※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2011年5月6日号

市長コラム

秋田市ホームページで市長の動向や記者会見の
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「市長ほっとコーナー」
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今年の桜

市長穂積 志


東日本大震災により秋田市へ避難して来られたかたに食べてほしいと、4月13日、JAグループから支援米約1,500キロが提供されました。ありがとうございました(引き渡しで来庁したJA新あきたのみなさんと)。
 桜に対して特別な思いがあるのでしょうか、市長就任時、この欄に次のように書きました。
「市民一人ひとりが、来年の春も、またその次の春も、しあわせに桜を眺めることができるように市政運営に努めてまいることが、私の得た天命と考えています」。
 今年の桜はみなさんの目にどのように映っていたのでしょうか。
中には、東日本大震災で被災したかたや親戚知人が犠牲になってしまったかた、あるいは甚大な被害に見舞われた現地で救援活動にあたっているというかたもいらっしゃるでしょう。また、秋田に避難してきた被災者の皆さまのお世話をしている人も…。さまざまなかたの目に映った今年の桜はいつもとは違っていたのかもしれません。
 定められたサイクルに従って咲く美しい桜も自然の力。春のきらめく季節感とともに豊かさと安らぎをもたらしてくれるのも自然の力です。そして、大地を震わし、その原形を一変させる地震の揺れも、一瞬にして船も工場も港も田畑も街までも飲み込んでしまう津波もまた、自然の力のなせるわざなのです。
 この大自然の脅威を前に人間の無力さだけが強調されがちですが、自然の営みの中で人間は自然と共生しながら食糧を生産し、美を発見し愛で、喜びを感じてきました。不撓不屈の精神と努力、人と人との絆で幾多の困難を乗り越えてきたのは私たち日本人ではなかったでしょうか。
 幸いにして、復興に向けた足音もかすかながら聞こえてきました。強く美しい日本人を称える海外からの報道も伝わってきています。避難所や店先で、皆が凍えながら整然と並び、食料や毛布、医薬品を求める姿。プライバシーは保たれず、極めて劣悪な環境にあっても、いらだちや怒りを抑え黙々と生活する人たち。高齢者や幼い子どもなど弱者に対する温かなまなざし。警察や消防、自衛隊、医療関係者の驚嘆すべきプロ意識と勇気、そして実行力。日本全国各地から湧き起こってきた救援隊や多くのボランティアの善意…。
 すべてが日本人の行儀の良さや精神性の豊かさ、知的・技術的水準の高さに対する驚きと賛辞です。こういった言葉は、国民全体のやる気を引き出し奮い立たせてくれます。
 何かとうつむき加減で縮こまりがちになります。時に気の遠くなるような困難な道のりであっても、今このときも本当に困っている被災された皆さまに思いを致し、なすべきことを一つ一つ具体的に解決していくべきと考えています。
 今こそ日本人の底力と東北人の粘り強さを発揮するとき。いつの日か、心穏やかに桜を眺めるためにも。


気仙沼市の避難所で配膳を手伝う秋田市職員。市では、消防や保健、水道部門などの市職員を気仙沼市、多賀城市、南三陸町などへ派遣し、被災地を支援しています。



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