※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2016年2月19日号

続く、復興への願い

被災地からのメッセージ


 東日本大震災が発生した平成23年3月11日以降、早期復旧を支援するため秋田市から多くの職員が被災地に赴きました。併せて、平成23年度から毎年、地元自治体の要請に応えるかたちで、職員の長期派遣を実施しています。
 平成27年度は、宮城県の石巻市や岩沼市などで5人が復興事業などに従事しています。震災から5年。被災地復興の“いま”を派遣職員にリポートしてもらいました。


日和山公園からのぞむ、旧北上川沿いの石巻市街地(1月31日撮影)。沿岸部では、災害に強いまちづくりが進められています

震災時の市街地
(石巻市ホームページから抜粋)

復興まちづくり情報交流館中央館
石巻市メモ…人口約149,000人、仙台市に次ぐ人口規模を誇る宮城第二の都市です。古くから、水運交通、漁業のまちとして栄え、現在も自然の恵み豊かな食の宝庫として有名です。

沿岸に建てられた津波避難タワー

石巻市の被災状況…死者3,178人、行方不明者422人(平成27年12月10日現在)、被災住家数は全住家数の76.6%にも上りました。現在、石巻市震災復興基本計画に基づき整備が進められており、おもな事業の進捗状況は、道路41%、海岸対策(防潮堤)31%、下水道18%、防災集団移転促進13%となっています。

碓田将由(土木技師)
◆派遣先
 宮城県石巻市復興事業部集団移転推進課


右が碓田さん

 私は「防災集団移転促進事業」を推進する部署で、移転先の宅地造成と水道施設に関する業務を担当しています。現在、市内の半島部で造成工事に着手しており、おおむね平成29年度内の完成をめざしています。
 平成25年4月から3年目の勤務となり、計画から設計・施工へと移り変わる石巻の街並みを見続けてきました。一方で、再現することのできない部分(命、思い出、繋がりなど)の重みを痛感することにもなりました。
 しかし、多くの傷を負ったこの街は、優しさで溢れています。辛い経験を乗り越えたからこそ身に付いた強さがあります。そうした思いに支えられ、ようやくここまで務めることができた事に、心から感謝しています。
 この3月末で秋田市に帰任しますが、これからも、東日本大震災への思いを風化させることのないよう、秋田の地より引き続き支援を続けていきたいと思います。

久世智美(保健師)
◆派遣先
 宮城県岩沼市健康福祉部健康増進課


久世さん(前列左から2人目)と職場のみなさん

 岩沼市に着任して間もなく、津波の被害にあった沿岸部を視察し、以前の姿がイメージできない程何もなくなった景色を見て衝撃を受けました。震災から5年、岩沼市は「復興のトップランナー」と言われており、昨夏には津波被害のあった地区が集団移転した「玉浦西地区」での街開きが行われ、仮設住宅も今春には完全閉鎖と復興は確実に進んでいます。
 保健師として岩沼に来て、一人の保健師が抱えている業務が多岐にわたり、午前は成人の保健指導、午後は乳幼児健診、時間を見つけて家庭訪問と、毎日がめまぐるしく過ぎていきます。直接的な復興業務に携わることは少なかったですが、日々の業務の中で市民のみなさんから震災当時の話を聞けて、また長期化する復興支援のあり方に触れることができたこの経験を、少しでも秋田市に還元したいと思います。
 秋田では中々見ることができない冬晴れの空の下、帰任まで残り一ヶ月、自分にできることを精一杯頑張りたいと思います。そして、復興のトップランナーの名のとおり、岩沼の一日も早い復興を心より願っています。
 5月28日(土)には、岩沼市長谷釜地区で「千年希望の丘植樹祭」が行われます。震災を風化させないためにも、ぜひ岩沼市に足を運んでいただき、被災地の今を感じて欲しいと思います。

震災時の仙台空港周辺

玉浦西地区

千年希望の丘…津波の力を減衰させる津波よけとして、岩沼市沿岸部に整備され、毎年植樹祭を行っています(上の写真は昨年の様子)。詳しくはパソコンなどで、「千年希望の丘 岩沼市」と検索してください

整備された防潮堤

岩沼市メモ…人口約44,000人、仙台市の南約18kmに位置します。仙台空港が所在するなど、交通の要衝となっていることから、臨空工業地帯として発展してきました。

岩沼市の被災状況…被災した沿岸市町村の中でも最大割合の市域48%が浸水。死者186人、家屋被害は5,428戸に及びました。現在、岩沼市震災復興計画マスタープランに基づき整備が進められており、おもな事業の進捗状況は、防潮堤整備98%、市道沿線盛土等72%となっています。
*岩沼市の写真は岩沼市役所からの提供です。

東日本大震災被災地への秋田市職員の派遣概要

 震災発生時から、平成27年度末までに延べ510人を派遣しました。長期(おおむね1年)派遣は、平成23年度から継続しており、平成27年度は勤務地として、宮城県石巻市・気仙沼市・岩沼市・松島町へ5人を派遣。集団移転に関わる業務や用地買収のほか、保健福祉や窓口などの一般業務にも携わっています。
 来年度も、被災自治体からの要請に応え、職員派遣を実施する予定です。



石巻市街地にある標柱

 被災地では、復興に向け道路や住宅などの整備が進む一方、今なお、仮設住宅で生活されているかたや他市町村へ避難されているかたがいます。
 5年が経とうとしているいま、改めて私たち一人ひとりができることを考えると同時に、あの日の悲しみ、あの日の思いを風化させずに、早期復興への願いを持ち続けることが何よりも大切だと思います。


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