※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2012年1月6日号

新春市長コラム・日々初心

勢いある1年に


秋田市長

穂積 志


 市民のみなさん、新しい年を迎え、どうお過ごしでしょうか。風邪などひいていませんか。
 今年2012年の干支は、十二支の中でも唯一、想像上の動物である辰。この「辰」の字には「振るう」という意味もあり、陽気が動き、草木が伸長する状態を表しているそうです。雪国に緑が萌え生ずる春がやって来るのはまだ先で、ついつい家の中に閉じこもりがちになりますが、冷たい、しかし引き締まった冬の空気を吸いに、新年の散歩がてら外に出てみるのもいいかもしれません。四季それぞれが鮮明なのもまた秋田の良さです。
 みなさんにとって今年1年が家内安全、無病息災、商売繁盛の1年、さらには「昇り竜」のごとく勢いある1年となるよう願っております。


冬の千秋公園を散歩してみるのもいいですね。

大震災からの復旧・復興を祈る

 さて、昨年を振り返ってみますと、サッカーの日本女子代表 なでしこジャパン によるワールドカップ初優勝といった喜ばしいニュースの一方で、未曾有の大災害となった東日本大震災がありました。
 三陸沖を震源としたマグニチュード9・0という、わが国観測史上最大規模となった地震は巨大津波を引き起こし、東北地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらしたほか、多くの尊い命が失われました。地震と津波による直接的な被害に、原子力発電所の事故に伴う放射性物質の漏えいや電力不足なども加わり、年が明けた今もその影響は依然として多方面に及んでいます。
 押し寄せる濁流に流される家や車、基礎部分だけが残る住宅の跡などは、みなさんもテレビのニュースでご覧になったとおりです。私も5月に釜石市と多賀城市を訪問して被災地の惨状を目の当たりにしましたが、震災の傷跡は想像をはるかに超えており、復旧・復興には長い道のりが必要であると、今でも痛切に感じています。
 本市では、震災発生直後から救援物資の搬送や避難者の受け入れを行うとともに、被災地に500人近い職員を派遣して、避難所の運営や災害救助、ライフラインの復旧などを支援してきました。また、被災されたかたを勇気づけるため、竿燈まつりへの招待や被災地での竿燈披露なども行ってきたところですが、同じ東北地方の一員として、一日も早い復旧・復興に向け、今後もできる限りの協力と応援をしていきたいと考えています。

大災害に負けないまちに

 今回の大震災では「想定外」という言葉がたびたび使われましたが、本市としても日本海側で同じような規模の地震と津波が発生した場合を想定する必要があります。そのため、短期的に整備するものと中長期的に整備するものを整理し、対応できるものについては速やかに対策を講じてきました。
 例えば、災害発生時の有効な情報伝達手段であるラジオを活用して、市や県警本部が収集した災害情報・市の業務に関する情報を優先的に放送してもらうための協定を地元ラジオ局と結びました。また、市の海岸線全域を津波警報の伝達可能範囲とするための津波警報サイレンの補強整備や、避難所となる地域センターやコミュニティセンターなどへの発電機の配備なども行いました。さらに、防災計画の見直しや安全安心に関する条例づくりも予定していますが、今後一層、市民のみなさんの安全確保のため、「想定外」のないようなまちづくりを進めていきます。
 「天災は忘れた頃にやって来る」「備えあれば憂いなし」…。いつ起こるか分からない災害にしっかりと備えること、そして今回の記憶を決して風化させないことが私たちの使命であると考えています。


昨年3月11日・12日の秋田市内。信号が消えて渋滞が発生し、
道路には陥没も。アルヴェには多くの避難者が…。

改めて“絆(きずな) ”の大切さを知る

 震災後、生まれ育った土地を離れ、いまだに帰ることができないかたが数多くいらっしゃいます。改めて故郷や家族、そして地域の絆の大切さが見直され、「人は一人では生きていけない。誰かに支えられて生きている」ということを実感されたかたも多いのではないでしょうか。
 私が被災地を訪問した際、今までに見たことがないほど数多くの自衛隊車両と行き交いました。停電で信号が消えたままの交差点では全国各地から応援に駆けつけた警察官が懸命に交通整理にあたっていました。そして、泥だらけになりながら家具などを片付ける何百、何千のボランティアのみなさん…。国内外からの有形無形の支援は、被災されたかたにとってどんなにありがたく、心強かったことでしょう。
 また、震災後に「結婚したい」と考えるようになった未婚女性が3割を超えたという調査結果がありました。婚姻率の低下や晩婚化が進む中、大きな災害に直面し、「人との絆を持ちたい」「誰かにそばにいてほしい」という思いが強まったことがその背景にあるのかもしれません。
 久しぶりに家族が集まり、にぎやかなお正月を迎えられたご家庭も多いと思います。家族の絆、地域の絆、そして人とのつながりをこれまで以上に大切にしていきたいものです。

温かいまち、故郷として誇りと愛着を持てるまちをめざす


成長プラン始動。秋田を元気に

 さて、昨年、平成23年は本市の将来ビジョンとなる新たな総合計画「県都『あきた』成長プラン」のスタートの年でした。この計画では、「秋田市を元気にしたい」という私の思いを込めて、めざすべき将来像を「ともにつくり ともに生きる 人・まち・くらし」と定めています。計画の最大の特徴は、元気な秋田市を創造するとともに、元気を支える基盤づくりに向けて本市の地域特性や人的・物的資源などを最大限活用した6つの「成長戦略」を新たに設定したことです。(1)都市イメージ「ブランドあきた」の確立、(2)地域産業の競争力強化、(3)観光あきた維新、(4)環境立市あきたの実現、(5)エイジフレンドリーシティ(高齢者にやさしい都市)の実現、(6)次世代の育成支援、これらの成長戦略に予算や人員などを一体的かつ集中的に投入し、重点的な取り組みを進めていますので、その一端をご紹介します。

にぎわいの創出

 これまで県や地元商業者などと連携して進めてきた、中通一丁目地区の再開発事業が今年ついに完成し、日赤・婦人会館跡地一帯が商業と文化、そして都市居住を軸とする多世代交流の場 エリアなかいち として新たに生まれ変わります。「秋田市にぎわい交流館AU(あう)」も交流や市民活動の場としての役割を担います。
 中通や大町、通町地区などの中心市街地が かつてのにぎわいを取り戻し、多くの人々が行き交い、活気にあふれた街 になるよう、魅力ある秋田市の顔づくりを進めます。


「エリアなかいち」の完成予想図。右はマスコットキャラクターの与次郎です!

循環型社会の形成

 震災直後の長時間にわたる停電で、私たちがいかに電気に依存した生活を送っているのかを改めて考えさせられました。また、原子力発電の安全神話も崩れ、エネルギー政策の見直しを余儀なくされています。
 本市では、太陽光や風力、バイオマス(木材資源など)などの自然エネルギーの市内施設への導入やIT技術の高度利用などによりエネルギーを最適なバランスで使い、併せて、民間企業と一緒に取り組みを進めることで地域経済の活性化へも結びつける「あきたスマートシティ・プロジェクト」を推進しています。
 また、今年7月からは家庭系ごみの有料化制度もスタートします。一人ひとりがごみの減量をはじめ、環境に配慮したライフスタイルを心がけ、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会から、持続可能な資源循環型社会に転換していく契機になればと考えていますので、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。


自然エネルギーの有効活用が求められています

超高齢社会を見据えて

 秋田県の高齢化率は全国で最も高くなっており、本市でもすでに4人に1人が65歳以上の高齢者となっています。
 本市はWHO(世界保健機関)が提唱するエイジフレンドリーシティ(高齢者にやさしい都市)の実現に向け、昨年11月、世界37都市が参加するWHOのグローバルネットワークに参加しました。今後、WHOの支援を受けながら、参加都市と情報を共有し、継続的な取り組みを進めます。わが国が世界でも例を見ない超高齢社会に突入する中、高齢化をプラスにとらえた新たな都市モデルを構築していきたいと考えています。

明るい未来を支える子どもたち

 高齢化が加速する一方で、少子化もまた進んでいます。少子化による生産年齢層の減少は経済活力の低下や雇用環境の悪化、若者の流出などにもつながります。少子化の要因は晩婚化や非婚化、価値観の多様化などさまざまであり、抜本的な解決策があるわけではありませんが、まずは子どもを生みたいと思える社会、育てやすい環境から整備していく必要があります。
 私の公約の一つである「保育所待機児童の解消」は昨年達成することができましたが、少子化対策を未来への投資と捉えて、社会全体で子どもや子育て家庭を応援するとともに、少子化を後押しする要因や子育ての不安を取り除いていくことが肝要です。
 子どもたちの明るい声があふれるまち、子どもを生み育てやすい社会をめざして、取り組みを進めます。

社会経済情勢がめまぐるしく変化する激動の時代ではありますが、変わらないもの、そして、変えてはいけないものもあるはずです。
 老若男女すべての市民が互いにつながりを感じられる温かいまち、そして、誰もが故郷として誇りと愛着を持てるまちをめざして、「ともにつくり ともに生きる 人・まち・くらし」の実現に向けて邁進してまいりますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

平成23年のできごと


年始めの定例記者会見
(1月7日)
地震発生直後に開いた災害対策本部会議
(3月11日)
相馬市への救援物資を積み込み
(3月29日)
被災者支援メッセージボードを千秋公園に設置
(4月20日)
釜石市を視察
(5月19日)
仙台市で東北六魂祭
(7月16日)
上北手中谷橋の渡り初め式
(7月23日)
岩手県宮古市のみなさんを竿燈まつりに招待
(8月3日)
自殺予防キャンペーン
(9月9日)
高齢者コインバス開始式
(10月1日)
中国・南寧市と経済貿易協力に関する
覚書を交換(10月22日)


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