※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2010年1月1日号

新春市長コラム・日々初心

夢と希望の年。
夢と希望の都市へ


秋田市長 穂積 志




 市民の皆さま、あけましておめでとうございます。
 平成22年のお正月をいかがお過ごしでしょうか。私は、市長となって初めての正月を家族とともに迎えたところです。「一年の計は元旦にあり」といわれるように、本年が本市にとって有意義な一年となりますよう、全力で取り組む覚悟をしております。
 さて、2010年は大きな国際大会が目白押しの年です。2月に始まるバンクーバー冬季五輪を皮切りに、5月には上海万博、6月にはサッカーのワールドカップ南アフリカ大会が開催されます。いずれも日本を世界にアピールする絶好の機会であり、いやが上にもムードは盛り上がります。本市も、大きな夢に向かってトライする、希望を抱かせる一年であり続けたいと願っています。

大転換のとき

 昨年4月の市長選で私は、「大転換のとき、希望を持て、覚悟を決めよ」というキャッチフレーズを掲げました。
 私が訴えた大転換とは、政権交代のような出来事をとらえたものではありません。政権交代を導いた、国民の期待という大きなうねりを生み出したエネルギーのことであり、“時代の要請”とでもいうべきものです。
 時代が大転換を要請しているということは、あるべき姿と現状との間の「ずれ」が拡大してしまい、その歪みを正そうとしているということです。あるべき姿とは、言い換えれば「標準」となりますが、それは決して不変のものではなく、時代や環境とともに変化していきます。
 今、わが国はグローバル化とその反動、少子高齢化と人口減少による社会の地殻変動に直面しています。明治維新や終戦ほどのインパクトはないと思われるかもしれませんが、それらに匹敵するほどの大転換期を迎えているといえるのです。
 現在の「ずれ」を解消するためには、以前成功した考え方や方法にこだわり続けるのではなく、現在の「標準」に適応した社会を再構築し、自己変革を遂げなければなりません。

いつまでも元気!(外旭川のふれあいサロン・さくら会)

高齢者とともにつくる高齢者にやさしい社会

 かつて、高齢者は相対的な意味で社会を構成する少数者でしたので、社会から支えられる側とされてきた面がありました。
 しかし、本格的な高齢社会を迎えた今、本市においても高齢化率が20%を超え、10年後には30%を超えそうな状況においては、高齢者はもはや単純に支えられるべき少数者ではありません。高齢者を抜きにして社会は成り立たないのです。
 近年、「ユニバーサルデザイン」という考え方が広まりました。できるだけ多くの人が利用できるよう、はじめからデザインすることです。このように、はじめから高齢者を意識することが現在の「標準」となってきています。
 そこで私が着目したのが、高齢者にやさしいまちかどうかをさまざまな視点から点検し、生活の利便性の向上をめざす「エイジフレンドリーシティ構想」です。今年まずは点検を行い、そこで明らかとなる課題の解決に取り組んでいきたいと考えています。
 今の高齢者はとてもお元気です。地域の自治活動や福祉活動に積極的に参加されています。高齢者が一人ひとりの状態に応じて社会から必要な支えを受けながら、社会を支える側としても活躍できるよう、高齢者とともにつくる高齢者にやさしい社会をめざします。

持続可能な社会づくり

 本市の人口は今後10年くらいで30万人を割り込み、その後もだんだん減っていく見込みです。都市経営や市民生活への影響を考慮すると、人口減少を抑える取り組みが必要です。そのためには子どもを生み育てやすい環境をつくり、少子化に歯止めをかけることが最も大事です。4月から「子ども・子育て未来プラン(仮称)」がスタートします。子どもや子育て家庭を社会全体で支えるため、待機児童の解消をはじめとする保育サービスの充実や地域における子育て支援の充実をはかります。
 また、若い世代が安心して結婚・子育てができる安定的な経済基盤を持てるように、地域経済と雇用の拡大をはかります。これは人口流出を阻止することにもつながります。
 さらには、首都圏に住む団塊の世代のかたがたに対し、本市へ移住していただく方策なども検討しなければなりません。本市は、暮らしを支える都市機能と豊かな自然、恵まれた農地が調和しています。医療水準や教育水準の向上など、都市の求心力をさらに高めることで、外から人を呼び込むことができます。
 こうした取り組みによっても人口減少は、なお避けがたいものかもしれません。人口減少は市街地の空洞化や都市機能の低下をもたらすなど、諸問題を発生させるおそれがあります。そのため、まちづくりの「標準」を考えていく必要もあります。利便性が高い都市機能の配置・都市構造の実現を進めるなど市街地の空洞化や拡散を防ぎ、持続可能なまちづくりをするため、新たな総合都市計画の策定を進めていきます。

築山地区の子育てサロン「きりんクラブ」で

人の絆はセーフティネット

 昨年の市制120周年記念事業では、「絆」をメインテーマに人と人とのつながりの大切さを訴えました。
 現代社会は昔ほど人には寛容ではなく、心にゆとりを持てない社会ともいえるのではないでしょうか。それゆえいったん衝突すると周囲の支援というクッションがきかず、衝撃をまともに受けてしまうのです。
 貧困や虐待、引きこもり、自殺、孤立死など、増加しているさまざまな社会問題の根っこには、社会から排され、あるいは自ら逃れようとする社会的な孤立があります。社会的な孤立を防ぐためには、頼ることができ、クッションとなる家族や地域の絆が大切です。そして、人の絆を礎として包容力のある社会にしなければなりません。
 公的な支援によるセーフティネットはもちろん重要ですが、人の絆による支え合いは一人ひとりができる最も基本的なセーフティネットだといえます。本市はいち早く絆を世に問うてきましたが、絆の位置づけや取り組みの段階を一つ引き上げることが今の「標準」となるのではないでしょうか。
 地域の絆には窮屈な面もあるかもしれませんが、長い目で見れば、地域の絆がもたらしてくれるものは少なくないはずです。そのために、地域づくり活動をはじめ、災害弱者の避難支援などの地域福祉活動など、地域の支え合い機能の強化を進めます。

絆…大切ですね(伝承遊び体験。昨年11月、アルヴェで)

社会のあり方が問われています

 時代に合った「標準」のもとで社会システムを再構築していくというテーマをいくつか取り上げましたが、すべてにおいて「選択の自由」という視点が必要です。
 誰にでも選択による可能性があります。その一方で、個人の意思に反して選択の自由を奪う制約というものもあります。たとえば、治療のため通院したいが交通手段がないという高齢者、仕事をしたいが子どもを預ける場がないという親、進学したいが家庭の経済的事情であきらめるしかないという学生…、といったように。
 このような制約が個人の自立をさまたげる性質のものならば、それを取り除くことは社会の役割です。高齢者の利便性を高めて閉じこもりを防いだり、待機児童を解消して子育ての負担を軽減したり、家計が苦しい世帯の教育費負担を軽減して修学を支援する(注)などしなければなりません。人を疎外したり排除したりしないという観点で、社会ができることに取り組んでいくことが大切です。もちろん、社会とは行政だけでありません。市民一人ひとりが一員である社会全体としてということです。大転換の“とき”とは、社会のあり方が問われている“とき”なのです。


注…市では、「秋田市修学一時資金緊急支援金交付事業」として、(1)教育ローンの利子補給(2)生活福祉資金・母子寡婦福祉資金を活用した給付金の支給((1)(2)とも最大10万円。所得制限あり)を実施します。詳しくは、秋田銀行・北都銀行・東北労金の市内本・支店にあるチラシか、市ホームページをご覧ください。なお、広報あきた1月15日号で詳しい内容をお知らせします。
福祉総務課tel(866)2092

秋田市を元気にする原動力は人そのもの


秋田市を元気にする将来ビジョンを

 現在の社会経済情勢は、若い世代の選択肢や可能性、意欲をかなり制約していると感じます。秋田でずっと暮らしたいのに雇用がない、結婚して子どもを持ちたいのに所得が低い、働いたり社会活動をしたいのに育児や介護の負担が大きい、といった具合です。
 秋田市を元気にする原動力は人そのものです。特に若い世代が自信を持ち、夢と希望を持てる社会でなければ元気な秋田市は期待できません。そのためには本市の将来ビジョン、具体的には持続可能な都市経営を実現するための成長戦略の指針を示していかなければならないと考えます。
 秋田市を元気にするおもな取り組みは私の公約で示していますが、それらを実行する際、特に意識していきたいのはブランド力と情報発信力です。
 ブランド力とは、農産物を中心とした商品開発はもちろん、さまざまな分野・種類での差別化されたものや独自のものの評価が秋田という名称を伴っていくことです。
 それには観光も当てはまります。12月の東北新幹線新青森駅開業に向けて、広域的な観光戦略を確立しなければなりません。また、芸術や文化、10月の開幕を待つプロバスケットボールなどのスポーツといったソフトパワーも大切なブランドになります。さらには、自然エネルギーの普及や環境関連産業の集積といった環境・地球温暖化対策や教育・研究分野などでの先進モデルとなることもブランドを生み出す種となるでしょう。
 そして、これらを積み上げて形成されていく秋田市のブランドイメージをさまざまな方法を活用して積極的に伝えていく情報発信力が重要です。
 このような、ブランド力と情報発信力とがあいまった、中身の伴ったイメージ戦略によって、市民や地元企業に愛着心や誇りをもって定着してもらうこと、外部との交流促進につなげていくことを意識したいと考えています。

新たな総合計画の策定に着手します

 本市の将来ビジョンを示すため新たな総合計画の策定に着手します。ここまで取り上げてきた社会システムの再構築やイメージ戦略に加えて、行財政経営の視点、政権交代に伴う影響、特に地域主権改革や温室効果ガス削減に向けた取り組みなどを踏まえた、持続可能な都市経営を実現する成長戦略の指針となるものです。
 市長就任以来、公約の推進を柱に各種施策・事業に取り組んできましたが、これらを体系化して新たな総合計画に位置づけていきます。中・長期的に取り組むべき重点化分野としては、先に触れた「エイジフレンドリーシティ構想の推進」「子どもを生み育てやすい環境づくり」「環境・地球温暖化対策」「経済雇用対策」のほかにも、「利便性の高いまちづくり」「食の安全・安心の確保」「環日本海交流」「広域的な観光戦略」などを位置づけていく考えです。
 秋田市を元気にするためには、住民自治の基盤である市民協働がさらに重要となります。新たな総合計画においても、市政のあらゆる分野で市民協働を一層深めていくことが前提となります。
 新たな総合計画の策定作業を進めていきますが、大転換のとき、すなわち、この変革のチャンスを生かすためには時流に乗った機敏なスピード感が大切です。市民のみなさんの暮らしを守るために短期的にできることにはすぐに取り組みます。

 今年は寅年。夢と希望の年にするため、夢と希望の都市をめざして、「虎は一日に千里を走る」ということわざにあやかって全力でがんばります。

秋田市が元気に、笑顔いっぱいのまちになるように


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