秋田の温かさを全国に伝えた
「まごころ国体」が開催された1960年代。
父親は、子どもにとって大きな存在でした。
キャッチボールに魚釣り、かまくらづくり。
遊びを通して大人になるために必要なことを伝えていた。
晩酌の時の大げさな自慢話も、夢や想像力を膨らませる心の栄養だった。
祭りや運動会、町内清掃に廃品回収などのイベントや共同作業は、社会のなかでのもう一つの大人の顔を見せる場であった。
子どもは、父親の背中を見て成長していた。
母親は、最も身近な先生であった。
言葉づかいから、あいさつの仕方、箸の持ち方。
生活のなかで大切なことが体に身につくよう、根気よく、繰り返し教え続けていた。
受験勉強での丸暗記は、忘れ去られる運命にあったが、母親から教えられたことは、決して忘れることはなかった。
子どもは、母親の教えを道標として大人への道を歩んでいた。
家族には、独自の文化があった。
自分の家族のあり方に信念と誇りを持っていた。
みそ汁や漬け物の味が家ごとに違うように、子どものしつけ方、ふれあいの形、力関係まで、様々であった。
子どもは、家族という文化のなかで成長し、自分がはぐくむであろう家族の夢を描いていた。
隣近所では、喜びや悲しみを自然に共有していた。
病気や急な用事の時、心から頼れる間柄だった。
親しいなかにも、隣家の事情に踏み込まない配慮があり、このつながりを大切にしていた。
子どもは家族の宝であり、まちの宝であった。
危ないことをしないか、危ないことがないか、時には叱りながらも温かく見守っていた。
子どもは、たくさんの目に見守られていた。
地域には、いつも子どもの笑い声が聞こえていた。
三角ベースに缶蹴り、縄跳び、鬼ごっこ。
特別な道具がなくても、自由奔放な遊びを満喫していた。
遊び仲間には、自然にきまりができていった。
大きい子は威張りながらも小さい子の面倒を見、もめごとは自分たちで解決する掟を守った。
子どもは、遊びのなかで、生きる力を身につけていた。
この情景は、秋田市の最初の総合計画が策定された頃の、ごく自然な姿でした。
秋田市政推進の基本となる総合計画は、1961年に策定した第1次から時代の変化に合わせて見直しを行い、このたび、第11次を策定しました。
策定にあたっては、「市民のしあわせのために何が必要なのか、何をなすべきなのか」という本質を見定めるため、これまでの総合計画を紐解き、私たちが、約半世紀の間で何を得たのか、何を失ったのか、そして何が変わったのかを問うてみました。
この間に、私たちが得たものは、経済的な豊かさ、生活の利便性、優れた技術や知識、そして長寿など、たくさんのものがあります。
反面、私たちが、失いかけているものは、心のつながりかもしれません。
私たちの生活に物質的な豊かさをもたらした経済成長は、子どもから大人までに、厳しい競争を課し、家族がふれあう時間や心のゆとりを取り去ろうとしています。
一人ひとりが経済的に自立し、個人の自由に対する意識が高まるにつれ、ともすれば人間関係が持つ窮屈な側面ばかりが強調され、家族や地域の絆は、いつの間にか薄れてきています。
親が子を、子が親を傷つける、目を覆いたくなるような事件が相次いでいます。
安全なはずの通学路や地域で、子どもたちが犯罪の被害者になることも増えています。
感情を抑えられない、ルールを守れない若者による事件も、耳にすることが多くなりました。
子どもを生み育てることに夢や希望を持つことができず、結婚や出産をためらう傾向も見受けられます。
何がこのような深刻な問題を生じさせているのでしょうか。
様々な要因が複雑にからみあったものであり、明らかにすることは容易ではありません。
また、一面のみを取りあげ、過去を美化したり、今を否定することは無意味なことです。
社会は家族を基礎として成り立っています。
一人ひとりをしあわせにする家族が結びついて、地域の絆となり、産業振興における提携、環境活動での協調、地域防災のための連帯、誇れる文化や歴史の継承など、各分野で形を変えて、市民全体のしあわせをはぐくんでいきます。
第11次秋田市総合計画では、これまで、行政の役割が見えにくかった家族や地域の絆づくりを市が担うべき役割として位置づけました。
家族や地域とどのように向き合うかは、一人ひとりの価値観に委ねられるべきものです。
絆づくりに市は、どこまで踏み込むべきか、さまざまな意見があります。
それでも、市民のしあわせのために、呼びかけてみたいと思います。
忙しい毎日のなかでも、ほんの少し足を止めて、
家族や地域を見つめ、そのありかたを語りあってみませんか。
Copyright (C)2003-2004秋田県秋田市(Akita City , Akita
, Japan) All Rights Reserved. | ||
webmaster@city.akita.akita.jp |