しっとり暮れゆく秋の夕日に、「文化」という言葉が自然に思い浮かびました。読書に音楽、絵の鑑賞、時には演劇もいいですね。
先日、ミュージカル「政吉とフジタ」を鑑賞する機会がありました。脚本は秋田市出身の内館牧子さん、制作はわらび座。秋田県立美術館の大壁画「秋田の行事」制作にまつわる洋画家・藤田嗣治と資産家であり美術収集家でもあった平野政吉の友情物語です。そこには、あふれるような二人の間の熱い思いと固い絆が見事なまでに表現されていました。
ミュージカルに込められたメッセージの内、まず印象に残ったのは「物事に本気で取り組めば必ず道は開ける」という言葉です。「ありのままに生きること」も一つの生き方だが、時には鬼になり、本気になってやってみることも必要ではないか、人にはそれぞれやるべきことが与えられている。そのような話だったように思います。
そして、政吉とフジタが鬼になり取り組んだ物語が演じられていきます。「本物の芸術を秋田の子どもたちに」という政吉の夢、それを現実にカタチにしたフジタ、どの台詞も小気味よく響きました。
また、「秋田の宝はワラシだ」という言葉にも思わずハッとさせられました。劇中、家が貧しく平野家に奉公していたリエという女性が登場します。平野は、彼女の本気と向学心、そして素質を見いだし、私費で高校と医学部への進学の面倒を見ます。これ以上書くと関係者にお叱りを受けそうなのでやめておきますが、「学力全国トップクラス」と言われる秋田の小・中学生のために、私たち大人に課せられた責任の大きさについて考えさせられました。
とにかく全編、内館さんの秋田の子どもたちに対する深い愛情と期待、郷土への思い、先人への尊敬の念があふれ、笑いあり感動ありの息をつかせぬ80分でした。
新県立美術館にある大壁画は一昨年まで、お堀をはさんだ旧県立美術館にありました。大壁画展示のため、半世紀程前に平野の尽力もあり建設されたものです。
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