2000年
10月27日号



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21世紀の遺産

時を越えて生き続ける見えない力がある。
ふるさとの文化。
いま、次代へ、確かに伝えるもの…。

 

伝統の輝きを放つ
秋田銀線細工

 わずか〇・数ミリの銀線を使い、指先の熟練した技だけで作り上げる銀線細工。緻密な構造と銀特有の清潔感ある輝きが、華麗な雰囲気を漂わせる芸術品です。
 銀線細工は、銀線をより合わせ、形を作り、輪郭にはめ込んでいく繊細な工程を全て手作業で行うところに特徴があります。南蛮渡来の工芸品といわれ、秋田藩主の保護の下で発展し、現在も市内数か所の貴金属店で製作されています。繊細な神経と根気が要求され、技術を現在受け継いでいる職人は二十人ほど。それゆえに希少価値も高く、市の無形文化財にも指定されています。


別名「平戸細工」。
秋田藩時代からの歴史

 銀線細工は、戦前までは金の細工物、鍛金、彫金なども含め「金銀細工」と呼ばれていた技法のひとつでした。
 かつて秋田藩では、院内や阿仁などの鉱山から産出する良質の銀を使い、武具の飾りやかんざしなどが盛んに作られていました。延宝元年(一六七三)には庄内の鈴木重吉が江戸の名工正阿弥の弟子となり、後に秋田で金銀細工の製作と指導にあたり、多くの名工を生み出したといわれています。
 そもそも銀線細工は、江戸時代、当時貿易港だった長崎県の平戸にオランダ人がその手法を伝えたことから始まりました。秋田藩と平戸藩の江戸屋敷(参勤交代のため幕府が与えた住宅)が近かったことから、親交があったと推測されています。それゆえ銀線細工は別名「平戸細工」とも呼ばれています。
   秋田駅前にある竹谷本店も銀線細工の工房のひとつ。ここには三人の女性職人が伝統技術をもとに現代的なデザインの作品づくりに励んでいます。ピンセットと指先を巧みに使い、〇・二〜〇・三ミリの銀線を渦巻き状に巻く。これが「平戸」です。そして、太めの銀線で輪郭をつくり、平戸をはめ込み、銀ロウで接着します。このパーツを一つひとつ寄せ合わせて製品へと仕上げる「ヨセ」の作業。この道十数年の菅原一美さんですら、まだまだ鍛練が必要と話します。
 雪のように白く優しい輝きを放つ銀線細工。そこには伝統ある職人技から生まれる秋田の温もりがあります。


秋田銀線細工

■文化課 TEL(866)2246
 市内の貴金属店などでアクセサリー、ネクタイピンなどとして販売しています。



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