※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2020年2月7日号

市長コラム

市長 穂積 志(もとむ)

帰ってきた「寅さん」

今年の市政も穏やかにスタート。写真は1月19日に行われた金足地区コミュニティセンターの竣工式で。
金足西小学校のみんながヤートセを披露しました!

 令和で迎えた初めてのお正月、雪の少ない穏やかな幕開けでした。みなさんはどのようにお過ごしだったでしょうか。私はこの正月休み、シリーズ第50作「男はつらいよ お帰り 寅さん」を鑑賞してきました。
 これまでも多くの「寅さん」を見てきていますが、冒頭の「チャ〜ン、チャララララララーン〜」とあの独特のメロディが流れてくるだけで、親しみや懐かしさが一緒になったようなホッコリした気持ちで満たされ、次の展開への期待で胸がふくらんでいきます。そして、寅さんの映画を見たその時々の自分の心象風景や記憶などもよみがえってきて、胸が熱くなりました。
 詳しくは紹介できませんが、寅さんの口上や表情からは、ともすれば世知辛い世の中で、何か私たちが失いかけている人情味や下町の温かさ、おおらかさといったようなものがにじみでていてちょっと幸せな気分になります。心のどこかに棲みついていた古い友人に会った感じです。渥美 清さんが亡くなって23年が経つとは思えないほど、今でもそばにいるようでした。
 さまざまな人間模様が織りなす物語の中で、甥の満男の小学校の運動会に寅さんが親代わりに参加することをめぐるやりとりがあります。全員が満男に対する思いやりに溢れているのですが、彼の気持ちとそれぞれの思いが交錯するシーンがあり、登場人物の複雑な表情などはとても鮮やかに映し出されていて印象的でした。
 こういった人と人とのつながりや絆と言われるものは、一方で余計なお世話、おせっかいとも捉えられ、ときには煩わずらわしいと感じる風潮もあります。若い頃は特にそう感じるかもしれません。ただ、人間はきっとどこかで人とつながっていないと、不安や孤独を抱え込んでしまう生き物ではないかと今では思います。
 秋田市の郊外には、まだのどかな田園風景が残っています。先月、金足地区コミュニティセンターが竣工を迎え、多くの地元のかたが出席し、祝賀会が盛大に開催されました。金足西小学校の子どもたちによる「どじょっこふなっこ」をアレンジしたヤートセをはじめ、披露されたさまざまな催しを会場が一体となり盛り上げる様子に、地元愛、絆の強さを改めて感じ、私も幸せな気持ちになりました。
 絆がつなぐ物語、寅さんのエンディングも、まさに男はつらいよらしい演出でした。私の心の中では、新春の空に凧が揚がる日本の原風景のシーンに重ねて、いつものように腹巻きに上着をはおり、トランクをぶら下げた寅さんが歩いていくように見えました。あのメロディとともに。

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