第7節 農林水産業の振興と市場流通システムの整備


現状と課題
 農業については、国際化の進展、農地の減少、農業従事者の高齢化や後継者不足など厳しい状況の中で、稲作を基幹にしながら、野菜、花き、果樹、畜産等多角化が進んできています。一方農地は、潤いとやすらぎを与える緑豊かな空間を形成しており、環境保全機能や自然景観保持機能、レクリエーション機能等を発揮し、市民の良好な生活環境を維持・向上する上で、重要な役割も担っています。
 このような背景のもと、農業と都市との調和をはかりながら、農業の振興と農地の保全をはかっていくため、先進的、中核的農家群が中心となった農地の高度利用や、地域の特性を十分に活かした生産性の高い農業構造の確立、生産・流通の効率化に向けた取り組みなどが必要となっています。また、担い手については、その確保と高齢化等への対応の観点から、より高い技術や経営能力の育成、組織化をはかるとともに、女性起業者への支援や高齢者の役割の向上を促進する必要が生じています。さらに、農業集落における生活環境の整備や、消費者の多様なニーズに対応した新たな生産・販売方法等の展開といった課題も抱えています。
 沿岸漁業については、近年漁獲量の伸び悩みが見られることから、栽培漁業の定着強化や漁業生産基盤の整備が求められています。
 内水面については、環境保全意識の啓蒙等の観点から、河川への各種稚魚の放流等を継続する必要があります。
 森林については、木材の生産機能に加え、水源かん養機能や国土保全など、生活と環境保全に関する多様な機能が重要視されています。このような状況の中で、森林資源の保全と林業振興の調和を保つため、森林の公益的機能の高度発揮に配慮しつつ、安定的・効率的な木材生産につとめる必要があります。
 中央卸売市場については、専門小売店の減少、産地の大型化に伴う大規模拠点市場への物流変化と市場間競争の激化、そして、高度情報化や国際化を背景とする市場外流通など厳しい状況下にあります。一方、消費者ニーズの多様化に伴う消費構造の変化から、生鮮食料品等に対しては、高品質多品目嗜好が強まるとともに、鮮度保持や安全性などが求められています。また、市場施設の老朽化が進んでおり、情報化の進展等流通システムの変革に対応するため、市場機能の強化が必要になっています。
基本方針
 自然環境の保全や市民に潤いとやすらぎをもたらすなど都市と農業の調和と共生をめざし、計画的な農用地の保全・整備や農村生活環境整備につとめるとともに、経営感覚にすぐれた経営体の育成や、個性的・先進的な農家の育成をはかり、市民に新鮮で安全かつ多彩な農産物を供給できる機能の確立と農業経営の安定につとめます。
 森林については、その適正な保育や病害虫等の駆除など適正な維持管理や保全につとめるとともに、林道・作業道等の生産基盤の整備をはかります。
 中央卸売市場については、流通環境の変化に対応するため、卸・仲卸業者の経営基盤強化を促進するとともに、消費者ニーズにあった商品の提供や安定した取引の確保等、流通システムの効率化につとめます。
主な施策
1.担い手の育成と農業基盤の整備
  (1) 担い手の育成
 地域農業の発展をはかるため、農用地の利用集積を進め、効率的かつ安定的な経営をめざす認定農業者や経営規模拡大をはかる組織経営体を育成するとともに、生産組織の法人化(*112)を促進します。また、新規就農者や女性起業者、高齢者が農業生産や地域づくりの重要な担い手として、十分に能力を発揮できる環境づくりにつとめます。
(2) 生産基盤の整備
1かんがい排水施設の整備
 農業生産の向上と生活環境の改善をはかるため、主要な用排水施設の整備を行うとともに、土地改良区等が行う施設整備等を支援します。
2農道の整備
 農産物流通の効率化や生活環境の改善をはかるため、既設農道の拡幅や舗装整備を行います。
3ほ場の整備
 水田の汎用化を促進するため、大区画化と用排水路や暗渠排水等の整備を推進します。
4老朽ため池等の整備
 安定的な水利用と国土保全をはかるため、老朽ため池等の整備を行います。
(3) 農業集落の環境整備
 農業用水や河川の水質保全をはかるとともに、生活環境の地域間格差解消と、活力ある地域づくりを進めるため、農業集落排水施設の整備を進めます。
2.生産・流通対策の充実
  (1) 生産振興
1.土地利用型農業(*159)の活性化対策
 消費者ニーズや産地間競争に対応するため、高品質米の生産拡大に取り組みます。
 また、転作を含めた水田利用体系を確立するため、団地化の推進や品質の向上による収益性の向上につとめながら、大豆等の生産を積極的に展開します。さらに、農業近代化施設の整備促進と生産組織の育成強化をはかります。
2.園芸作物の振興
 野菜、花き、果樹などの生産性向上をはかるため、パイプハウスの導入や作業の機械化を促進しながら、地域ごとの特性を活かした多彩な農産物の生産・供給体制の整備につとめます。
3.畜産の振興
 安全で高品質な畜産物を計画的かつ経済的に生産するため、家畜の改良増殖や自給飼料の生産確保、飼養管理技術の改善・向上、衛生対策等の推進につとめます。
4.水産の振興
 ガザミの中間育成による栽培漁業の定着化をはかるとともに、主要河川に各種稚魚を放流し、環境保全意識の啓蒙等につとめます。
(2) 流通対策
1.米の流通対策
 「あきたこまち」など秋田米の商品力向上をはかり、市場優位性を確保するとともに、消費者ニーズに対応した高品質・良食味米等の流通対策を進めます。
2.園芸作物の流通対策
 野菜、花き、果樹の出荷奨励による共選・共販体制(*53)を整備するとともに、ロットの拡大(*200)・出荷時期の調整などによる供給期間の延長をはかり、ブランド化を確立します。また、朝どり野菜等について、地産・地消の拡充につとめます。
3.畜産物の流通対策
 優良畜産物の広域的、計画的な共同出荷体制を整備するとともに、組織的な宣伝活動を強化しながら、市場性の向上、銘柄化等による需要拡大をはかります。
4.水産物の流通対策
 市場や直売施設を活用するなど、多様な流通ルートの確保につとめます。
3.農業振興に向けた各種施策
  (1) 農用地等の保全
 他の土地利用との調整をはかりながら、地域の特性や実情に応じて、優良農地を確保するため、農業振興地域内における農用地の用途区分に基づき、土地利用の合理化と遊休農地の有効活用につとめます。
(2) 市民の農業に対する意識の向上
 生産者と消費者間の提携・交流や市民菜園等を通じた農業体験の機会をふやし、農業・農村の魅力とその役割について広く理解を得られるようつとめます。
(3) グリーンツーリズムの推進(*58)
 本市における農業地域の特色を生かしたグリーンツーリズムを広く普及するため、その推進方策について検討を進めます。
(4) 農業指導体制の強化
 農業指導の一元化のため、農業改良普及センター(*165)・農協等と密接な連携をはかりながら、農業総合指導センター(*166)の運営・強化をはかります。
(5) 金融面での支援
 農業経営の安定をはかるため、各種融資制度等の充実強化と適正な融資実行につとめます。
(6) 農業情報システムの構築
 農業技術情報や行政情報を一元化するとともに、農業者等への迅速な提供をはかるため、農業者、試験研究機関、行政機関を結ぶ情報ネットワークの整備を推進します。
(7) 環境保全型農業の推進
 消費者が求める安全・安心な農産物を生産するため、堆肥等を利用した土づくりを基本に、化学肥料の低減など効率的な施肥、農薬の低減、さらには、家畜ふん尿等の有機物資源のリサイクル利用をはかるなど、環境にやさしい農業を推進します。
(8) 水産物生産基盤の整備
 人工魚礁による漁場の造成を行うとともに、多角的な水産業振興のため、各種漁業施設の整備を検討します。
(9) 農業団体の機能強化
 地域農業を支える新あきた農業協同組合(*103)や土地改良区(*157)等の農業団体について、組織の再編・統合と経営の合理化を促進し、機能強化を図ります。
(10) 災害対策
 農畜産物、農地、各種施設等について、災害の未然防止および発生後の的確な対応につとめます。
4.森林保全と林業の活性化
  (1) 民有林の経営充実と林業構造の改善
 林地の生産性向上による林業経営の効率化をはかるため、林業構造の改善や林道・作業道等の生産基盤の整備につとめるとともに、除間伐等森林の保育を促進し、優良林の育成や森林の公益的機能の高度発揮につとめる一方、合理的な森林施業の実施等に向けた、啓蒙普及活動を行います。
(2) 市有林の経営
 市有林の質的向上や森林資源の保全をはかるため、適正かつ効率的な市有林経営につとめます。
(3) 治山事業の実施
 山地の崩落による被害を防止するため、危険箇所について山腹工等の保全対策を行います。
(4) 森林病害虫の防除
 森林資源としての松林を保護するため、松くい虫(*182)等の防除につとめるとともに、ヤマビル(*188)被害の防止対策を行い、森林や生活環境を保全します。
(5) 林業団体の育成強化
 市有林事業の委託を通じて、秋田市森林組合の経営充実をはかるとともに、林業グループ等に対して、指導・支援を行います。
(6) 自然愛護と愛林意識の高揚
 森林資源の市民利用を促進し、自然とふれあう機会の拡充と愛林意識の高揚をはかります。
5.中央卸売市場の整備
   生鮮食料品等の安定供給と取引の適正化につとめるとともに、卸・仲卸業者の経営基盤強化をはかりながら、総合卸売市場としての機能を高めます。また、市場施設については、国の第8次整備基本方針を見据えながら、情報化の進展等今後の流通システムの変革に対応するため、整備内容の検討を行います。
重点テーマからの視点
1  後継者不足に対応しながら活力ある農村づくりを進めるため、女性起業の支援や意欲的な高齢者の掘り起こし、グループの組織化などの支援を行います。
2  優良農地の集団的確保、環境にやさしい農業への転換や関連技術の開発・普及等を進め、農業の振興を通じた環境保全につとめるとともに、農業集落排水の計画的な整備をはかる一方、森林を保全し、その環境保全等公益的な機能を発揮させます。
3  農業経営や地域社会への女性の積極的な参画をめざし、自立に向けた取り組みを促進するとともに、働きやすい環境づくりにつとめます。
4  農業振興地域整備計画の協議制への移行や今後予想される権限委譲を踏まえ、本市の特色を生かした農業振興と環境保全につとめます。
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7  インターネットの農業利用に向けた調査・研究を進める一方、中央卸売市場については、取引の電子化等情報化の進展に対応した施設整備について検討を進めます。

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