※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2011年1月1日号

新春市長コラム・日々初心

こでらえねぇまち 秋田

(たまらなくいいまち 秋田)

秋田市長 穂積 志
 市民の皆様、明けましておめでとうございます。
 2011年の幕開けです。卯年だけに「兎の上り坂」のごとく、跳躍と飛躍の年としたいものです。
 12年前の卯年を振り返ると、苫小牧〜秋田〜新潟〜敦賀を結ぶ定期フェリー航路が開設された年でした。今年は、ぜひともロシア定期コンテナ航路を実現させ、秋田港シーアンドレール構想が飛躍的に前進する年にしたいところです。
 秋田の地には古くから海の道を通じたさまざまな交流がありました。そして、地域固有の文化や個性が醸成されてきました。秋田城の発掘調査が明らかにした8世紀の大陸との交流から、中世の安東水軍、近世の北前船の時代を経て現代へと…。
 人やモノの交流は地域を活性化させる源です。極東ロシアからヨーロッパにつながる新たな物流ルートを拓くことができれば、本市の将来の発展に結びつくものと大いに期待しています。


船と鉄道を使ってロシアやヨーロッパへ貨物を運ぶ
“シーアンドレール”の拠点となる秋田港コンテナヤード(手前)。

 昨年11月、政府はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加を検討すると表明しました。TPPは協定国間の関税を原則すべて撤廃し貿易を自由化するものですから、輸出関連産業には大きなメリットがある一方、国際競争力が弱いとされている農業分野などでは輸入の増加による大きな影響が懸念されます。
 経済のグローバル化は避けようのない時代の趨勢ですし、これまで貿易で成り立ってきた日本経済のこれからは、やはり、そこで活路を見出さなければならないと思います。
 しかしながら、TPPへの参加はこれからの日本のあり方、産業・社会構造全体の具体的ビジョンを国が示し、行動を起こすことが前提でなければならないと考えます。
 農業分野の競争力強化はもちろんですが、経済活動としての農業ではなく、多面的な機能…国土保全や水源かん養、自然環境や社会・文化への貢献などにも目を向け、これらをどう評価し、これからの高齢社会、人口減少社会における農業と地域社会をどう維持していくかという視点が抜け落ちてもなりません。さらには、食料の安定供給の確保という視点も必要でしょう。
 その上で、これをチャンスと捉える積極的な姿勢も大切だと思います。貿易の自由化は秋田の質の高い農産品が世界で評価されるチャンスでもあります。農業やものづくりなど、さまざまな分野で、取り組みしだいで地域の経済・雇用の拡大につなげることができると思います。そのようなチャレンジを支えるのが行政の役割であると考えています。
 まさに「大転換のとき、希望を持て、覚悟を決めよ」ということにほかなりません。
 秋田の恵まれた風土は、「変化を求めない」「横並び意識が強い」といった安定志向が強く、ともすればチャレンジ精神に欠けると指摘される気質を育みました。しかし、秋田人は、いったん決断すれば粘り強く最後までやり遂げる根性と行動力を持っているのです。一例として取り上げたTPPに限らず、秋田が成長していくためには初めの一歩を踏み出す勇気が必要なのだと思います。

 秋田人の気質をうまく表した秋田弁に「えふりこき」という言葉もあります。おおらかで享楽的と言われる土地柄がにじみ出ている言葉です。
 方言には標準語では表現できない、地域に根ざした生活や感性が色濃く投影されています。「えふりこき」には、見栄っ張りというひと言では片付けられない奥深さがあり、見栄を張るという後ろ向きな印象だけではなく、誇りが高いといった美点をも併せ持っていて、実に幅広く含蓄のある言葉です。
 「茶町とぎくて(遠くて)」。この表現は、お茶受けの甘いものがないときなどの言い訳として使われました。藩政時代、城下の茶町には砂糖類の専売権が与えられ、それ以外の町では砂糖類が販売できなかったので「茶町が遠いから、甘いものが用意できなくて不調法します」というのです。生活に根ざした趣のある表現で「えふりこき」に通じるものがあります。
 地域にはそれぞれ、長い間育まれてきた有形無形の固有の文化があります。言葉も然り人情も然りです。連綿と紡いできた地域の文化や個性を大切にしていきたいものです。
 だから、「えふりこき」と言われてもいいと思うのです。単なる見栄ではなく、その下敷きとして誇りに思えるものがあるならば。まちの将来を語るとき、誇りに思う秋田があるならば。
 厳しい時代だからこそ「えふりこき」と言われようと、誇りとともに希望を抱き、前へ進んでいきたいと思います。

農業分野の健全で持続的な発展が必要です
藩政時代、茶町には茶、紙、綿、砂糖などの専売権が与えられていました。写真は明治36年の茶町菊ノ丁(現在の大町二丁目)。

6つの戦略を携え、元気な秋田をつくる。

 昨年の新春コラムで、「誰もが夢と希望を持てる社会をつくるため、本市の将来ビジョンを示していく」とお話ししました。
 このたび、市民の皆様からもご意見をいただきながら、平成23年度から5年間の総合計画「県都『あきた』成長プラン」の基本構想を策定しましたので、ここでご紹介しましょう。
 秋田市がめざす将来の姿は、年齢や性別を問わず自分らしくいきいきと輝いている「人」、にぎわいにあふれ多彩な魅力に満ちている「まち」、四季の移り変わりのように彩り豊かで心うるおう「くらし」です。
 市と市民が協力し合いながら、そのような人・まち・くらしの実現をはかるため、「県都『あきた』成長プラン」の基本理念を「ともにつくり ともに生きる 人・まち・くらし」としました。これからの市政運営に当たっての基本的な考え方を表したものです。
 そして、今後5年間、特に力を入れていく分野を「成長戦略」という新たな枠組みで整理し、「県都『あきた』成長プラン」の目玉としました。経済的な成長に限るものではなく、都市としての質的な成長をも見据えたものです。秋田市を元気にしていくための「都市ブランド」「地域産業」「観光」「環境」、元気を支える基盤をつくるための「高齢者」「次世代」、合わせて6つの成長戦略です。

成長戦略(1)
都市イメージ「ブランドあきた」の確立

 まちのイメージアップは、人や企業の定着と交流を促し、他の戦略と相まって成長を促進します。まちの顔づくりや芸術・文化・スポーツなどを活用したまちおこし、地域ブランド商品の開発と振興などに取り組み、秋田市全体としてのイメージアップをはかり、市民が誇れる魅力あるまちづくりを進めます。

秋田ノーザンブレッツ(ラグビー)、秋田ノーザンハピネッツ(バスケットボール)、ブラウブリッツ秋田(サッカー)など、秋田を拠点に頑張るスポーツチームを応援しよう!

成長戦略(2)
地域産業の競争力強化

 産業経済基盤の強化は地域の活力やその源泉となる市民の活力を高め、成長を牽引します。ロシア沿海地方に近接する地理的優位性や豊富な農業資源、環境・エネルギー分野における高度な技術など、秋田市の潜在力を引き出して、地域産業の競争力を高めていきます

成長戦略(3)
観光あきた維新

 観光産業は経済効果の裾野が広いだけでなく、交流人口の増加により地域を活性化する、期待の大きい成長分野です。今年度を「秋田市観光元年」と位置づけ、すでに取り組みを先行させていますが、新たな視点と柔軟な発想によるオリジナリティーあふれる観光戦略を打ち出していきます。

成長戦略(4)
環境立市あきた

 地球温暖化対策には環境ビジネスというもう一つの側面があり、潜在力の高い成長分野です。
 積極的な地球温暖化対策に加えて、秋田市の恵まれた自然環境をいかした事業を開発し、環境分野における秋田市のブランドイメージを高めていきます。

成長戦略(5)
エイジフレンドリーシティの実現

 誰もがそれぞれの能力や意欲に応じて社会参加できる環境をつくることは成長の基礎となります。
 これからの高齢社会に適応するため、高齢者を標準とした、高齢者にやさしいまちづくりを進めます。このようなまちは健康な高齢者はもちろん、介護が必要な高齢者や障がい者、子育て中の親や子どもなど、誰にでもやさしいまちとなります。

成長戦略(6)
次世代の育成支援

 少子化や人口減少に歯止めをかけ、将来を担う世代を育てていくことは、成長の基盤となります。
 少子化対策を未来への投資と捉え、社会全体で子どもや子育て家庭を応援するとともに、少子化を加速させる要因や子育ての不安を取り除き、子どもを生み育てやすい社会を実現します。
 日々初心  。このコラムのタイトルとした、私の座右の銘です。
 私の初心とは、ふるさと秋田市を元気にすることです。


社会全体で子育てを応援(中通児童館で)

ともにつくり ともに生きる
人・まち・くらし

 元気な秋田市をつくる原動力は「人」そのものです。市民一人ひとりがそれぞれの能力や個性を発揮しながら、自らの可能性を追い求めていける社会、そして、誰もがその状態に応じて必要な支えを受けながら、支える側としても活躍できる社会を築きたい。
 まちづくりの主役は市民一人ひとりです。市政の幅広い分野で市民協働の手法を取り入れ、市と市民が協力し合いながら次の世代に引き継ぐことができる元気な秋田市を築きたい。
「こでらえねぇ」という秋田弁もあります。「たまらなくいい」といった意味で「風呂上がりのビールはこでらえねぇ」という風に使われます。

こでらえねぇまち、秋田
たまらなくいいまち、秋田市

 私の夢は、このまちに暮らす人々が日々の場面場面でより多く「こでらえねぇ」と感じることができるような、そんなまちをつくることです。


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