連の記念行事をとおして、多くの市民が触れあい、ともに120周年を祝うことにより、本市の歴史に新たな1ページを刻みたいと考えています。

西部市民サービスセンターの愛称は“ウェスター”。
工事も着々と進んでいます(昨年12月)

都市内地域分権が西部から始動

 120周年という記念すべき年に、秋田市がめざしてきた都市内地域分権が、いよいよ本格的に始動します。秋田市は、平成17年の市町合併以降、約2倍の面積に拡大した市域を念頭に、市内各地域の個性を大切にしながら、行政サービスを身近な場所で行い、地域に密着したまちづくりを展開する都市内地域分権をめざしてきました。
 その拠点施設の第1号となる西部市民サービスセンターが、5月にオープンします。地域のみなさんのニーズに沿ったものとするため、計画当初から、ワークショップなどを通じ、地域のみなさんと二人三脚で検討を進めてきました。この度、複合的機能を有する施設が、市民協働の成果として立ち上げられることは、私としても大変誇らしいことですし、地域のみなさんも喜ばれていることと思います。
 西部市民サービスセンターには、道路・公園の補修や、地域活性化につながる事業・取り組みを支援するための権限と予算を委譲し、地域のみなさんとの連携のもと、地域の実情に沿った事業を実施できるようにしたいと考えています。もちろん予算には限りがあり、すべてを実施するということにはならないものですが、地域のみなさんには、日ごろ感じておられる課題を、センターと連携しながら地域で解決していく提案をしていただくよう期待しています。
 こうした地域住民の発意と参加による新たな地域づくり活動が、都市内地域分権の推進、さらには住民自治の充実につながり、今年着工の北部市民サービスセンターなど順次整備される他地域のサービスセンターを拠点に、今後、市内全域に広がっていってほしいと考えています。

地方分権…住民に目を向け、地域の実情にあった行政を可能にすること


地方分権時代が到来。地域資源を未来の力に

 地方分権時代が到来しようとしています。
 地方分権とは、国が中心となって決めた法律など、全国一律のルールに沿って、秋田市や秋田県などの地方自治体が仕事をしてきた中央集権型の行政を改め、土地利用や福祉、保健、教育など、幅広い分野に関する権限や税財源を国から地方へ移し、より住民に身近なところで、住民に目を向けた、地域の実情に合った行政を可能にすることです。
 地方分権が実現し、自由度が高まるということは、各地域の取り組みの差や、地域資源の有効活用の度合いが、そのまま地域の将来の姿や市民生活のレベルに反映されるということです。
 現在、秋田市は、第11次総合計画において、自立的な発展と豊かで安全・安心な市民生活の礎となる産業経済の振興を重点政策とし、工業や電子、輸送機、資源リサイクル、医療関連業種を中心に、新規企業立地や既存企業の設備投資の促進をはかるとともに、コンパクトシティ構想の理念に基づき、賑わいのある街の再生に力を注いでいます。
 特に、本市を含め、秋田県には非鉄金属精錬業などの資源リサイクル関連産業や先進技術が集積しており、そのレベルは世界の最先端であると思います。近年、ゴミとして捨てられる家電製品などに含まれる非鉄金属が「都市鉱山」とも呼ばれる有用な資源として注目されています。秋田市としては、今後も企業集積を促進するとともに、国への制度創設の働きかけなどを通じ、資源リサイクル関連産業を後押ししていくことが重要と考えています。
 その一方で、地域資源を有効活用し、未来の力としていくための取り組みもまた重要です。幸いにして秋田市は、平成17年の合併を経て、豊かな山林や農地、良好な環境など、多様な地域資源を得ることができました。
 これらの地域資源を十分に活用し、未来への夢を持ちながら「食料自給率の向上」や「地球温暖化対策」など、可能性を秘める分野での取り組みを進めていく必要があります。
 また、長年課題になっていた広小路、大町地区など中心市街地の活性化については、昨年、千秋公園など貴重な市民資産を活かした中心市街地活性化基本計画が国の承認を受け、国の重点支援を受けることができるようになりました。これにより、市、県、地元商業者などの協調による日赤・婦人会館跡地など中通一丁目地区の再開発事業がいよいよスタートし、3年後には装い新たな街に生まれ変わることになります。


賑わいある街をめざして!
中心市街地活性化基本計画がいよいよ本格化します

日本の食料を支える一大生産地をめざす

 食品偽装をはじめとするさまざまな問題発覚により、食の安全性が重要視されている中で、世界の人口増加や、とうもろこしなど穀物のバイオ燃料への転換、気候変動などによる、国際規模の食料危機が顕在化しています。
 私たち日本の食料自給率は、昭和40年の73lから、今では40lにまで落ち込んでおり、このままでは、近い将来、食卓が米と芋と漬け物だけになりかねない状況です。
 国も10年後の食料自給率50lをめざし、国民的運動を進めようとしていますが、農業を取り巻く環境は、高齢化や後継者不足などによる生産者の減少、耕作放棄地の増加、安価な輸入食材との競争など、非常に厳しいものとなっています。
 本市でも、今後、地域内自給率を高めるために地産地消の推進をはじめ、さまざまな取り組みを検討していきますが、将来に向けて、耕作放棄地となっている農地の有効活用や、安全・安心の視点からも地域の消費者が生産者を支える仕組みづくりなどにも取り組んでいく必要があると思います。
 戦後の工業化社会の中で、退潮を続けた農業の復活をめざすことは、簡単なことではありませんが、地方分権時代において、国の補助金だけに頼らない秋田市型の農業が、周辺地域を巻き込みながら、わが国の食料自給を支える一大生産地として発展できる日を夢見て取り組んでいこうと思います。


世界の環境経済都市へ

 地球温暖化が、地球に壊滅的な影響を与えるまで、残された時間は約40年とも言われています。その影響は、気温の上昇だけでなく、それに起因する異常気象の増加、海面上昇、水不足、食料生産の減少、生態系の崩壊など、生活を取り巻く広範な分野に及ぶとされています。
 先進国の中でも取り組みが遅れているとされたわが国も、京都議定書に定められた温室効果ガスの6l削減をめざし、企業が参加する排出権取引の試行に向けて動き出しました。
 また、地方自治体にも、排出抑制のための実行計画策定が義務づけられ、今後は全国で独自の取り組みが検討されることになると思います。
 もちろん、本市も計画を策定しますが、その中で私は、取り組んだ成果が目に見える、市民のみなさんが参加したくなる温暖化対策の仕組みづくりが重要だと思います。
 世界各国の指導者たちは、地球温暖化防止に資する環境対策を、地球を破滅から救い、世界経済を不況から脱出させる新たな経済の牽引役ともなる成長分野と見ています。
 本市でも、市民のみなさんが進んで取り組める地球温暖化対策のモデルのほか、新たな雇用を生み出す可能性などを世界の事例も含めて研究し、将来、「世界の環境経済都市・秋田市」と呼ばれることを思い描きながら前進していきます。


絆、大切に


写真上:祖父母学級(岩見三内小)
写真右下:絆づくりツアー
写真左下:きしゃぽっぽ(南部公民館)

見つめてみたいもの、語り合いたいこと

 さて、秋田市が今年取り組んでいくテーマについてお話ししてきましたが、どれをとっても地域における人と人のつながりや支えあいなど、「絆」を欠いては、決してうまく進められないものばかりです。
 本市の第11次総合計画の基本構想の中に「今、見つめてみたいもの、語りあいたいこと」というタイトルで、絆づくりの考え方を示しています。一節を紹介しますと、
「社会は家族を基礎として成り立っています。一人ひとりをしあわせにする家族が結びついて、地域の絆となり、産業振興における提携、環境活動での協調、地域防災のための連帯、誇れる文化や歴史の継承など、各分野で形を変えて、市民全体のしあわせをはぐくんでいます」。

 今、秋田市では、悩みながらも一生懸命「家族・地域の絆づくり」に取り組んでいます。その「絆づくり」にとって最も重要なのは、市民のみなさん一人ひとりが、家族をはじめ、自分を支えてくれる「絆」を今一度見つめ直し、その大切さに気がつくことだと私は思います。
 家族や親戚、友人が集まるお正月です。このような時こそ個々別々の部屋で過ごすのではなく、皆が居間に集まり談笑することも意味のあることではないでしょうか。燃料費の節約を通じたエコライフという高尚な理念にもつながります。
 みかんの皮をむきながらもよし、おいしい郷土料理を味わい、杯を傾けながらもよし、身近な人とともに「絆」についてじっくりと考えてみませんか。



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