※掲載している情報は「広報あきた」発行当時のものです。
2021年6月4日号

市長コラム

市長 穂積 志(もとむ)

いのちの物語

新型コロナウイルス感染拡大防止対策の強化が急務の中、5月6日に、川反・大町地区で市長自らPCR検査キットなどを配布しました

 桜の花が明るく春を演出していたと思っていたら、いつのまにか色とりどりのツツジが鮮やかに咲き誇り、この号がみなさんのお手元に届く頃は紫陽花(あじさい)や花菖蒲が夏の準備をしている頃でしょう。強くなっていく日差しの下で日ごとに濃さを増すこの季節の緑には、みずみずしい命の息吹や生命力の力強さを感じます。
 一方、新型コロナウイルスの影響による外出自粛やオンライン授業、テレワークの毎日などで生活に息苦しさを抱えるかたも多いかと思います。昨年、秋田大学が行った「外出自粛などが学生の心身に与えた影響に関するアンケート」によると、男女とも1割以上の学生に中等度のうつ症状がみられたといい、調査結果に関する会見の席で、秋大大学院の野村恭子教授などは「心と体の健康を保つためには、悩みを誰かに相談したり、運動したりすることが効果的」と述べられたとの報道を思い返しました。
 人は人との関わりの中で生き、生かされています。その中で勇気をもらい立ち直ることもあります。生きがいもその中で見出し、自分は誰かのため、何かのために必要だということを感じることができたのです。気心を通わせる友だちと会うことで自己の存在を確認し、地域や社会、家族との交流の中で自分を見つめることができていたのに、それがコロナ禍で分断され孤立しそうになっている。学生への調査は、こうした実態を浮き彫りにしたのではないでしょうか。
 こんな思いの中で、先日、「いのちの停車場」という映画を鑑賞する機会がありました。吉永小百合さんが現役医師の役で出演し、まさに医師、死と向き合う患者、家族が紡(つむ)ぐ「いのちの物語」です。これからご覧になるかたのことを考え多くは申し上げられませんが、心の奥底に残る一つのシーンだけ紹介します。
 小児がんの少女が、自分の生まれてきた境遇を誰のせいにするでもなく両親に謝る場面。子どもながらに、親を悲しませたくないと気遣う痛いほどのやさしさや心の強さを感じ、少女と両親双方の心情を思うとしばらくは息をするのが苦しいほどでした。ほかにも在宅医療のあり方や末期患者の最期の迎え方、つまりは「命のしまい方」、そして人は人の中で如何(いか)に生きるかということが描かれています。そのどれもが重いテーマですが、大仙市出身の柳葉敏郎さんをはじめとする出演者の名演もあり、内容的な重苦しさを感じるよりも、ヒューマンドラマとしての奥深さが勝り、エンディングを迎えるまで集中してみることができました。
 不安が募るこんな時代だからこそ問われる人と人のつながり。見えない絆が何より心の支えとなることを、この映画で改めて考えさせられました。

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