2000年
7月28日号



21世紀への遺産

武家住宅を完全に伝える旧黒澤家住宅

時を越えて生き続ける見えない力がある。
ふるさとの文化。
いま、次代へ、確かに伝えるもの…。


 旧黒澤家住宅は、今から約三百年前、現在の中通三丁目に建てられた上級武家の住宅です。
 当時の中通地区は久保田城下の侍町で、三ノ廓(さんのくるわ)と呼ばれ、上級、中級の武士が住み、久保田城の正面の守りを固めていました。
 黒澤家の屋敷は藩主が参勤交代の際に利用する主要道に面していて、間口十三間余、奥行二十九間余の敷地を占めていました。

 

武士の生活を伝える貴重な文化遺産

 当時、藩士の住宅は藩の所有物で、その身分や石高に応じてあてがわれていました。そのため、藩の都合や藩士の身分により、頻繁に居住者の変更が行われました。
 この住宅の主(あるじ)も芳賀家、赤田家、吉成家、平井家と移り変わり、文政十二年(一八二九)から黒澤家が入っています。
 黒澤家は近年までこの家に住み続けていましたが、現地での保存が難しくなったため、秋田市が黒澤家から寄贈を受け解体保存し、昭和六十三年に一つ森公園内に移築しました。平成元年五月十九日、国の重要文化財に指定されています。
 旧黒澤家住宅は、道路に面して長屋門形式の表門を構え、中央に主屋(おもや)、その背後に土蔵・米蔵・木小屋などが並んでいます。敷地周囲は、正面側を板塀、その他の面を生垣で囲っており、敷地東北隅には氏神堂があります。主屋にある書院造りの座敷棟、台所棟はこのうち最も古い部分で、十八世紀前半頃に建てられたものです。
 現在残っている江戸時代の武家住宅は、幕末や明治期に建て替えられていたり、何度も改築されていたり、附属の建物が失われていたりするものがほとんどで、黒澤家住宅のように、完全な形で住時の姿を伝える上質な武家住宅は、全国的にも類例がありません。
 当時の上級武士の暮らしを今に伝える旧黒澤家住宅。一つ森公園の静けさのなかで、この貴重な文化遺産をどうぞご覧ください。

 

旧黒澤家住宅

■旧黒澤家住宅 TEL(831)0285
 一つ森公園(楢山字石塚谷地)内にあります。観覧は午前9時30分〜午後4時です。観覧料は大人100円、高校生50円です。

 

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