※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2021年3月5日号

市長コラム

市長 穂積 志(もとむ)

あれから10年とこの1年


新設した新型コロナウイルスワクチン接種対策チームでの市長訓示の様子(1月25日)

 春は出会いと別れの季節。卒業や入学、就職や定年退職など物事の始まりや変化に際し、私たちはこれまでを振り返り今後の展望に考えをめぐらすことがあります。
 弥生3月、まもなく東日本大震災から10年を迎えます。震災直後から私も何度か現地を訪れており、瓦礫(がれき)の撤去から新しいまちの造成や、道路、公園、防潮堤などのハード面での復興は順調であるように思います。計画的に進められた災害公営住宅の建設も、先頃すべて完成したとのことでした。
 一方、被災者が負った心の痛手は癒(い)えているのでしょうか。小・中学校での子どもたちの元気な姿や商店街のかつてのにぎわいのような、住民が生活する上での息づかいは完全に戻ったのか不安になります。先般、被災した岩手・宮城・福島3県で実施したアンケートによれば、震災を思い出し、つらいと感じることが日常的にあると答えた人が3割にのぼる、という報道がありました。中には、時間が経つにつれ喪失感が強まるという人もいました。震災の風化に関する質問には、8割近い人が程度の差こそあれ「感じる」と答えています。復興10年の年月の中で、ややもすればインフラなどハード面での復興の姿に注目しがちになりますが、被災者の内面の心の復興はまだまだ道半ばにあることを忘れてはならないと、改めて心にとめておきたいと思います。
 さて、この1年はどうでしょうか。世界中が新型コロナウイルスの感染拡大対策に明け暮れたと言っても過言ではありません。歴史的に新たな感染症のパンデミックについてはある程度想定できることでしたが、今は歴史の当事者として直面しています。人口減少社会や少子高齢化、脱炭素などの大きな問題を持ち出すまでもなく、私たちの前にはいくつもの困難が待ち受けています。
 私が常々心がけている言葉があります。"一つ一つ具体的に行動する"。こんな時だからこそ、日々初心に帰って、まずは地に足をつけ目の前の一つ一つのことを大切にしていきたいと思います。
 よく晴れた日にふと空を見上げたら、雪を頂(いただ)く太平山の峰々が一層力強くなった日の光に輝き、それとは対照的な濃い青空の中を白鳥の群れが北へと飛んでいきました。めぐる季節の中、私たちも春に向かって一歩一歩その歩を進めていきたいものです。
          ◆
 先月中旬、福島県・宮城県で発生した震度6強の地震により、被害を受けられたみなさまに、心からお見舞いを申し上げます。10年が経過する震災はもとより過去の自然災害を教訓に、市としても市民の安全・安心を第一に、危機管理に万全を期してまいります

◆市長の動向などは、市ホームページでお伝えしています。https://www.city.akita.lg.jp


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