※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2016年10月7日号

市長コラム

秋田市ホームページで市長の
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若山牧水(ぼくすい)と秋田〜日本ほろよい学会

市長 穂積 志(もとむ)



佐竹史料館前にある
歌人・若山牧水の父子歌碑。
牧水の肖像写真も刻み込まれています
鶸(ひわ)めじろ山雀(やまがら)つばめなきしきり
さくらはいまだひらかざるなり

 牧水

旅さなか秋田にやどりし父のうた
ふかきゑにしに今日きざまれぬ

 旅人

 汗を拭き拭き歩いていた夏も過ぎ、いつの間にか田んぼの稲穂は黄金色に色づき、秋風に吹かれながら静かに頭(こうべ)を垂れていました。今年の中秋の名月は先月の15日でしたが、澄んだ空にぽっかり浮かんだ月は、その輝きといい、輪郭といい、本当に見事なものでした。古来、人がこの月を仰ぐとき、なぜ自然に背筋が伸び、手を合わせるのか、単純にその意味がわかったような気がします。
 お月様のせいにしていささか心が痛みますが、秋の夜長、月の光を愛(め)でながらゆっくりと一献(いっこん)傾けるのも風流で、秋田に暮らす幸せを感じるときでもあります。
 そんな折、「第14回日本ほろよい学会秋田大会」に参加する機会がありました。この学会は平成11年秋田市制110周年記念に、酒をこよなく愛し秋田との縁(えにし)も深かった歌人・若山牧水(ぼくすい)にちなんだ「和歌と酒のフェスティバル」が開催されたのを機に、当時の石川錬治郎市長や、歌人の俵 万智さんの師匠としても知られる早稲田大学の佐佐木幸綱教授(現在は名誉教授)らが中心になって設立したものです。ズバリ、テーマは「酒と文化」。
 先日の大会では、宮崎の若山牧水記念文学館館長の伊藤一彦先生や牧水のお孫さんにあたる静岡県沼津市若山牧水記念館館長の榎本篁子(むらこ)先生の講演があり、佐佐木幸綱先生も主催者としてご挨拶されていました。今回は、大正5年に牧水が初めて来秋してから100年目ということもあり、旅・酒・鳥を詠んだ短歌を募集し、大会でその表彰式も行いました。佐佐木幸綱学会会長賞をご紹介しましょう。

秋田市の篠田和香子さんの作品
江戸切子の青きグラスにさをさをと
注げば酒の自づから冷ゆ

深くキリッとした青と清冽(せいれつ)な日本酒、そこに注がれるだけで冷えていくように感じる酒、想像すると早くグラスが欲しくなります。
 ちなみに、平成11年に開かれた第1回大会でも、全国から日本酒にまつわる短歌募集を行っており、このときの大賞受賞作品は、

透き通るガラスのちょこで日本酒を
飲みあかしたら朝焼みよう

ガラスと日本酒の透明感、飲みあかしたのはよく冷えた吟醸酒でしょうか。そして明けていく空に朝焼けの鮮やかなオレンジ色、まるで絵を見ているようです。これは青森のかたの作品でした。
 千秋公園の松下門跡付近には、かつての料亭をリノベーションした「会える秋田美人、あきた舞妓の『松下』」というお店があり、日本酒の飲み比べなどもできるそうです。さらに坂を登った佐竹史料館前には、若山牧水来秋時の歌と、時を隔てて秋田を訪れたご子息の旅人(たびと)さんの詠んだ歌を刻んだ父子(おやこ)歌碑が立っています。公園散策の際はぜひ鑑賞してみてください。そこで一首、もまた一興ですね。


リノベーション=建物などに手を加え、より良く修復、再生すること



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